April 6, 2019 / 11:22 PM / 9 days ago

アングル:過熱する印パ情報戦、巻き込まれる米大手SNS

[イスラマバード/ニューデリー 2日 ロイター] - パキスタンのソーシャルメディア運動家ハンザラ・タヤブ氏は、超国家主義者のサイバー戦士たち約300人を動員し、宿敵インドに対するインターネット上での戦争を仕掛けた。

 4月2日、パキスタンのソーシャルメディア運動家ハンザラ・タヤブ氏(写真)は、超国家主義者のサイバー戦士たち約300人を動員し、宿敵インドに対するインターネット上での戦争を仕掛けた。イスラマバードで3月撮影(2019年 ロイター/Akhtar Soomro)

こうした戦いに、ツイッターやフェイスブックなどグローバルな巨大テクノロジー企業が巻き込まれる例はますます増えている。

24歳のタヤブ氏は、フェイスブックや暗号化されたワッツアップのチャットルームで数日かけて自ら率いる「パキスタン・サイバーフォース」のグループを組織し、反インドのコンテンツを宣伝し、自身が5万人以上のフォロワーを抱えるツイッターなどで拡散した。

キャンペーンの範囲は、インドによる人権侵害疑惑を強調することから、インド・パキスタン間の歴史的な対立の焦点として領有権が争われているヒマラヤ山麓のカシミール地方でインド治安部隊と戦う武装勢力への称賛に至るまで、多岐にわたっている。

1日、タヤブ氏の作業は困難さを増した。フェイスブックにおける「パキスタン・サイバーフォース」のアカウントが削除されたからだ。フェイスブックは「パキスタン・サイバーフォース」を含む103のパキスタン系アカウントを、「なりすまし行為」とスパム送信を理由に削除した。インドのナショナリスト系アカウントもここ数週間でいくつか使用を停止されている。

タヤブ氏は、パキスタンを動揺させようとするインドの試みから自国を防衛する「オンライン戦闘員」と自称する。今後も、核兵器を保有する印パ両国の間で戦われる広範囲の情報戦争に参加し続けるつもりだという。

「ソーシャルメディアを通じたインド側の主張に対抗している。パキスタンの敵に反撃している」とタヤブ氏は首都イスラマバードでロイターに語った。

両国合わせて15億人の人口を抱えるインドとパキスタンは、フェイスブックとツイッターにとっては急成長市場だとアナリストは言う。

だが、この地域で対立する多くの超国家主義・過激派グループが、自らの政治的な主張を展開するための舞台としてフェイスブックとツイッターを利用する中で、アカウント削除の措置をとるたびに、両社は「偏向」批判を浴びている。

フェイスブックは近年、世界各地で批判を浴びている。2016年の米国大統領選挙や英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票の際に世論操作を狙う偽装アカウントの利用を停止しなかったことや、ミャンマーでの人種差別的な暴動をあおったフェイスブック上でのヘイトスピーチを根絶する措置をとらなかったことなどだ。

タヤブ氏によれば、「パキスタン・サイバーフォース」のメンバーが保有するアカウントは、フェイスブックで4件、ツイッターで20件以上が過去2カ月で削除された。同氏は、以前使っていたツイッターの個人アカウントが2016年に削除されたことを今も怒っている。

ツイッターの広報担当者は、「当社は公平性を重んじており、政治的な見解に基づく措置をとることはない」と述べている。

フェイスブックの広報担当者はロイターに対し、インド政府からの圧力を受けてパキスタン系のアカウントを排除したことはなく、利用停止は、アカウントの利用者が虚偽の情報を広めるために互いに協力して偽装アカウントを利用していたためである、と話した。

フェイスブックは「こうした共謀によるなりすまし行為を行う組織を停止するのは、その欺瞞(ぎまん)的な行為が理由であって、彼らがシェアしている内容や、それらのアカウントの背後にいる人々のイデオロギーや政治的傾向が理由ではない」としている。

<プロパガンダ合戦>

パキスタンとインドは2月、戦闘行為に走った。1971年の衝突以来となる互いの領土に対する空爆作戦を実施し、カシミール地方上空では短時間ながら戦闘機による交戦も生じた。

この突然の衝突と並行して、ソーシャルメディアでは激しいプロパガンダ合戦が展開された。

パキスタン軍部にとって、こうした政治的・イデオロギー的な言説によるオンライン上の戦いにおける勝利は、至上命題の1つになっているとアナリストは言う。軍の広報官は、パキスタンに対して非伝統的な「第5世代の戦争」が仕掛けられている、と警告することが多い。

フェイスブックは1日、排除された103件のアカウントは、パキスタン軍広報部の職員が関係する組織の一部だったと明らかにした。

タヤブ氏は「パキスタン・サイバーフォース」とパキスタン軍との関係を否認し、ボランティアで構成されたグループだと述べている。

だが、こうした「サイバー軍」は、直接的にパキスタン軍ないし文民国家機関のために働いており、事実上、オンラインの戦場における軍の代役、民兵組織として活動しているとアナリストは指摘する。

「こうした資金力と組織力のあるグループは、実際には、このような第5世代の戦争に向けた一種の防衛線となっている」と、デジタル分野の人権を保護するパキスタンの団体「バイツ・フォー・オール」のシャフザード・アーメド氏は語る。

ロイターはパキスタン軍にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

<「祖国への裏切り」>

インドにおいても、似たような国家主義グループが複数生まれており、ソーシャルメディア上では、インドに対して批判的(あるいはパキスタン支持)とみられる人々が迫害を受けている。

こうしたグループの1つ「クリーン・ザ・ネーション」によれば、同グループの活動の結果、「反インド」的なコメント、あるいはインド軍に批判的な発言を投稿した50人以上が逮捕されるか、停職・停学処分を受けたという。

同グループの共同創設者の1人であるラフル・カウシク氏はロイターに対し、「インドはわれわれの祖国であり、祖国を守り現場で戦っている人々を罵倒するような人間は、この国で働くこと、この国で生活していくことを許されるべきではないと私は思う」と語った。「それは明らかな裏切りだ」

カウシク氏によれば、「クリーン・ザ・ネーション」は、与党インド人民党(BJP)とは公式的に関係はないという。だが2月末、インドの支配下にあるカシミール地方でパキスタン人武装勢力による攻撃で治安部隊員40人が殺害されたことを受けて同グループが創設されたとき、BJPの指導者の1人は賛辞を送った。

「クリーン・ザ・ネーション」の共同創設者のうち、シッダールタ・カプール氏とアシュトシュ・バシシュタ氏のツイッターは、モディ首相からフォローされている。カウシク氏など他のメンバーも、モディ首相やその他の閣僚と会ったときの写真をソーシャルメディアに投稿している。

 4月2日、パキスタンのソーシャルメディア運動家ハンザラ・タヤブ氏(写真)は、超国家主義者のサイバー戦士たち約300人を動員し、宿敵インドに対するインターネット上での戦争を仕掛けた。イスラマバードで3月撮影(2019年 ロイター/Akhtar Soomro)

BJPのソーシャルメディア対策を指揮するアミット・マルビヤ氏にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

「クリーン・ザ・ネーション」によれば、同グループのフェイスブックアカウントが先月、いくつか削除されたという。この動きは、フェイスブックが削除したという野党・国民会議党と関連する549件のアカウントおよび138件のページとは無関係に行われた。

(翻訳:エァクレーレン)

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