for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

アングル:ユーロ圏、危機一段落で16年国債発行は5年ぶり低水準に

[ロンドン 18日 ロイター] - 来年のユーロ圏の各国の国債発行額は2011年以来となる9000億ユーロ割れとなる見通しだ。欧州債務危機で打撃を受けたイタリアとスペインが、超低金利の追い風もあって累積債務を徐々に減らすとみられることが主因。

 12月18日、来年のユーロ圏の各国の国債発行額は2011年以来となる9000億ユーロ割れとなる見通しだ。 フランクフルトECB本部で3日撮影(2015年 ロイター/Ralph Orlowski)

この数年、スペインとイタリアは2012年の債務危機の際に受けた緊急資金支援の借り換えを進めており、現在では金利の大幅な低下を生かして平均残存期間を長期化している。結果的にユーロ圏の債務は一段落して区切りを迎えようとしている。

RBSのマイケル・ミカエリデス金利ストラテジストは「過去数年間に国債発行額が増加したといいう事実は債務危機との直接的な関係が深く、いまそれが過ぎ去ったこととして関心が薄れ始めている」と話す。

RBS、モルガン・スタンレー、コメルツ銀行の推計から、来年はイタリアとスペインのグロスの国債発行がともに約200億ユーロ程度減少し、それぞれ2200億ユーロ、1200億ユーロになるとみられる。

ユーロ圏最大のドイツは、中東からの移民対策費用を確保するため、2016年に借り入れを増やす計画だが、大半は短期金融市場での調達となり、国債発行額はごく限られた金額にとどまる見通し。

全体としてユーロ圏各国政府の国際発行額の合計は8600億─8800億ユーロが見込まれ、2011年と同様の低水準になる。欧州連合(EU)が加盟国に対して政府債務や財政赤字の水準を低く抑えるよう圧力を掛けているため、加盟国が世界の経済成長が低迷する事態が起きない限り、再び債務問題に逆戻りする可能性はほとんどないようにみえる。

イタリア財務省は年内に来年の正式な国債発行計画を発表すると見込まれており、スペイン財務省も来年早々に公表する。

欧州で経済規模3位と4位の両国が公的救済を受けるのではないかとの懸念から両国の国債利回りは2012年に急上昇し、結果的に投資家は短期債にしか手を出そうとしなくなった。

この結果、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が「ユーロを守るためなら何でもする」と公言し、債務危機の影響が薄れた後の数年間でも、借り換えが必要な債務が積み上がっていった。

来年に国債発行額が減少するのは、緊急資金供給の大半を長期債にロールオーバーする作業が現在進められているためだ。イタリアとスペインの来年の国債償還額は180億ユーロ減少すると見込まれる。

しかし、ストラテジストたちは、国債発行の減額はECBの超緩和的な金融政策が加盟国すべての金利を押し下げ、年間の金利負担が低下したことで、これらの国々が貯蓄を増やすことできたことの表れでもあると指摘する。

イタリア10年国債IT10YT=TWEBとスペイン10年国債ES10YT=TWEBの利回りは2012年の7%超から今年初めに過去最低の1%近辺まで低下した。

両国ともに今年は短期債による資金調達をマイナス利回りで行っており、これは投資家が実質的に政府に対してお金を貸すという特権に対して手数料を払う状態を意味する。

モルガン・スタンレーのストラテジスト、ジェスパー・ルース氏は「債務借り換えコストは減少し、そえゆえに全体の発行額が減少した」と指摘する。

<年限は長期化へ>

過去最低の金利水準によってユーロ導入国は長期債を発行し、今後数年間に返済が増えるのを回避できる、事実上の債務繰り延べが可能になる。

ドイツは来年、30年国債を90億ユーロ発行する計画で、2015年の発行実績である60億ユーロから増額する。コメルツ銀行は、イタリアとスペインも来年上半期中に30年債を発行すると推定しており、両国で約80億ユーロの調達が見込まれている。

イタリア財務省の統計によると、同国政府が今年発行した国債の平均残存期間を2010年以降で初めて長期化し、第3・四半期時点では約6.5年。2014年の6.4年から伸びており、2010年は7.2年と最長に達していた。

スペインは昨年の6.28年につづいてさらに年限の長期化を進める考え。2007年の危機前の平均残存年限は6.8年だった。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up