November 30, 2018 / 2:19 AM / 17 days ago

コラム:誕生20年、逆風に耐えた通貨ユーロ「3つの成功」

[ロンドン 26日 ロイター] - 2019年1月、欧州単一通貨ユーロは発足から20年を迎えるが、しばらく前から世界第2の通貨として成熟期を迎えている。

 11月26日、欧州単一通貨ユーロは2019年1月、発足から20年を迎えるが、しばらく前から世界第2の通貨として成熟期を迎えている。2013年撮影(2018年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

1999年の誕生以来、たえまない批判にさらされ、破綻を予言されていたユーロは、導入当時に多くの最も手厳しい批判派が予測していたよりも長い期間を生き延びている。

ユーロの欠陥に関する文献は数多く、欧州通貨同盟自体も厳しい批判を浴びているにもかかわらず、ユーロはこの20年で3つの注目すべき成果を挙げている。

第1に、世論調査によれば、過去20年のどの時期よりも、ユーロに対する人々の支持は高くなっている。

第2に、重債務に苦しむユーロ圏内の政府にとっては、ユーロによる借入コスト低下で、数兆ユーロもの負担軽減が実現している。

そして第3に、欧州中央銀行(ECB)は周期的に訪れる危機に対して、1990年代後半に同中銀が構想されていた段階で最も熱心だった支持者の期待をも上回る、柔軟で斬新な対応を見せている。

こうした結論は、これまでの期間に見られた浮き沈みを隠してしまう。それでもノーベル賞を受賞した米国人マネタリスト、ミルトン・フリードマン氏を含む多くの人々が、あまりにも硬直的で、本格的な景気後退が1度でも起きれば耐えられないと見込んでいたユーロというシステムが持つ耐久性や順応性を証拠立てるものだ。

ギリシャが初めて数十億ユーロ規模の国際的な救済措置を受け、アイルランドも救済対象となった2010年には、毎年行われる欧州委員会による世論調査において、「ユーロは自国にとって好ましい」と答えた回答者は全体の51%にとどまった。

だが、先週発表された2018年の調査では、ユーロ圏全体で64%の回答者が「ユーロは自国にとって好ましい」と回答しており、「欧州全体にとって好ましい」とする回答は約4分の3に達した。

これは2002年の調査開始以来、最も高い支持率だ。リトアニアとキプロスのわずか2カ国のみが、「ユーロは好ましくない」と過半数の国民が回答していた。

驚くべきことに、救済融資の厳しい条件によって経済的、社会的にも大きな苦痛を味わっているギリシャ国民でさえ、60%が「ユーロはギリシャにとって好ましい」と考えており、「欧州全体にとって好ましい」という回答も71%に上った。

イタリア国民が示した態度も示唆に富む。イタリア経済は長年低迷しており、債務残高も世界第3位で、ポピュリスト色の強い現連立政権は、過去にユーロ離脱をちらつかせたこともある。

ところが、欧州委員会が行った同調査によれば、イタリア国民の57%は「ユーロはイタリアにとって好ましい」と考えており、「欧州全体にとって好ましい」との回答も68%となっている。

ユーロ圏19カ国をカバーした今回調査では、1万7589人の回答者のうち、約69%がユーロ圏における財政政策を含めた経済協調の推進を支持。経済協調を縮小すべきとの回答は7%にとどまった。

19カ国がさらに緊密な財政協力を実現するには、何年もかかるだろうし、有意義な進捗が明らかになるには、数十年かかるかもしれない。ECBの監督下にある金融政策については、大した時間はかからないだろうが、とはいえフランクフルトに本拠を置くECBが過去20年でここまで発展するとは、以前ならば現実的ではないと思えただろう。

発足当初の数年間、ECBは2つの異なる方向から批判を受けることが多かった。インフレ率を上限2%にとどめることに固執するあまり柔軟性に欠けると責められる一方で、2002年の紙幣・硬貨流通については「ステルス・インフレーション」発生の責任を問われる、といった具合だ。

歴史上、数十年あるいは数世紀にもわたって単一経済を統制してきた他の中銀に比べると、ECBの政策決定プロセスはスピード感に欠け、煩雑で不適切だと酷評されることが多かった。

恐らく「産みの苦しみ」と言われるべきものだろう。1ユーロ=1.1747ドルで始まった単一通貨は、2年も経たないうちにその価値を3割失い、0.8240ドルまで落ち込んだ。ECBは他の主要7カ国(G7)の中銀と協調して数回にわたる為替介入を成功させ、さらなるユーロ安の事態を防いだ。

<ユーロ・プレミアム>

だがユーロはこうした下落局面を切り抜け、回復力を示した。2007─08年、2010─12年に発生した危機に際して、この回復力が不可欠だったはずだ。ユーロはすぐに、世界で2番目に重要な通貨としての地位を確立し始めた。

ユーロ導入時点で、圏内の各国従来通貨は世界外貨準備高の17%を占めていた。10年後、ユーロが占める同比率は27.6%に達した。その後も変動はあったが20%を切ることはなく、現在、ユーロ圏以外の中銀は外貨準備高の一部として約2兆4000億ユーロ(約310兆円)を保有している。

加えて、いわゆる「ユーロ・プレミアム」、すなわちユーロ加盟に伴う借入コストの低下により各国政府が支出を抑制できた。

ユニクレジットのアナリストによる試算では、イタリアの債務利払いは米国、日本に次いで世界で3番目に多いが、イタリアがユーロに加盟していなかった場合に比べれば約9000億ユーロ低いという。

1990年代、イタリアとドイツのイールドスプレッドは最大750ベーシスポイント(bp)、そしてこの時期の大半を通じて300bpを超えていた。ユーロ導入から2008年夏に起きたリーマン破綻直前まで、スプレッドが50bpを超えることはめったになく、平均約25bpにとどまった。

スペイン、ギリシャ、ポルトガルといった他のユーロ圏「周縁」国においても似たような状況があり、これら諸国の政府は数千億ユーロの債務利払いを削減できている。企業、家計、個人もやはりその恩恵を受けており、結果として「節約」はさらに大きくなっている。

ユーロによって域内の脆弱な諸国が2007─08年のグローバル金融危機から守られたことは確かだが、その数年後にユーロ圏内から生じた後遺症は、導入後10年を経たユーロにとって、グローバル金融危機よりもはるかに大きな試練をもたらした。

だが、その後10年間に次々に起きた危機に際しても、マイナス金利、数兆ユーロ規模の銀行向け低利融資、2.6兆ユーロに及ぶユーロ建て資産買い入れプログラムという組み合わせは、苦境に陥った各国の借入コストを劇的に引き下げることに成功した。

これは中銀によるものとしては異例の政策措置だ。しかも、19の主権国家に仕えるECBが、インフレを忌避し保守的な財政を特徴とするドイツの主導により構築されたことを思えば、その異例さはさらに際立つ。

昨年ブンデスバンク(ドイツ連邦銀行)が行った調査によれば、グローバル金融危機前に比べて借入コストが大幅に下がったことにより、ユーロ圏諸国の2008─2016年の利払い負担は約1兆ユーロ削減されたという。GDPの約9%に相当する負担軽減だ。

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ECBによる制約の大きい「画一的な」金融政策にもかかわらず、以前であれば考えられなかった柔軟性を備えた危機管理の枠組みが実現している。最終的にはこれがユーロを救い、その存続と繁栄を確かなものにするだろう。得失を含めて、これがありのままの現実なのだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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