[パリ/ブリュッセル 30日 ロイター] - 欧州連合(EU)が米国との締結を目指す環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)協定について、フランスのフェクル貿易担当相は30日、交渉を仕切り直すよう9月のEU首脳会議で提案する意向を明らかにした。
フェクル氏はRMCラジオに対し「信義則に基づき交渉を再開できるよう、明確な区切りが必要だ」と述べた。
米欧双方は、オバマ米大統領が任期満了となる来年1月までの交渉妥結を目指していたが、フランスのオランド大統領は30日、交渉が「行き詰まっている」としたうえで、年内の合意は絶望的との見通しを示した。
オランダのシンクタンク、クリンゲンダールのシニアリサーチフェロー、ピーター・バン・ハム氏は「今の状況で(合意が)実現することはない」と指摘した。
今年の米大統領選では貿易協定が争点の一つ。共和党候補のドナルド・トランプ氏は「米国の職を奪う」として、多国間の貿易協定を批判している。国務長官時代に貿易協定を支持していた民主党候補のヒラリー・クリントン氏も姿勢を転換し、国内の賃金に対する影響に懸念を示していた。
さらに来年はフランスで大統領選、ドイツで総選挙が行われる予定で、選挙で票につながらないTTIPがオバマ大統領の任期切れ前に妥結にこぎつける確率は徐々に低くなっている。
ドイツのガブリエル経済相は28日、欧州側が米国の一部要求を拒否したため交渉は事実上決裂したと述べていた。TTIPは交渉開始からすでに3年が経過しており、食料や環境の安全性を含むさまざまな分野で意見が食い違っている。
一方、メルケル独首相は交渉を支持しており、首相の広報官は29日、交渉を継続すべきと強調した。
欧州委のマルガリティス・シナス報道官は、交渉には時間がかかるが着実に進展していると述べた。米通商代表部(USTR)のフロマン代表も独誌シュピーゲルに対し、シナス氏と同様の考えを示している。
*内容を追加します。
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