[ワシントン 6日 ロイター] - 米ジョージア州で5日に実施された連邦議会上院2議席の決選投票で2議席とも民主党候補の勝利が確定すれば、上院の勢力は民主党と共和党がいずれも50議席となる。採決で同数となった場合には、上院議長を兼務するカマラ・ハリス次期副大統領が決裁票を投じる。
決選投票では、黒人牧師の民主党新人候補ラファエル・ワーノック氏が共和党現職のケリー・ロフラー議員を破り、ドキュメンタリー映画プロデューサーの民主党新人候補ジョン・オソフ氏は共和党現職のデービッド・パーデュー議員に勝利宣言した。
両党とも50議席の上院はどのような議会運営になるだろうか。
<両党50議席になるまでの手続き>
上院は現在、共和党が多数派となっている。上院事務局によると、議員の就任には州による当選証明が必要だ。
ジョージア州の決選投票結果は、各郡が1月15日まで、ラッフェンスパーガー州務長官が1月22日までに証明する必要がある。このため議員就任までに数日もしくは数週間を要する可能性がある。それまでは両党が50議席とはならない。
<副大統領の決裁票>
米憲法では副大統領が上院議長を兼務するよう定めている。上院議長は採決で同数となった場合のみ、決裁票を投じることができる。ハリス氏が1月20日に副大統領に就任すれば、決裁票を投じる権限を与えられるため、民主党が実質的に上院の多数派となる。
それまでは、たとえ民主党の新人2人が就任したとしても、ペンス副大統領が1月20日に退任するまで決裁票を投じる権限を有するため、共和党が多数派のままとなる。
<前例はあるか>
上院で両党が同じ議席数を占めたことは過去に3回あり、1881年、1954年、2001年だった。
2001年は1月から6月まで両党とも50議席だったが、6月に共和党のジェームズ・ジェフォーズ議員が無所属に転向したため、その後は民主党が多数派となった。
<両党同議席数の議会運営>
上院民主党のシューマー院内総務は6日、多数党の院内総務になると宣言したが、現在の多数党院内総務である共和党マコネル議員と協議する必要が依然残ると述べた。
実際には副大統領は上院には常駐せず、議長の任務は多数党の議員に委ねられることになる。
両党の院内総務は2001年、日々の議会運営を予測可能にしたいと切望し、権限共有協定を締結した。
当時、新任のチェイニー副大統領が決裁票を投じる権限を持つという事実に基づき、共和党のロット院内総務が多数党の院内総務に認定された。だが権限共有協定により、両党の院内総務は立法や実務に関する日程調整や話し合いにおいて、両党に平等な権限を与えるよう努めることを義務付けられた。
また、通常は委員会の委員数は多数党が有利になるが、協定では両党の人数を半々と定めた。そのほか、審議手続きを定めたいくつかの条項も盛り込んだ。
仮に委員会の採決が同数となり、法案や高官指名などの案件が上院本会議に送れない場合には、多数党もしくは少数党の院内総務が法案を本会議に移す行動を起こせることになった。本会議の採決で賛成多数を得るだけで、それが可能だった。
<民主党はハリス氏の決裁票を当てにできる。共和党と権限共有協定を締結する必要はあるか>
その必要はないが、超党派政策センターのマイケル・ソーニング氏によると、協定を結べば上院を「正常に機能させる」ことに役立つ可能性がある。
同氏は「もし民主党が1月20日から強硬な態度をとりたいなら、こうした権限共有協定を締結する必要はない。民主党は50議席プラス副大統領の決裁票をてこに、自分たちの望み通りに上院を運営しようとすることも可能だ」と述べた。
ただ同氏は、現行規則の下でこうした方法をとれば、上院審議は大いにもめ、遅々として進まない可能性があると指摘。「もし共和党側も強硬な態度をとろうとすれば、すべての案件で小競り合いをする羽目になるだろう」と説明した。
2001年にロット氏との権限共有協定交渉で民主党を主導したダシュル元院内総務は、シューマー氏がマコネル氏と同様の協定について交渉すべきだと提言する。
ダシュル氏は「51票では実行できることは限られている上、副大統領が常駐し、案件ごとに決済票を投じると期待できるわけでもない」と指摘。「結局のところ、少数派政党と協力する道を見いださなければならない。なぜなら事実上、少数派政党は存在せず、両党は同等な立場だからだ」とし、議席数が同じである以上、平等な発言権を確保する必要があると述べた。
ロット氏は、2001年のダシュル氏との交渉が当初、他の共和党議員から良く受け止められていなかったと認めている。同氏は「何人かの最も親しい友人からも『何をやっているのだ。われわれは多数派なのに、やりすぎだろう』と批判された」と語った。
「最終的には、カンザス州選出のパット・ロバーツ議員が立ち上がってこう言った。『みんな何を考えているんだ。50対50だろう。わが党の院内総務は最善を尽くした。もう前に進もう』。それでだれも文句を言わなくなった」とロット氏は語った。
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