[フランクフルト 5日 ロイター] - 欧州の半導体株は、スマートフォン市場と自動車市場の双方のイノベーションが追い風になるはずだ──。そんな期待を抱いていた投資家は、この2つの業界がいずれも苦境に見舞われているという厳しい現実に直面しつつある。
米中貿易摩擦の激化は自動車販売の急速な落ち込みをもたらし、一部メーカーはコスト削減を急いでいる状況。またずっと高成長を続けてきたスマホ市場も熱気が下がり始め、アップル(AAPL.O)でさえもiPhone(アイフォーン)の低調な販売と苦闘している。
ミラボー・セキュリティーズのグローバルTMTアナリスト、ニール・キャンプリング氏は「両方の市場が下り坂に差し掛かっている」と指摘した。
STOXX欧州半導体指数は6月の高値から25%も下落。2016年初め以来で4倍近い値上がりの一部が帳消しになった。
欧州の購買担当者景気指数(PMI)は、ドイツの自動車産業の不振を反映して低下が続いており、半導体株にはさらに下落余地があることがうかがえる。
業界団体WSTSの予想では、来年の世界の半導体売上高伸び率は、今年見込みの15.9%から2.6%まで鈍化しそうだ。世界全体に占める欧州市場の売上高は1割弱。
投資家としては半導体業界から非現実的な見通しを聞かされてきたが、来年の業績上向きをはっきりと示せなかったり、見通しが悪化した企業は売りを浴びている。
バークレイズのアナリスト、アンドリュー・ガーティナー氏は「市場は『あなた方はもう信じられない』と言っている。市況悪化時の典型的な半導体投資家の反応だ」と述べた。
北米、中国、欧州の自動車市場が減速してメーカーからは利益悪化の警告が相次いだことは、欧州半導体2強のインフィニオン(IFXGn.DE)とSTマイクロエレクトロニクス(STM.PA)にとって痛手だ。自動車向けの事業はインフィニオンで4割、STマイクロでも3割に達する。
両社の幹部は最近の四半期決算発表後の電話会議でアナリストからどうなっているのかと問い詰められ、STマイクロは中国で「市場環境が軟化した」と認め、インフィニオンは「減速の公算が高まっている」との見方を示した。
クレディ・スイスのハイテク株調査ディレクター、アチャル・スルタニア氏は「今のところ利益見通し引き下げは大幅ではないものの、半導体株に市場参加者が支払おうとする対価は切り下がってきている」と話した。
欧州半導体セクターが当面どうなるかについて、アナリストの間では意見がまとまっていない。米中摩擦の影響や世界経済の成長鈍化を巡る不透明感が強まっていることの反映だ。
UBSのデービッド・マルホランド氏などは、半導体企業の業績見通しを下方修正しながら、インフィニオンなどの株価自体にはより明るい見方を維持し、同社の投資判断は「買い」を継続している。
マルホランド氏は、インフィニオンの場合、電気自動車(EV)向けの供給が企業価値の最大半分を支える要素になるとみる。
一方で弱気派は、足元の利益の伸びと利益率が歴史的高水準にあってもはや「のびしろ」がない上に、自動車需要と中国製造業の活動低下が重しとなっている点に反応している。
ミラボー・セキュリティーズのキャンプリング氏は(1)ハイエンドのスマホの販売状況悪化(2)記録的な利益と利益率(3)自動車と製造業に吹く逆風──などを懸念要素として挙げた。
(Douglas Busvine記者)