March 8, 2019 / 6:41 AM / 4 months ago

アングル:ファーウェイが米政府に「反撃」、提訴の勝算あるか

[7日 ロイター] - 中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]と米国政府との闘いが新局面を迎えている。ファーウェイは7日、米国防権限法(NDAA)で連邦機関による同社製品の使用が禁じられたことを巡り、禁止の解除を求めて米国政府を提訴した。

 3月7日、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と米国政府との闘いが新局面を迎えている。写真は同社の店舗。北京で撮影(2019年 ロイター/Thomas Peter)

昨年8月に制定されたNDAAを含め、国家安全保障に関する議会決定ついて、米国の裁判所は後から異議を唱えることを避ける傾向にあるため、法律専門家はファーウェイが敗訴する可能性が高いとみている。

だが一部の専門家は、ファーウェイは勝つ可能性がわずかだと分かっていても、米国政府を相手取ることで世論を味方につけることを期待している可能性があると指摘する。

ファーウェイに対する措置や訴訟の性質、また訴訟が退けられる可能性が高い理由をまとめた。

●ファーウェイはなぜ米国政府と対立するのか

中国深センを拠点とするファーウェイは世界最大の通信機器メーカーであり、米アップル(AAPL.O)や韓国サムスン電子(005930.KS)と競合するスマートフォンメーカーでもある。

ファーウェイと同社の創業者で最高経営責任者(CEO)の任正非(レン・ツェンフェイ)氏は、中国の軍部や情報機関との緊密な関係が長年疑われてきた。

ファーウェイは中国政府との関係を否定しており、同社製品がスパイ活動を可能にするよう設計されているとの疑念も一蹴している。

また、今回の訴訟で問題とされているNDAAとは別に、米政府は次世代通信規格「5G」のネットワーク構築に際し、自国企業がファーウェイ製品を使用することを禁止する法律の制定も検討しており、同盟国にも同社製品を排除するよう呼びかけている。

米政府はまた、ファーウェイが企業秘密を盗み出し、米国の対イラン制裁に違反していると非難している。任CEOの娘である孟晩舟(メン・ワンツォウ)最高財務責任者(CFO)は昨年12月、米司法省の要請により、カナダ当局によって逮捕された。同省は孟CFOを米国の対イラン制裁違反で共謀した罪などで訴追した。

米国による一連の行動は、トランプ米政権が中国と通商協議を行うのと時期と同じくしており、政治的な動機に基づいているとファーウェイは主張する。同協議において、米国は知財を保護し、中国企業への技術移転強制を禁止するため中国に法律の変更などを求めている。

●ファーウェイは何を訴えているのか

自社製品の使用禁止は「私権はく奪法」に当たるというのがファーウェイの主な主張である。ある特定の人物や団体に対して、訴訟を行わずに罰する法的措置を意味する。

私権はく奪法は合衆国憲法で明示的に禁止されている。

これに係る最もよく知られたケースの1つとして、議会が「転覆活動」を支援したとして政府職員3人から給与をはく奪したが、米連邦最高裁判所が1946年にこれを違憲だとして無効とする判断を全員一致で下した例がある。

最近では、非営利団体「プランド・ペアレントフッド」への資金提供を制限するノースカロライナ州の法案について、同団体を「特別に罰するよう導入」された私権はく奪法であり違憲との判断を連邦判事が下した。

ファーウェイはまた、適正手続きを行う権利が侵害されているとし、米議会が憲法で定められている三権分立に違反し、司法の権力を行使していると主張している。

●ファーウェイに勝算はあるか

米国の法律専門家の大半は「ない」との見方を示している。ファーウェイが勝訴するには、米議会がNDAAに同社製品の使用禁止を含めたことは不当であると裁判所が判断しなくてはならないとみられるからだ。

一般的に、米国の裁判所は、議会や行政府が下した国家安全保障上の決断に疑念を挟むことに消極的である。議会や行政府は、裁判所よりそのような決断を下すのに適した立場にあるとみられている。

一部の専門家は、米連邦控訴裁判所が2018年11月に、今回のファーウェイと似たような私権はく奪法を主張する訴えを却下したことに注目している。ロシアの情報セキュリティー会社カスペルスキーは、自社のウイルス対策ソフトが2017年に米政府のネットワークから法律で締め出されたことを巡り提訴した。

裁判所は、カスペルスキーを巡る国家安全保障上の懸念は「十分すぎる証拠」に裏付けられており、国家の安全を守るための対策を講じる裁量を議会に与える必要があるとの判断を下した。

ファーウェイが訴訟を起こしたテキサス州連邦地裁はこの判断に縛られることはないが、カスペルスキーのケースとの類似性から慎重にその理論構成を検討するだろう。

●勝算のない訴訟をなぜ起こすのか

結果がどうであれ、世論に訴えて何らかの利益が得られるならば、法廷闘争に持ち込む価値はあるとファーウェイは考えているのかもしれない。同社はこの2カ月、大規模な広報活動を展開し攻勢をかけている。

もしファーウェイが棄却の申し立てを乗り切れば、文書や当局者の証言を含む証拠開示を米政府に求めることが可能となる。

そのような文書によって、米政府の姿勢が現実に存在する国家安全保障上の懸念よりも政治的な動機に基づいている、という同社の主張を裏付ける証拠が明らかとなる可能性がある。

しかし専門家は、ファーウェイが棄却の申し立てを回避できる見込みはほとんどないとし、カスペルスキー訴訟は証拠が開示される前に終わりを迎えたと指摘する。中央集権的な中国政府の性質や自国産業との緊密な関係、そして中国によるハッキングを示す文書に裏付けられた数多くの案件は、NDAAには合理的な根拠があるという立場を立証することになるだろう。

中国人が所有する風力発電企業が関わる事例がファーウェイにかすかな希望をもたらすかもしれないと、一部の専門家は指摘する。

ラールズ社は、当時のオバマ政権が国家安全保障上の理由から、同社がオレゴン州の軍事施設近くに風力タービンを建設するのを2012年に阻止したのを受け、提訴した。連邦裁は、米政府が判断の根拠とした証拠に対して反証する機会をラールズ社に与えず、適正手続きを行う同社の権利を侵害したとの判断を下した。

この裁判は、2015年に秘密裏に和解が成立し、その後ラールズ社は風力会社を売却した。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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