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情報BOX:EUの新環境対策、なぜ厳しい批判が聞かれるのか

[15日 ロイター] - 欧州連合(EU)欧州委員会は14日、域内の温室効果ガス排出量を2030年までに1990年比で55%減らすという目標を達成するための新たな包括的対策を発表した。しかし環境保護団体はもちろん、欧州委の内部からさえ、内容に批判の声が上がっている。今回の対策が称賛と同じぐらい反発を受けている理由を以下に示した。

 欧州連合(EU)欧州委員会は7月14日、域内の温室効果ガス排出量を2030年までに1990年比で55%減らすという目標を達成するための新たな包括的対策を発表した。ポーランド・ベウハトゥフの石炭火力発電所で2009年5月撮影(2021年 ロイター/Peter Andrews)

<適切な目標か>

2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議で世界各国の合意により、温暖化抑制のための国際的な取り決めとして成立したパリ協定は、世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて摂氏1.5度未満にとどめることをうたっている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、この達成への道筋をつけるためには、30年までに世界全体の温室効果ガス排出量を10年比で約45%減らし、50年までに実質ゼロにすることが必要だ。そしてロジウム・グループのアナリストチームの見立てでは、EUが掲げる30年までの排出量目標を10年比に直すと46%減になる。

EUは、まだ石炭に依存する東欧諸国などと、もっと排出量削減を進めたがっている幾つかの富裕な加盟国の意見を調整してこの目標を定めた。

ただ国連は別の基準も提示。中でも19年の排出ギャップ報告書では20年から30年にかけて排出量を年7.6%ずつ減らすよう求めている。それ以来、EUの目標は踏み込み不足だとみなす環境団体の間で、この数字が広く引用されるようになった。

<不満を唱える面々>

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは、EUの姿勢に疑問を投げ掛けている。ツイッターに「言行不一致に気づけ」というハッシュタグで「EUが90年比55%削減を目指す新たな対策を破棄しない限り、世界の平均気温上昇が1.5度未満に収まる可能性はなくなる。これは1つの意見ではなく、全体的な状況を踏まえれば科学的な事実だ」と書き込んだ。

反対派としてはグリーンピースも名の知られた存在だ。グリーンピースのEUディレクター、ジョルゴ・リス氏は「こんな対策を祝福するのは、まるで高飛び選手がバーの下をくぐってメダルを要求するようなものだ」と切り捨てた。

30年までに排出量を60%減らすよう提唱してきた欧州議会の欧州緑の党/欧州自由連盟(EFA)に属する政治家は、今回の対策を歓迎しつつ、改善の余地があるとの見方を示した。

<批判される理由>

一部の具体策で提案されている時間軸は、環境団体や緑の党からみると長すぎるようだ。

グリーンピースのリス氏は「いくらはやし立てたところで、多くの政策が始動するのは10年かそれより先になる。内燃自動車の新車販売禁止が35年になったように」と手厳しい。この内燃エンジン問題は、30年までの販売禁止を要求してきた欧州緑の党/EFAにとっても悩みの種だ。

可燃性木材ペレットなどを原料とするバイオマス電力を巡っても異論が出ている。リス氏は、木材を燃やすことを再生エネルギーと認定するなど、内燃自動車問題以外にも「炎上」を誘うとみられる政策があると指摘した。

<社会正義>

EUが運営する温室効果ガス排出枠取引制度は、いかなる排出者も対価を支払うべきという原則の適用を目指しており、一部のケースでは無償の排出枠割り当てを段階的に減らす提案がなされている。

新たな提案の下では、この無償割り当ての主な受益者だった航空業界は27年までに枠を失う。他の産業についても、域外企業との競争力を向上させるために、26年以降無償割り当て枠の削減ペースを加速させる。

一部の環境団体は、社会で最も立場の弱い人々が気候変動リスクにさらされ続けている中で、大企業に譲歩するような動きは許されないとくぎを刺している。

環境NGO、CANヨーロッパのディレクター、ウェンデル・トリオ氏は「政策は社会問題を考慮に入れる必要があり、市場の論理だけで動かされてはならない。特に無償の排出枠維持を通じて各産業が助成され続けている局面においては」と訴えた。

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