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コラム

コラム:「物価から雇用へ」、FRBが金融政策の主軸を大転換

[ロンドン 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、物価重視の金融政策に対する「弔いの鐘」を鳴らした。同氏が27日、カンザスシティー地区連銀の経済シンポジウムにおける講演で新戦略に関する声明を公表し、雇用最大化をより積極的に追求し、物価の上振れを容認する姿勢を示したのだ。つまり、超緩和的な政策運営が一段と長期化することが読み取れる。

8月27日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、物価重視の金融政策に対する「弔いの鐘」を鳴らした。ワシントンのFRB本部で2019年3月撮影(2020年 ロイター/Leah Millis)

FRBの姿勢転換は1年半にわたる金融政策の枠組み見直し作業の結果で、予見可能な将来における大きなリスクは、物価上昇が行き過ぎるのではなく、不十分な状態になることだとの考えに裏打ちされている。重要なのは今回の声明で、頑強な労働市場は必ずしも物価の跳ね上がりにつながらないと記されている点にある。

これからのFRBの政策決定は、雇用が悪化と改善のどちらの方向にあるかではなく、雇用規模が想定可能な最大限のレベルをどの程度下回っているかの判断に左右される。だとすれば失業者が増加している場合の方が、減少時よりFRBの反応は素早くなるだろう。

この非対称性は、黒人などマイノリティーに属する労働者が、経済成長と雇用が上向く局面でも総じてその恩恵に浴するのが最も遅くなるという事実を認識した上でのことだ。野党・民主党の政治家などは、そうした不平等を和らげるためFRBが努力するよう働き掛けを強めている。パウエル氏が打ち出した新戦略は、FRBの行使できる措置の中で、この取り組みをかなり率直に進める方法と言える。

FRBが10年前の金融危機以降の緩和的な政策で、物価上昇率を目標の2%にさえ持続的に乗せることができなかったのは確かで、世界的な景気後退が進行している間は、利上げなどできそうにない。しかし新型コロナウイルスのパンデミックが収束した後も、FRBの新たな戦略は生き続ける。その上、他の主要中央銀行はFRBが先導する道を後から付いてくるだろう。

過去30年間、金融政策担当者は物価目標という形で表現された物価の安定を達成することこそが、経済の繁栄に最も貢献するとみなしてきた。ところがパウエル氏が講演で指摘したように、実際に景気拡大の幕を引いたのは物価高騰ではなく、金融の不安定化だった。

もっともこの事実は、FRBが打ち出した新戦略の弱点にもなっている。FRBの認識では、労働市場の健全さは金融システムの安定にかかっているものの、超低金利と金融緩和の長期化は、金融市場の過熱と崩壊がより起こりやすくなることを意味するからだ。

●背景となるニュース

*米連邦準備理事会(FRB)は27日、最大雇用の目標をより積極的に追求するとともに、物価上昇率が一時的に2%を超えるのを容認すると表明した。現在は過去に比べてインフレリスクが小さくなっているというのがFRBの見方で、新戦略によって雇用の回復と、より健全な水準への物価上昇率の復帰を目指す。

*政策担当者17人全員が賛成して採択された新戦略では、FRBは物価上昇率が長期的に平均2%となるように、また雇用が最大水準を確保するように政策を運営していく。

*パウエル議長は27日の講演で「新たな声明は、特に低・中所得層の多くの人々に対して強力な労働市場がもたらす恩恵を巡るわれわれの評価を反映している。頑強な労働市場は、望ましくない物価上昇率を引き起こすことなく達成できる」と語った。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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