for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:FRB政策、パウエル・ブレイナード両氏大差なし

[オーランド(米フロリダ州) 5日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が間もなく再任されるとの観測が高まっている。しかし、仮に二番手の候補者であるブレイナード理事が議長に就任した場合でも、金融政策は現状とほぼ見分けがつかないだろう。

 11月5日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が間もなく再任されるとの観測が高まっている。写真はパウエル議長(左)とブレイナード理事。シカゴで2019年6月撮影(2021年 ロイター/Ann Saphir)

賭けサイトでは4日夜、パウエル氏再任の確率が80%を超え、ブレイナード氏指名の確率は10%未満に下がった。パウエル氏がホワイトハウスを訪問したとの報道が飛び交った後のことだ。

しかし、バイデン政権がパウエル氏の再任を見送った場合、最も有力な後任候補がブレイナード氏であることに変わりない。従って、あらゆる可能性に備える金融市場としては、引き続きブレイナード議長が誕生した場合の影響も考えておく必要がある。

ブレイナード氏は米連邦公開市場委員会(FOMC)で最もハト派のメンバーと見られているため、議長に就任すれば市場が現在織り込んでいるよりも金融政策が緩和的になると市場は受け止めそうだ。

つまり、今後数年間の引き締め予想がある程度巻き戻され、米国債利回りのカーブはスティープ化、長期的な予想物価上昇率は上昇、ドルの予想レートは低下、そして株式市場とクレジット市場で「リスクオン」が強まる可能性がある。

だが、パウエル議長も利上げを我慢し続けると約束しているし、現在のインフレは一過性だと主張し、FRBの責務のうち完全雇用の達成を決意している。そして、パウエル氏の下でFOMCは、既にこうしたシナリオの土台となる政策を行っている。

ブレイナード氏が議長に就任した場合、現状に比べてどれほどハト派色が強まるだろうか。

BMOグローバル・アセット・マネジメントの米債券担当共同責任者、スコット・キンバル氏は「ブレイナード氏になっても立脚点は変わらず、『バトンが引き継がれる』だけだろう」と言う。

<雇用問題>

市場や有識者がFRBの「信認」を引き合いに出す際には、必ずと言ってよいほど物価目標の達成が念頭にあり、FRBの責務の残り半分である完全雇用に言及することはまれだ。

パウエル氏はここ1年間というもの、米経済が完全雇用に近づくまでは金利を上げないと強調し続けてきた。ブレイナード氏はこの姿勢を完全に支持している。

3日のFOMC後の記者会見で、パウエル氏は「雇用」あるいは「失業」という言葉を60回使った。コロナ禍が始まって以降では、3月の67回に次いで2番目に多い。

この回数は、今年1月の記者会見の24回から着実に増えている。もちろん「インフレ」への言及も増えたが、6月の94回、7月の86回に比べれば、3日は64回と大幅に少ない。

ブレイナード氏は教授や政府高官として、さまざまな立場から労働問題に携わってきた。コロナ禍で大量の雇用が失われた今、景気回復をしっかりと支えてから利上げを行うというパウエル氏の決意に共感するのは当然だ。

現在、一部のインフレ指標は30年ぶりの高水準を付け、利上げ開始がますます視野に入ってきた。しかし、ブレイナード氏は、数十年間にわたりインフレ率を押し下げてきた世界的要因はおおむね変わっていない、との考えに立っている。

同氏とパウエル氏はまた、永続的なインフレを招くことなく景気が拡大し、完全雇用を達成することができると信じている。両氏とも、コロナ禍後の労働市場の構造変化について情報が集まれば、「完全雇用」についてのゴールポストを動かすことにやぶさかではないふしがある。

<金融規制強化に積極的>

パウエル氏とブレイナード氏はむしろ、金融規制に臨む姿勢の方が違いが明確かもしれない。民主党員のブレイナード氏はこれまで、米金融業界の増長を抑制すべきだと最も声高に訴えてきたFOMCメンバーだ。共和党員のパウエル氏よりも規制強化派なのは間違いない。

2018年以来、ブレイナード氏は規制に関するFRBの票決で23回反対票を投じ、4回は棄権した。反対の回数は、理事の中で最多だ。一部の反対票に添えられた声明を読むと、同氏が規制強化を望んでいることが分かる。

資本比率やストレステスト(健全性審査)などの面で規制を強化すれば、資金調達コストが上がって市場の流動性は低下する可能性がある。

だが、こうした実質的な金融環境の引き締めも、金融政策のハト派姿勢が維持されれば簡単に相殺されるかもしれない。

コンサルタント会社、シャトル・エコノミクスの創業者、フィル・サトル氏は「ブレイナードFRBになっても、現在のFRBとおおむね同じだろう」と予想。ただし、金融安定が大きな問題になった場合には「ブレイナード氏の方が積極的なマクロプルーデンス政策を行うだろう」と述べた。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up