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アングル:政治・金融リスクは二の次、欧州債買いに走る投資家

[ロンドン 17日 ロイター] - 欧州国債の利回り格差は今やほとんど消滅してしまった。英国民投票における欧州連合(EU)離脱派勝利を受けて経済見通しが下振れ、中央銀行が新たな緩和措置を打ち出すと、少しでも高い利回りを求める投資家の動きに拍車が掛かったためだ。この間、それぞれの国の信用力や政治リスク、財政および経済の状況は重要視されなくなった。

 8月17日、政治・金融リスクは二の次で、投資家は欧州債買いに走っている。写真は水たまりに映るユーロ記号の彫刻。フランクフルトで2012年1月撮影(2016年 ロイター/Kai Pfaffenbach/File Photo)

だが、ひとたび市場の関心が各国固有の事情や外的要因に戻れば、問題が発生する可能性が高まっている。

欧州国債への活発な需要を物語る1つの例として、相対的に格付けの低いスペインの10年債利回りES10YT=TWEBまでが、より高い格付けを有するフランスやベルギー、フィンランドと並んで1%を割り込んでいることが挙げられる。ドイツ国債利回りDE10YT=RRへの上乗せ(スプレッド)はわずか100ベーシスポイント(bp)強と、過去には長続きした局面がない水準まで縮小した。

やはりドイツやフランスに比べて格付けが低いイタリアの10年債利回りIT10YT=RRは1%強で推移。一部のファンドマネジャーによると、これは同国が抱える銀行セクターの不良債権問題や、憲法改正の是非を問う国民投票に絡む政治的な不透明感を反映していない水準という。

ピクテ・ウェルス・マネジメントの欧州担当シニアエコノミスト、フレデリク・デュクロゼ氏は「欧州国債に違いはほぼなくなっている。これらの価格が調整される場合には、悲惨な事態が起こりかねない」と警告する。

欧州中央銀行(ECB)による大規模な資産買い入れが市場の支えとなり、各国固有のリスクの影響を和らげているのは間違いない。しかし投資家が、市場心理の変化や大規模な売りを引き起こす何らかの材料に対して完全な防御態勢を整えているわけでもない。

昨年4月から6月には物価が上向いたことをきっかけにドイツ国債利回りが約100bp、スペインやイタリアは120bp強も跳ね上がる予想外の展開に見舞われた。

16日にはポルトガル国債利回りが格付け会社DBRSの警告を受けて急上昇した。固有リスクが再び注目された場合にあっという間に利回りが高騰することを再認識させる動きと言える。

またアナリストによると、今後の経済指標や米国の利上げ観測の高まりなどが欧州国債市場の調整をもたらしてもおかしくない。

みずほインターナショナルの金利ストラテジスト、アントワーヌ・ブベ氏は「全般的に国債利回りが反転上昇するシナリオでは、リスクが最も大きいとみなされる国債が一番打撃が大きいだろう。それが昨年3月から6月に目にされた光景だった」と指摘。周縁国の国債は全般的な売り局面でスプレッド拡大が予想されるだけのリスクを十分はらんでいるとの見方を示した。

それでも世界全体で13兆ドル余りの国債・社債の利回りがマイナス圏に突入する中で、投資家はより高いリターンを得るために年限や格付けなどの範囲をどんどん拡大し、その結果としてスペインやイタリアの国債利回りが米国債を下回るようになった。

JPモルガン・インカム・オポチュニティ・ファンドのオクサーナ・アロノフ氏は、マイナス金利の債券が増えるとともに、ファンダメンタルズに基づいて取引されなくなってきていると説明した。

一方、フランクリン・テンプルトン・フィクスト・インカム・グループの欧州確定利付き商品責任者、デービッド・ザーン氏は、欧州の発行体間の利回り格差が乏しくなっているからこそ、ファンダメンタルズの分析がより大事になっていると主張する。向こう半年から1年はともかく、いずれはファンダメンタルズが主役に復帰する可能性があり、その債には大規模な価格調整が起こり得るとみている。

(Dhara Ranasinghe記者)

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