March 27, 2013 / 2:24 AM / 7 years ago

焦点:欧州債務危機、キプロス救済後のシナリオ

[ブリュッセル 26日 ロイター] ユーロ圏は、キプロス救済で預金者に負担を求めるという異例の措置に踏み切った。当局者からはキプロスは特殊なケースとの発言が相次いでいるが、市場では今後、他国の銀行救済でも預金者が負担を強いられるのではないかとの見方が浮上している。

3月26日、ユーロ圏は、キプロス救済で預金者に負担を求めるという異例の措置に踏み切った。アテネのバンク・オブ・キプロス前で撮影(2013年 ロイター/John Kolesidis)

Q:キプロス支援は「特殊事例」か「ひな形か」

A:ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のダイセルブルーム議長はロイターとフィナンシャル・タイムズ紙(FT)とのインタビューで、キプロス支援策は、納税者ではなく銀行に負担を求めるものであり、将来の銀行破綻処理のモデルになると発言、金融市場に動揺が走った。

フィンランドのカタイネン首相も議長の発言を支持。民間に損失負担を求める「ベイルイン」型の手法を将来の欧州の銀行同盟に取り入れる必要があるとの認識を示した。ただ、必ずしも預金者が負担を強いられるわけではないとも主張した。

欧州中央銀行(ECB)は、市場の懸念を払しょくするため、キプロスは特殊な事例だと強調。同国の銀行は株式や債券ではなく、主に預金で資金を調達していたと指摘している。

欧州委員会は、欧州連合(EU)の新法草案で銀行破綻時に預金保険対象外の大口預金をベイルインの対象にすることは可能かもしれないが、10万ユーロ以下の預金は保護されると表明した。

現行ルールでは、株主・社債権者がまず損失を負担するが、シニア債の保有者はこれまでのところ損失負担の対象外となっている。

ECBは、アイルランドの債務危機の際、シニア債の「ヘアカット」を阻止したが、将来の銀行破綻処理については、シニア債ヘアカットへの反対を取り下げている。

EU首脳会議は昨年6月、欧州安定メカニズム(ESM)による銀行への直接資本注入を認めることで合意したが、ダイセルブルーム議長の発言は、ESMによる資本注入が掛け声倒れに終わる可能性が高まっていることを示している。

Q:キプロスの次の展開は。

A:キプロスでは、28日から約2週間ぶりに銀行が営業を再開するが、財務相は資本規制が「数週間程度」適用されると述べている。規制の内容は明らかになっておらず、取り付け騒ぎを懸念する声も出ている。

英警備保障会社G4S(GFS.L)は、24時間体制でキプロスの銀行への現金輸送が行われていると表明。警察官の保護の下、現金自動預払機(ATM)に現金を補充しており、銀行の営業再開に向け、警備員派遣の準備を進めていることも明らかにした。

金融支援に伴い閉鎖が決まったキプロス・ポピュラー銀行CPBC.CYも、一部の業務を再開する。同行の預金保険対象預金(10万ユーロ以下)はバンク・オブ・キプロスBOC.CYに移管される。

キプロス議会は28日、支援合意後初めてとなる定例審議を行う。

ポピュラー銀行とバンク・オブ・キプロスの大口預金者(10万ユーロ超)は40%前後の損失を被る可能性がある。大口預金者の多くはロシア人など外国人だ。

議会は先週、銀行整理法案を可決しており、議会で金融支援策を批准する必要はない。ただ、支援策の一環で売却する国有資産について、民営化法案を可決する必要がある。

銀行は、大規模な人員削減を迫られるとみられ、労働争議が起きる可能性がある。

議会は先に小口預金への課税法案を否決しており、今後、ポピュラー銀行の従業員年金など、年金基金の保護を求める動きが広がる可能性もある。

キプロス中銀のデメトリアデス総裁に対しては、危機対応のまずさを批判する声が出ており、総裁が銀行整理を進められるのか不安視する向きもある。

デメトリアデス氏は、前職の英レスター大学教授(経済学)時代、緊縮策を厳しく批判していた。

Q:ユーロ圏の今後の動きは。

A:ECBはユーロを防衛するため責務の範囲内で「あらゆる措置」を講じる考えを示している。

具体的には、EU・国際通貨基金(IMF)の支援プログラムに同意したユーロ圏加盟国の国債を購入する対策を表明しているが、まだ発動実績はない。

ユーロ圏ではキプロスのほか、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペインが欧州救済基金から緊急融資を受けたが、ユーロ圏財務相会合は、それ以外に支援が必要な国はないとしている。

アイルランドとポルトガルは年内の市場復帰が期待されている。

欧州議会は先週、ECBによる銀行監督一元化案を承認。来年半ばまでに順次、新体制を導入する。

欧州委員会は、ECBが監督する銀行の破綻処理メカニズムを統一する法律を今年夏に提案する方針。その後、加盟国の預金保険制度の統一に向けた提案を行う方針も示している。

ただ、ドイツなど北部諸国は預金保険の共同負担に反対しており、各国の預金保険機構が欧州救済基金と再保険契約を結ぶ案が浮上している。

Q:次の不安要因は。

A:スロベニアのクラニェツ中銀総裁は先週、同国が金融支援を要請することはないとの認識を示した。

スロベニアの銀行は、国内総生産(GDP)の約2割に相当する70億ユーロの不良債権を抱えているが、銀行部門の総資産はGDPの135%と、キプロスの同800%を大きく下回っている。

スロベニアは、前政権が今年1月にスキャンダルで過半数議席を失い、先週、中道左派政権が発足。政局が不安定になっている。

ユーログループのダイセルブルーム議長は26日、ユーロ圏で通常を上回る預金が引き出されている形跡はみられないと発言。キプロス支援合意を受けた周辺国から中核国への異常な預金移動もないと述べた。

アナリストの間では、欧州の預金者や企業が取引銀行を増やし、口座残高を10万ユーロ以下に抑える動きが広がる可能性があると指摘している。

ユーロ圏では、ルクセンブルクとマルタで、銀行部門の総資産が対GDP比でキプロスを上回っているが、両国がキプロスと同じリスクを抱えているとの見方は少ない。

キプロス・ショックの前は、イタリアの政局に関心が集まっていたが、先月の総選挙直後に上昇したイタリア国債利回りは再び低下に転じている。

中道左派連合のベルサニ民主党党首が政権樹立に失敗した場合、再びテクノクラート政権が誕生し、早期に総選挙が行われるとの見方が浮上しているが、市場はこうしたシナリオにも動じていないようだ。

ユーロ圏の大きなリスクは、南欧の景気停滞や、失業増大を受けた社会不安・政治の急進化との見方が出ている。

アナリストは、ギリシャの連立政権が国民の反発で崩壊する恐れがあると指摘している。

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