for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

FRBの「ステルスYCC」、市場波乱のリスクも

[ロンドン 7日 ロイター] - 市場は米連邦準備理事会(FRB)に逆らわない傾向がある。通常はFRBが勝つからだ。しかしFRBの意図にわずかな曖昧さが生じるだけでも、市場の大混乱につながる恐れはある。

10月7日、市場は米連邦準備理事会(FRB)に逆らわない傾向がある。ワシントンのFRB本部で5月撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

FRBが長期金利に上限を設ける政策を明示的に計画したことはないし、上昇抑制のために密かに行動したことすらない。それでも投資家は過去数カ月、まるでFRBがそうしている、あるいは今後そうするかのように振る舞ってきた。

ただ、それも先週までの話だったようだ。

今週1100億ドルの米国債が新規発行されるのを前に、国債利回りは長い眠りから覚めて跳ね上がった。30年物国債利回りは6月以来の最高水準を付け、5年物と30年物の金利差は2016年11月以来の幅に拡大した。奇しくも前回の米大統領選が行われた時だ。

巨額の新規国債発行を別にしても、トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染後、回復していることは、翌月の大統領選を前に追加景気対策が決まる確率を高め、トランプ氏が大統領選で勝つ確率は低下する(訂正)と広く受け止められている。

このため市場は、政府支出の波がすぐに押し寄せる可能性を素早く織り込んだ。民主党がホワイトハウスと議会を制すれば最初の半年間に追加の景気対策が実施される可能性も見据え、ポストコロナのリフレを想定して長期金利を押し上げた。

一部の投資家は実際、「だれが大統領になろうと」(ユーリゾン・SLJ・キャピタルのスティーブン・ジェン氏)、今後9カ月間にFRBを後ろ盾とした財政刺激策が追加実施されると考えている。

そうなると、利回りが跳ね上がるのは至極自然なことに思える。ただしFRBの国債購入を巡る市場の共通認識を勘案しなければだが。

FRBはこの夏、公式のイールドカーブ・コントロール(YCC)を通じて国債利回りに上限を設けることを拒んだ。しかし投資家はおおむね、FRBが今後数年間、国債利回りの大幅な上昇を抑えるだろうと想定している。

少なくとも期間10年の国債までは。

そうした想定を背景に、大半の国債利回りは3月からほぼ横ばいで推移し、国債市場のインプライドボラティリティはここ数カ月間、徐々に低下して先週には過去最低を付けた。

資産運用会社ロベコは最新リポートで、各国中央銀行は「財政実験の下支えという新たな役割に集中し、名目金利を実質的な下限近くに抑えて財政赤字をファイナンスする」との見通しを示した。

ロベコは今後5年間、10年物米国債利回りの上限が1.5%になると予想している。

<残る不透明感>

しかし目下のところ、投資家、トレーダー、FRBにとっての問題は、中銀が目標を明示しないまま、そうしたことを実現していけるかどうかだ。言い換えれば、緩い利回り管理体制の中にどれほどの不透明感が残るのか、市場はそれにどう合わせていくのか、という問題だ。

FRBが「平均インフレ目標」を掲げ、「最大雇用」を目指す大きな戦略変更を行ったことは、インフレ率が一定期間、目標値を上回るのを看過し、より長く低金利を続ける意思の明示だった。

ただFRBは具体的な戦術を示さず、政策金利を動かさずにイールドカーブを管理する方法にもほとんど言及していない。

10年物利回りの上限が1.5%というと非常に低い印象があるが、現水準に比べれば2倍だ。しかも金利変動への価格感応度が高い30年物国債など、超長期物はどうなるだろう。リフレ政策が発動すれば、超長期利回りは急上昇が許されるのだろうか。

クロスボーダー・キャピタルは今週、FRBは事実上の「ステルス」YCCに成功したと指摘した。国債購入をちらつかせるだけで利回りの上昇を抑えたということだ。利回りの上限を念頭に特定年限の国債を買った証拠は見られないという。

しかしFRBは、期間5年以上の国債市場が金利予想自体よりも需給に大きく左右されることを承知しているとクロスボーダーは指摘する。しかも第2次世界大戦中にYCCを採用した時と違い、現在は米国債の約40%を外国勢が保有している。

クロスボーダーはインプライドボラティリティが過去最低まで下がったことについて、実際のボラティリティの急上昇を覆い隠しているとみる。両者の差は過去30年間で最大に開いているという。

その原因は「ショートガンマ」戦略にありそうだとクロスボーダーは指摘する。米国債オプションのプットとコールをともに売ることで、インプライドボラティリティを何年間も抑制するFRBの政策から恩恵を受ける戦略だ。

ここ数週間、長期米国債先物の投機的ショートポジションが記録的水準に積み上がっているが、それもこの戦略によって説明がつくかもしれない。「ショートボラティリティ」戦略のヘッジとして、こうしたポジションを組んだ可能性があるのだ。

いずれにせよ、こうした戦略には大きなレバレッジがかかっているため、2018年初頭の株式市場で見られたとおり、荒々しく巻き戻される可能性がある。

あまりに実務的な話に聞こえるかもしれないが、危険をはらむ問題だ。FRBが曖昧なイールドカーブ管理を続けるなら、市場を席巻する思い込みとポジションが、いずれ大きなリスクになるかもしれない。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up