June 8, 2018 / 1:19 AM / 12 days ago

コラム:凋落のドイツ銀が市場に生む「疑心暗鬼」

Jamie McGeever

 6月6日、ドイツ銀行の評判は近年、劇的に失墜しているが、恐らく最も驚くべきは、それでも世界の金融市場において欧州最大のプレイヤーであり続けているということだろう。写真は2017年1月、フランクフルトの同銀本店ビル(2018年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[ロンドン 6日 ロイター] - ドイツ銀行(DBKGn.DE)の評判は近年、劇的に失墜しているが、恐らく最も驚くべきは、それでも世界の金融市場において欧州最大のプレイヤーであり続けているということだろう。

問題は、株価が急落し、デリバティブ残高が50兆ドル(約5500兆円)に近づく中で、このドイツ最大の銀行が、市場の混乱を最低限にとどめつつ、その存在感を円滑に少しずつ縮小できるかという点だ。

新任のゼービング最高経営責任者(CEO)は、同行のグローバル投資銀行部門を縮小し、欧州やドイツ国内市場への集中を高める計画に着手した。

外国為替や信用融資、ストラクチャードファイナンスなど、ドイツ銀が大きな存在感を示している市場を切り捨てて、離脱するならば、混乱が生じる可能性は大きくなる。だが、これだけ支配的な地位にある市場を同行が完全に放棄してしまうとは想像しにくい。

金融市場に問われているのは、これほど大規模で複雑なエクスポージャーを抱えた銀行が、はたして市場の流動性やトレーディング、価格決定に破壊的な影響を及ぼすことなく規模を縮小できるのか、という点だ。

ドイツ銀の抱えるデリバティブの総エクスポージャーは、昨年時点で48兆ドルを超えた。ただし正味のエクスポージャーは200億ドルで、投資銀行及びトレーディング事業の収益は142億ドルだ。この規模を、わずか230億ドルの時価総額で支えている状況だ。

市場参加者が吸収すると想定すれば、デリバティブのエクスポージャーは、いかにも大きい。多数のプレイヤーに分散しており、互いの関係が非常に不透明であるだけに、不確実性が増しており、どこが最大のエクスポージャーを抱えているのか、市場参加者は疑心暗鬼に駆られている。

「もし他の銀行やファンドマネジャーが現時点で、ドイツ銀関連で自身がどれだけのエクスポージャーを抱えているかを認識していないとすれば、驚くべきことだ」。そう語るのは、銀行出身で現在は金融アナリストとして独立しているヘレン・トーマス氏だ。

「彼らのリスクはカウンターパーティ・エクスポージャーではなく、マーケット・エクスポージャーだ。ドイツ銀行の衰退は、連鎖反応的に市場全体におけるポジション解消を引き起こしている」と語るトーマス氏。

国際通貨基金(IMF)は2年前、ドイツ銀は他の金融機関との連携があるために、世界金融市場の安定性にとって、他のどの銀行よりも大きなリスクとなっていると主張した。

ドイツ銀の株価は先月末、9.1570ユーロという過去最低の終値を記録し、時価総額は190億ユーロ(約2.5兆円)に下落した。ロイターのデータによれば、時価総額ベースで世界第83位の銀行という位置付けだ。

だがそれでも、銀行業界の分析会社コアリションによれば、ドイツ銀は投資銀行としては、いまだ世界第6位だ。世界のクレジット市場ではJPモルガン(JPM.N)と並んで2位、主要10カ国通貨の外為取引では3位、証券化市場ではシティ(C.N)と並ぶ第3位となっている。

<対照的なJPモルガン>

ドイツ銀は米国などの地域で投資銀行事業を縮小しつつあり、一部の市場からはすでに完全に撤退した。ニューヨークとロンドンでは、数百人以上のトレーダーの解雇が進んでいる。

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他方、他の大手銀だけでなく、資産運用会社なども参入態勢を整えつつある。

アナリストによれば、ドイツ銀の撤退で生じる穴を埋めるための十分な余裕が金融システムには備わっており、それは同銀がコモディティ取引などの活動を縮小したときにも実際に証明されたという。これまで、目に見えるほどの混乱は起きなかった。

ドイツ銀の衰退は目を覆うほどだ。

株価は今年に入って4割下落しており、世界金融危機以前の2007年に、当時のアッカーマンCEOがドイツのメルケル首相と同じ程度の人望を集めていた時期に記録した最高値からは9割も低下している。

2009年には、ドイツ銀が外為取引で世界最大の銀行であり、ユーロマネーによれば、グローバル為替市場における1日平均取引高4兆ドルのうち21%を扱っていた。昨年は第5位で、1日5兆ドルの取引高の5.7%を占めるにとどまっている。

コアリションによれば、2011年当時、ドイツ銀はゴールドマン・サックス(GS.N)と並んで、JPモルガンに次ぐ世界第2位の銀行だった。投資銀行事業とトレーディングによる収益は185億ユーロに達し、債券トレーディングでは単独で世界第2位の規模を誇っていた。当時の株式時価総額は360億ドルだった。

JPモルガンと比較すると、ドイツ銀行がたどった運命はこの上なく対照的だ。

2009年初旬、世界株式市場が危機的などん底に陥ったとき、ドイツ銀の時価総額130億ドルに対して、JPモルガンはその約4.5倍の600億ドルだった。

現在、JPモルガンの時価総額は3690億ドルで、ドイツ銀の約17倍である。

この間、ドイツ銀の市場シェアは全般的に縮小、トレーディング部門や銀行部門におけるさまざまな不祥事によって世界各国で数十億ドルの罰金を支払い、6年間で4人めのCEOを迎える事態に至っている。

国内もしくはユーロ圏の競合他社によって買収される、もしくは国有化されるのではという憶測さえ頻繁に飛び交うようになっている。投資家はこのトンネルの先にさほど明るい光があるとは期待していない。

調査会社FISアステク・アナリティクスによれば、信用取引で貸しに出されているドイツ銀行株は現在10億ドル近くに上り、ドル建てで見るとグローバルの銀行の中で最も高い水準となっている。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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