[上海 19日 ロイター] - 中国の規制当局が暗号資産(仮想通貨)の規制を強化し、金融機関や決済企業が仮想通貨関連の業務を行うことを禁じた。今回は2017年に出された前回の規制に比べて禁止されたサービスの範囲が非常に広く、「仮想通貨には実物資産の価値による裏付けがない」と断じた。
規制強化の内容、過去の規制との比較、導入された理由や影響をまとめた。
<規制強化の内容>
中国インターネット金融協会(NIFA)、中国銀行業協会(CBA)、中国支付清算協会は18日、銀行やオンライン決済企業など加盟金融機関に対し、口座開設、登録、取引、清算、決済、保険など暗号資産に関連するあらゆるサービスの提供を禁止すると通達した。これらの項目はいずれも2017年の規制に盛り込まれていた。
しかし中国人民銀行(中央銀行)の発表によると、今回は17年に対象から外れていたサービスも規制の適用を受ける。
例えば、金融機関が暗号資産を受け入れたり、支払いや決済の手段に利用することを禁じると明確にした。金融機関は暗号資産を人民元や外国通貨と交換するサービスも提供できない。
さらに金融機関は暗号資産について、貯蓄、信託、担保差し入れなどのサービスを提供することや、暗号資産関連の金融商品を組成することが禁じられた。また信託やファンド商品が暗号資産を投資対象として利用することも禁じる。
銀行や決済企業は暗号資産取引が絡む資金の流れの監視態勢を強化し、リスクの特定で協力を深めることも求められた。
<2017年の規制>
中国は暗号資産を法定通貨と認めておらず、銀行制度は暗号資産の受け入れも、関連サービスの提供も行っていない。
中国政府は2013年に、代表的な暗号資産であるビットコインを仮想コモディティー(商品)と認定し、ビットコインのオンライン取引に個人が自由に参加することを認めた。
しかし同年末に中銀など金融当局が、銀行や決済会社によるビットコイン関連サービスの提供を禁止。17年9月には、投資家を保護し、金融リスクを抑制するために、暗号資産を発行して資金を集める「新規仮想通貨公開(ICO)」を禁止した。
ICO規制は暗号資産取引プラットフォームが法定通貨を暗号資産に交換したり、その逆を行うことも禁じた。
こうした規制によって暗号資産取引プラットフォームのほとんどがサービスを停止し、その多くが海外に拠点を移した。
ICO規制は金融機関や決済企業に対し、口座開設、登録、取引、清算、整理などのサービスを含む、ICOや仮想通貨向けのサービスの提供も禁止した。
中銀によると、18年7月までに88の仮想通貨取引プラットフォームと、85のICOプラットフォームが市場から撤退した。
<規制強化の理由>
ビットコインの世界的な値上がりで、中国では暗号資産取引が復活している。
今回出された通達は、ビットコインの投機的な取引が再び増加し、「人々の資産の安全性」を脅かし、「正常な経済的、金融的秩序を破壊している」と警鐘を鳴らした。
中国人投資家の多くは、フォビやオーケーエックスなど海外に移転した中国系取引所が所有するプラットフォームで取引を行うようになっていた。一方、暗号資産の店頭取引市場が再び活況を呈し、閑古鳥が泣いていたソーシャルメディア上のチャットルームも息を吹き返していた。
バイナンスやMXCなど中国に力点を置く取引所は、個人のオンライン口座開設を認めており、わずか数分で手続きできる。こうした取引所は店頭市場での相対取引向けサービスも提供しており、それが人民元と暗号資産の交換に役立っている。こうした取引は銀行のほか、アリペイやウィーチャットペイなどオンライン決済サービスを通じて行われる。
個人投資家は暗号資産の「採掘者(マイナー)」からコンピューティングパワー(計算能力)も購入している。マイナーは素早く、高い利回りを約束するさまざまな投資手段を開発している。
一方、暗号資産は法定通貨である人民元にとって脅威となり得るため、人民銀行は独自のデジタル通貨の立ち上げに取り組んでいる。
<規制強化の影響>
規制強化により個人がさまざまな支払い手段を使って暗号資産を購入するのは一段と困難になる。マイナーは暗号資産と人民元の交換が難しくなり、事業が打撃を受けそうだ。
しかし銀行や決済企業も暗号資産に関連する資金の流れの把握で困難に直面する。
ニューヨーク大学法科大学院のウィンストン・マー非常勤教授は、今回の規制強化は暗号資産関連の取引を中国の金融制度から完全に切り離す目的で設計されていると指摘。政府は暗号資産を標的にした新たな規制を打ち出すと予想した。
香港ビットコイン協会は中国の新たな暗号資産規制について「ビットコイン市場に参入して間もない人たちのために言えば、強気サイクルのときに人民銀が少なくとも1回ビットコインを禁止するのは慣例だ」とツイッターに投稿した。
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