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アングル:英不動産投資、ブレグジットで大打撃 先行きの調整不可避

[ロンドン 7日 ロイター] - 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が決まった国民投票の犠牲者として、英商業用不動産が今週、メディアの見出しを飾った。離脱決定で不安を募らせた投資家が解約を急いだことから、英商業用不動産に投資するファンドは相次いで解約を停止。パニックが広がった。

 7月7日、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が決まった国民投票の犠牲者として、英商業用不動産が今週、メディアの見出しを飾った。離脱決定で不安を募らせた投資家が解約を急いだことから、英商業用不動産に投資するファンドは相次いで解約を停止。パニックが広がった。写真はロンドンで撮影(2016年 ロイター/Neil Hall)

スタンダード・ライフやヘンダーソンなどが運用する不動産ファンドは、かつてのブームの時代には高い利回りを実現していたが、英離脱決定を受けてポンドが急落、英経済のリセッション(景気後退)入りも現実味を帯びるなか、こうした投資の危うさが浮き彫りになった。

ファンドは通常は、日々の解約を認めている。しかし、今週のように解約請求が殺到すればファンドは現金が枯渇、保有する不動産の売却を迫られることになる。この手続きには何カ月もかかる可能性がある。

ドイツ銀行は「不動産は非流動資産。今週はファンダメンタルズや事情が変わると非流動資産に何が起きるのかが示された」と指摘する。

投資家の多くは2008年危機を思い出すことだろう。解約請求が膨らんだファンドは保有する商業用不動産の投げ売りを余儀なくされ、ロンドン中心部の不動産価格を最大40%押し下げることになった。

ファンドの解約停止は、資産運用会社に不動産売却の時間的余地を与えることにより、不動産価格の急落シナリオを回避する意図がある。

リーガル&ゼネラル(L&G)やF&Cなど資産運用会社の一部は、ファンドの評価額を引き下げるという、より穏便な措置をとった。解約を希望する投資家は安値での解約を受け入れざるを得ないということになり、事実上、ファンドを解約しないインセンティブになる。

前回危機との違いは、関与するマネーの規模がずっと大きいことだ。

債券の利回りが極めて低いか、もしくはマイナスになっていることから、英不動産市場にはニューヨークやシンガポールと同様、国内外から投資マネーが大量に流入。価格上昇が見込まれ賃貸収入も手にできる投資先として、政府系ファンド(SWF)や保険会社などに好まれた。

インベスコの調査によると、SWFの不動産エクスポージャーは2015年は平均6.5%で、12年の3%から上昇。ロイターの6月調査でも、世界のファンドはポートフォリオの平均2.9%を不動産で保有していることが分かり、この比率は少なくともこの5年で最高だった。

スタティスタの推計では、世界の商業用不動産投資の価値は15年末時点で、絶対ベースで6500億ドルを突破。09年の4倍超だった。

<不動産価格、先行きの調整は不可避>

それでは、英商業用不動産投資の先行きはどうなのだろうか。SWFなど資金余力のあるファンドは、現在のボラティリティーを耐え忍ぶことも可能だろう。長期的にはブレグジット交渉の行方のほか、外国の企業や銀行がロンドンから脱出するのかどうかに大きく左右される。

専門家の多くは、解約を停止しても多くの不動産が安値で売られ、価格調整の動きがロンドンから英国全土に広がるとの見方を示している。

UBSアセット・マネジメントはかねて、シティ(ロンドンの金融街)の不動産価格は17─18年に供給過剰で4─10%下落すると予想していた。今ではブレグジットで需要がさらに減退、価格下落に拍車がかかるとみている。

Sujata Rao記者 翻訳:吉川彩 編集:山川薫

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