[ロンドン 29日 ロイター] - ユーロ圏の短期金融市場が織り込む欧州中央銀行(ECB)が来年6月に10ベーシスポイント(bp)の利上げを行う確率は現在30%に低下している。
織り込み度の低下は、経済成長が減速し、イタリアやスペインの政局に対する懸念が強まる中、利上げ観測が急速に後退していることを反映している。
2019年6月のECB理事会をカバーするユーロ圏翌日物無担保金利加重平均(EONIA)フォワード金利と現物の翌日物EONIAの差は3bpで、先週の約6bp、今月初旬の9bpから低下した。ECBWATCH
これは、ECBが現在マイナス0.40%の中銀預金金利を10bp引き上げる確率が約30%であることが織り込まれていることを示す。
一方、市場は来年末までに10bpの利上げが行われる確率は完全に織り込んでいる。今月初めには、来年中に10bpの利上げがほぼ3回あると見込まれていた。
ピクテット・ウエルス・マネジメントの欧州担当シニアエコノミスト、フレデリック・デュクロゼ氏は、「来年はただ1回の10bpの利上げが実施されると予想されており、市場予想は大幅に後退した」と指摘。「ECBは量的緩和策を12月に終了することは可能で、利上げ観測を後ずれさせることで市場はECBに代わる役割を果たしているとも言える」と述べた。
JPモルガンは前週、購買担当者景気指数(PMI)統計が軟調だったことを受け、ECBの利上げ時期の見通しを19年3月から同年6月に後ずれさせている。
ただ一部アナリストの間では、現在の市場の見通しはやや先走り過ぎているとの見方も出ている。
スタンダード・チャータードの欧州担当首席エコノミスト、サラ・ヘウィン氏は「ECBは実用主義路線をとり、その時の経済情勢に合った政策をとると考えている」とし、「その時までにイタリアの新政権が政策の一部を実施している可能性があることなどを踏まえると、19年6月の利上げの確率が完全にゼロであるとは言えない」と述べた。