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コラム:逆境に耐える通貨ユーロ、圏外から意外な「助け舟」
March 18, 2017 / 12:44 AM / 9 months ago

コラム:逆境に耐える通貨ユーロ、圏外から意外な「助け舟」

Mike Dolan

 3月15日、ゼロ金利、政治的リスク、不確実な将来──。これだけ圏内に悪材料が揃っている割に、欧州単一通貨ユーロは相当に持ちこたえている。恐らく、近隣諸国から少なからぬ手助けがあるおかげだ。写真は2016年1月、ロンドンで撮影したユーロ貨幣(2017年 ロイター/Toby Melville)

[ロンドン 15日 ロイター] - ゼロ金利、政治的リスク、不確実な将来──。これだけ圏内に悪材料が揃っている割に、欧州単一通貨ユーロは相当に持ちこたえている。恐らく、近隣諸国から少なからぬ手助けがあるおかげだ。

欧州で今年予定される一連の国政選挙によって、ユーロ懐疑派のポピュリスト政党が大陸全域での支持を拡大し、統一通貨への脅威となるのではないかという懸念が高まっているが、ユーロそのものへの直接的な影響はほとんど生じていないようだ。

実際には、欧州中央銀行(ECB)のユーロ指数は、昨年末以来0.3%上昇している。今年に入って、これまでの50営業日のうち、この指数が1%以上動いたのは1日だけであり、しかもそれはユーロ高の方向だった。

欧米間の基軸為替レートであるユーロ/ドル相場は、昨年11月の米大統領選後にドル高となって以来、ほぼ4セントの変動幅で推移している。大統領選以来4カ月となるが、1ユーロ=1.06ドルを軸に上下いずれの方向にも2%未満の振れ幅である。

通貨オプション市場から得られる3カ月物の予想変動率(インプライドボラティリティ)も10%以下に抑えられている。2011年のユーロ債務危機の最中にはきわめて大きな値が見られたが、その約半分である。

さらに深く見ていくと、ユーロ売りのプットオプションの長期価格プレミアムは、1月から2月にかけて上昇した。だがこれも、ここ3週間で反転し、2016年末の水準まで戻っている。

フランス国民戦線のルペン党首やオランダ自由党のウィルダース党首など人気上昇中の極右指導者が、ユーロに対する憤りを示しているのに、通貨市場では誰も気にしていない、ということがあるだろうか。

メルケル首相の退陣につながりかねないドイツの選挙について、あるいはこの夏、イタリア総選挙が行われる可能性について、誰もが本当に、のんびり構えているのだろうか。

いや、そういうわけではない。少なくとも、米国の商品先物取引委員会(CFTC)による週間データによれば、投機的な思惑の兆しが見られる。先週のデータは、ユーロのネット売り持ちポジションが1月初旬以来最大になったことを示している。

政治的要因はさておくとしても、米欧の2年物金利が統一通貨の誕生以来最大の幅でドル優位となっており、金融政策にかい離が見られることからも、ユーロに対する下降圧力を想定することは難しくない。

債券市場は政治的な懸念をもっと明確に反映している。ドイツを基準とした場合のフランス10年物国債利回りスプレッドは、依然として2011年のピーク時よりかなり低いとはいえ、過去4カ月間で倍増となる60ベーシスポイント以上に達している。

では、これほどしっかりとユーロを支えている要因は何なのか。

<資本流出の「止血帯」>

最も根本的な原因は、過去5年間、ユーロ圏の経常黒字が膨らんでおり、現時点では、月300億ユーロ(約3兆6500億円)を超える純流入となっていることである。2011年の危機当時は対外収支がほぼ均衡していたことに比べれば、1日当たり平均10億ユーロ程度という相当な下支えとなっている。

この経常黒字の一因は、ユーロ圏の輸入需要が比較的弱い一方で、ドイツからの輸出が好調なことだ。しかし同時に、ユーロ圏の各国政府が自国債を保有する外国人投資家に対して支払う利回りが、ゼロ又はマイナスにまで下がっている一方で、ユーロ圏の投資家が保有する同規模の外国債から得る利回りがはるかに大きいことも、背景となっている。

為替レートの安定は、政治的懸念や相対的な金利差を理由としてユーロ圏からの資本流出があるとしても、ユーロ圏への資本流入となる経常黒字を上回るには至らなかったことを示している。

こうしたズレが生じる原因の一端は、域外の大口債券投資家のあいだで、完全にユーロ圏から撤退するのではなく、ユーロ圏内で投資先を乗り換える傾向が見られることである。たとえば、日本の投資家はここ数カ月フランス国債を大量に売っているが、その2倍ものドイツ国債を買っているという報告がある。

だが、ユーロ圏からの資本流出を防いでいる「止血帯」は他にもある。ユーロの「限界的な買い手」である2大機関投資家、スイス国立銀行(中央銀行)とチェコ中銀の行動だ。

スイス中銀は、ユーロに対するスイスフランの上限を2015年に撤廃しているものの、引き続き、スイスフランの過度の上昇を防ぐために行う介入を通じて、膨大なユーロ資産を蓄積している。スイスの外貨準備は現在6000億ユーロを超えているが、過去14カ月間だけでも、20%以上、金額にして1000億ユーロ以上も増加している。

またチェコ中央銀行は、自国通貨コルナについて3年前から上限規制を設定しており(ただし今年中の撤廃を約束している)、外貨準備は昨年のスタート時以来80%、金額にして460億ユーロも増加し、2月時点で1000億ユーロ以上に達している。これはチェコの国内総生産(GDP)の約60%に相当する。

合計すると、この2カ国の中央銀行は月平均130億ユーロのペースでユーロ資産を積み上げている。その約半分はユーロ債市場に投じられており、ユーロ圏からの資本流出をかなりの程度、相殺している。

最終的に、資本逃避によりユーロが下落する可能性はある。だが今のところはっきりしているのは、そうした資本逃避が為替レートに持続的な影響を与えるためには、極端に大規模な動きでなければならない、ということだ。

*筆者はロイターの欧州市場担当エディタ-。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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