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情報BOX:英金融街シティー、EU完全離脱で環境どう変わったか

[ロンドン 26日 ロイター] - 英国と欧州連合(EU)は26日に合意した新たな金融分野における取り決めを通じて、金融規制の策定で協力し合うことができるようになる。ただ、これが即、英金融街シティーのEU市場に対するアクセス状況を改善させるものではほとんどない。

 英国とEUとのつながりは、ロンドンの世界最大の金融センターとしての地位を強化してくれたほか、英国の大きな税収源にもなっていた。英金融街シティー(写真)のEU市場における事業展開と顧客サービスの能力がどう変化したかをまとめた。19日撮影(2021年 ロイター/Henry Nicholls)

英国の金融サービス業にとってEUは最大の顧客であり、市場規模は年間約300億ポンドに達していた。それが今年1月1日に英国がEUを完全離脱したことで、直接の接点を失ってしまったのだ。

英国とEUとのつながりは、ロンドンの世界最大の金融センターとしての地位を強化してくれたほか、英国の大きな税収源にもなっていた。

シティーのEU市場における事業展開と顧客サービスの能力がどう変化したかは以下の通り。

◎シティーにとって1月以降何が変わったか

1月に発効した英国とEUの離脱協定に金融サービスは含まれていなかった。だから英国拠点の金融機関が無条件でEU市場にアクセスできる権利は消滅した。今後アクセスできるかどうかは英国の金融規制がEUと「同等」だと評価されるかにかかっている。

◎新たな取り決めの内容は

EUが何年も前から米国との間に設けているのと同様に、協議の場(フォーラム)を設けることが定められた。英国とEUの金融規制当局は、非公式かつ拘束力のない話し合いを行う。しかし市場アクセスそのものを交渉する場ではない。

◎同等性とは何か

EUが域外の銀行、保険などの金融機関に域内への市場アクセスを認める際の原則。これらの機関の本国で採用される金融規制について、域内と「同等」で、域内並みに「頑健」だとEUがみなせば、アクセスが承認される。

もっとも同等性原則で承認される事業からはリテール銀行のような金融活動が除外される。完全なアクセスを認めた、いわゆる「パスポート」とは程遠い。英金融界は2016年の英国民投票でEU離脱が賛成多数となって以来ずっと、パスポートの権利を付与してほしいとEUに働き掛けている。

また同等性原則で許されたアクセス権は1カ月前の通知で撤回可能なため、信頼性に欠ける面がある。ただ英国は新たなフォーラムが、EUを説得してこの仕組みをより予測可能な形にするのに役立つと期待している。

◎同等性で承認されたものはあるか

EUが今のところ同等性の評価を与えたのは2つの事業しかない。英国内でのデリバティブ清算とアイルランドの証券決済で、期間はそれぞれ18カ月と6カ月だ。EU側は、シティーへの依存を減らして域内に独自の資本市場を整備したいことや、英国が自国の規制をEU規制からどれほどかい離させたいか見極めたいことを理由に、同等性評価の承認を「急がない」と表明している。

ロンドンの金融機関はEU市場へのアクセスが制限されるかゼロになった事態を受け、EU域内に新たに設立した拠点に7500人の雇用と1兆ポンドを超える資産をすでに移し、EU市場の顧客との関係維持に努力している。

ユーロ建ての株式、債券、デリバティブ取引はロンドンを離れ、今やアムステルダムが欧州最大の株式取引センターになりつつある。ロンドンの資産運用会社が運用ファンドのためにEU域内での株式購入を続けられるかどうかについては、英国とEUは継続で合意した。

◎EUの金融機関はロンドンを去る必要があるか

その必要はない。英政府は国際金融センターとしてのロンドンの基盤を守る目的でEUの金融機関に最大3年間とどまることを認めており、さらにこれらの機関が恒久的な活動の承認を求めてくることを期待している。英国は、EUの金融機関が英国の顧客に直接信用格付けを行うなどの特定のサービスに関しては、英国として認めようとしている。

英国は同国の金融機関向けには、EU市場の顧客との円滑な取引が損なわれないように、EUのデリバティブ取引プラットフォームを利用するのを認めている。

◎EUと英国の言い分は

EUは、英国が離脱前に比べて金融ルールをどこまでEUルールからかい離させたいかをはっきり把握できるまでは、市場アクセスを承認しない意向だ。結局はシティーがEU域内の銀行に対し競争上の優位に立つのではないかと懸念しているためだ。

英国は、一部のEUルールは適用せず、保険会社の資本基準など別の一部は修正し、投資会社向けには、最終確定していない欧州ルールの英国版を導入する意向だ。フィンテック企業にとっての英国の魅力が高まるように上場規制は緩め、資本市場を世界によりアピールするための提案も公表する予定。ダークプール(私設取引システム)を巡っては、EUがなお懐疑的な見方をしているのに対して、英国は既に制限を緩和している。

英国は、自分たちは基準の質を下げようとしているのではないし、国際的なレベルで合意したルールはすべて堅持するつもりだと主張している。

◎EU完全離脱でロンドンは金融センター世界一の座を失うか

当面は、そのような見通しにはならない。株式と通貨とデリバティブが取引できる場所として、あるいは資産運用会社の拠点として考えた場合、ロンドンは、競争相手のフランクフルト、ミラノ、パリを引き続き断然しのいでいる。

金融機関側は、英のEU離脱のもと、必要以上にロンドンから資本を移転してしまうと、金融市場が無用に分断化し、分断のコストも高くつくと主張する。

それでも長期的には、EUが同等性評価で厳しい対応を取り、域内の各金融センターが重要な資産クラス取引の面で爆発的に拡大する分岐点(クリティカルマス)に達した場合、ロンドンの金融センターとしての魅力は減退していくことだろう。

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