[ブリュッセル 30日 ロイター] - 欧州連合(EU)は、温室効果ガスの削減目標達成の一助として、排出枠取引制度(ETS)を改革する。ロイターが30日把握した文書案によると、取引の対象となる業種の拡大や排出枠の減少などが盛り込まれている。欧州委員会は7月14日に包括的な気候対策を発表する予定だ。
欧州のETSは2005年に始まった。発電所や工場、欧州路線を運航する航空会社などには温室効果ガスの排出量の上限(排出枠)が定められ、排出量が上限より少なかった企業は市場で余剰分を売ることができる。
EUは、2030年までに排出量を1990年比55%削減する目標を掲げる。
ブルームバーグ・ニュースが最初に報じた改革案によると、ETSで取引される排出枠は減少する。具体的数字は示していないが、改革施行の翌年から、市場に流入する排出枠はより速いペースで減少する見通し。
また取引価格が下落するのを防ぐメカニズムとしてETSの「市場安定準備」を強化する。
EUの排出枠価格は今年に入って記録的水準に高騰し、現在は1トン当たりおよそ56ユーロで取引されている。
欧州委員会はコメントを差し控えた。改革案は、公表までに修正される可能性がある。
<無償排出枠の廃止>
改革案によると、EUの炭素国境調整措置(国境炭素税)構想で対象となる業種については、無償の排出枠が廃止される見通し。これには製造業の反対が予想される。
業種ごとに無償排出枠を算出するベンチマークを強化する方針で、他の産業も無償枠が減らされる。企業は無償枠を得るために、排出削減向けの投資をしていることを証明しなければならない。
ETSの取引参加業種には、新たに海運業が加わる。欧州域内を航行する船舶と、域外から入ってくる船舶の両方が対象になる。
さらに、交通機関と建物の暖房システム向けに別途ETSを創設する。これらのセクターは26年から排出コストを負担することになる。
新設するETSについて欧州委員会はすでに、取引による収入を活用し、炭素価格制度による燃料費負担増加で打撃を受けた家計を支援する基金を設立する方針を示している。
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