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アングル:意外と低いEVのCO2削減率、電源構成で大きな差

[ベルリン 10日 ロイター] - 電気自動車(EV)は地球温暖化と戦うための強力な武器だ。しかし、EVが温室効果ガスの排出量を減らす効果には国ごとに大きなばらつきがあり、ガソリン車よりも排出量が多い場合もあることがデータ分析で明らかになった。

 11月10日、電気自動車(EV)は地球温暖化と戦うための強力な武器だ。ロンドンのEV充電施設で10月撮影(2021年 ロイター/Toby Melville)

欧州では、EVの販売が世界で最も急速に増えている。だが、調査会社レイディアント・エナジー・グループ(REG)がまとめたデータによると、ポーランドやコソボでは発電システムが石炭に依存しているため、実際の排出量はEVの方が多い。

欧州の他の国ではEVが効果を上げているが、削減量は電源構成や充電のタイミングに左右される。

ガソリン車に対するEVの二酸化炭素(CO2)排出量削減率が最も高いのは、電力を原発と水力で賄っているスイスの100%で、以下ノルウェー(98%)、フランス(96%)、スウェーデン(95%)、オーストリア(93%)となっている。

一方、削減率が低いのはキプロス(4%)、セルビア(15%)、エストニア(35%)、オランダ(37%)など。欧州最大の自動車生産国であるドイツは、電力を再生可能エネルギーと石炭の両方に頼っており、削減率は55%だ。

REGの調査は、今年1月1日から10月15日までのデータに基づいている。米EV大手テスラの「モデル3」と同等電費のEVと平均的なガソリン車について、それぞれ100キロ走行するのに必要な電力とガソリンによるCO2排出量を比べた。

ドイツやスペインなどは、太陽光と風力に多額の投資を行っている。ところが、再生可能エネルギーの貯蔵設備が不足しているため、EVによる排出量削減率は1日のうち、いつ充電するかで大きく変わる。

英北部グラスゴーで開催の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で10日に行われる運輸協議を前に、欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)と欧州環境機関(EEA)が公表したデータによると、太陽光と風力が潤沢な午後に充電すれば、天然ガスや石炭を燃料に発電することが多い夜間よりも削減効果が16-18%高まる。

このデータによると、自動車産業が排出量を削減できるかどうかは、電力の脱炭素化と再生可能エネルギー貯蔵方法の改善にかかっている。欧州の多くの国はまだ、この課題を克服できていない。

リチウムイオン電池がフル充電の状態を維持できるのは4時間程度に過ぎず、昼間に太陽光や風力で大量の電力を生み出している国でも、夜間の充電のためにこうした電力を確保するのは難しい。

REGの研究者によると、欧州全土で継続的に低炭素エネルギーが利用できるようになるまでは、CO2排出量の削減に熱心なEVのドライバーや充電インフラを設計する技術者が、こうした課題を考慮する必要がある。

REGの研究者のシド・バガ氏は「電力は、内燃機関では絶対にできない方法で運輸業を脱炭素化する力を持っている」と指摘。「ただ、電化による脱炭素化の効果は、その国のエネルギー構成によって大きく異なる。EVへの移行を成功させるには各国が、信頼性が高く、達成可能な脱炭素化戦略を導入する必要がある」と述べた。

自動車メーカーがエンジンの燃費向上に取り組んだため、EVとガソリン車の排出量の差は近年、縮まっている。EEAのデータによると、欧州で新規登録されたガソリン車の炭素強度(一定の国内総生産を創出するために必要なCO2排出量)は、2006年から16年の間に平均25%減少した。

一方、欧州におけるEV販売の増加は、政府の補助金や内燃車に対する新たな規制が支えになっている。

EVの充電による排出量がガソリン車の走行よりも85%以上少ない国は、水力発電や原発など、持続的な低排出電源を持つ国が多い。

一方、電力の46%を再生可能エネルギーで賄うアイルランドはEVの充電による削減率が、電力の94%を天然ガスで賄うモルドバとほぼ同じだった。

バガ氏によると、アイルランドの排出実質ゼロの発電量はモルドバよりも多いが、それ以外の発電では、排出量が天然ガスより多い石油、石炭、泥炭の占める比率が高いという。

(Victoria Waldersee記者、Ally Levine記者)

*記事の内容は執筆時の情報に基づいています。

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