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コラム

コラム:ユーロ圏で物価上昇率に格差、ECBはかじ取り困難に

[ロンドン 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ユーロ圏の金融政策を巡る議論は間もなく一段と紛糾するのではないか。10月の地域全体の消費者物価指数(速報値)は前年比10.7%上昇したが、これでは各国ごとに非常に物価上昇のばらつきがある現実が見えてこない。フランスの前年比上昇率は7%、ドイツは12%、エストニアは22%に達する。そのため欧州中央銀行(ECB)の利上げ政策はある国にとって行き過ぎとなる半面、別の国には不十分になってしまう恐れが出てきているのだ。

 11月1日、ユーロ圏の金融政策を巡る議論は間もなく一段と紛糾するのではないか。ゼニツァで2015年撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

ユーロ圏各国の物価上昇率の格差は、新型コロナウイルスのパンデミックに起因する景気後退(リセッション)とともに始まった。加盟国それぞれのロックダウン(都市封鎖)政策やワクチン接種率、政府による支援措置の差によって物価の落ち込み具合に違いが発生。そして経済が持ち直すとともに、打撃が大きかった国ほど物価が急速に上がった。

問題をさらに悪化させたのは、ロシアのウクライナ侵攻で深刻となったエネルギー危機だ。その理由として、各国ごとに電源構成やエネルギー消費のパターンが異なる点が挙げられる。昨年8月から今年8月までに、ユーロ圏のエネルギー小売価格は40%上昇した。しかし経済協力開発機構(OECD)が指摘したように、消費者物価指数に占めるエネルギーのウエートはマルタの6.7%からラトビアの16.7%までの開きがある。また変動の大きいエネルギーと食品を除くコア物価上昇率も過去2年で最低のフランスが4%、最高のスロバキアが14%強と格差が生じた。

一方ECBの金融政策は、ユーロ圏全体でまとめて1つの決定しか下すことはできない。今のところ、政策担当者の間では政策金利が景気に対して刺激的でも抑制的でもない「中立」の水準にたどり着くまで、迅速な利上げを行うべきだという点で意見が一致している。この中立金利は何人かの当局者が2%前後と推計しており、年内に到達してもおかしくない。

とはいえインフレが続くならば、政策金利を中立水準より高くすることを迫られるかもしれない。そうなると2011年の債務危機当時と同じく、ECB理事会は北部諸国出身の「タカ派」と南部諸国出身の「ハト派」の意見対立が先鋭化するのではないか。フランスを筆頭とする物価上昇率が比較的低い国は、ECBが利上げを停止すべきだと主張するだろう。逆に物価高騰に見舞われている国は、インフレが落ち着くまで利上げを続けてくれと要望するのは間違いない。

偶然にもECB理事会にタカ派メンバーを送り出しているドイツやオランダなどは、物価上昇ペースがユーロ圏で最も急速なグループに属する。しかし大方の予想では、来年のユーロ圏の成長率は最高でも横ばいが関の山とみられる。つまり利上げを続ければ政治的な混乱を引き起こし、ECB理事会に重大な亀裂が生まれる恐れがある。すると金融政策は予測可能性が下がるとともに、ECBが再びユーロの存在意義に関する問題の中心に据えられてしまうかもしれない。

●背景となるニュース

*欧州中央銀行(ECB)は10月27日の理事会で、政策金利を0.75%から1.5%に引き上げることを決めた。

*10月31日に発表されたユーロ圏の10月消費者物価指数(速報値)の前年比上昇率は10.7%だった。各国別ではフランスとスペインが7%強、ドイツは11.6%、イタリアは12.8%、オランダは16.8%、エストニアは22.4%。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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