October 14, 2014 / 6:18 AM / 6 years ago

焦点:米インフレ連動債の地合い悪化、予想物価上昇率が急低下

[ニューヨーク 12日 ロイター] - 米インフレ連動債(TIPS)市場の地合いが悪化し、予想物価上昇率がこのところ急速に下振れしている。賃金や物価全般が全然上がらないことに既に懸念を抱いている米連邦準備理事会(FRB)当局者にとっては、さらに警戒すべき材料が出てきた格好だ。

 10月12日、米インフレ連動債市場の地合いが悪化し、予想物価上昇率がこのところ急速に下振れしている。アーカンソー州ロジャーズのスーパーで昨年6月撮影(2014年 ロイター/RICK WILKING)

TIPSは、欧州を中心とする世界経済の減速やドルの高騰、原油価格急落を背景に夏の終わりから売り込まれて、今年1─8月における相場の戻り歩調が崩れた。

そのTIPSの利回りと米国債利回りの差で、予想物価上昇率の1つであるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、8月初め以降で急低下している。直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)や予想外に鈍化した消費者物価指数(CPI)を受けた動きで、BEIの下振れ度合いは金融危機後では最も強い。

世界最大の資産運用会社ブラックロック(BLK.N)(運用額4兆3000億ドル)でTIPSの共同責任者を務めるマーチン・ヘガーティ氏は「TIPSの地合い悪化は、CPIがもたらしたのは間違いない。ドル高とエネルギー価格の軟化も明らかに大きな影響を与えた」と述べた。

例えば先週は、期間10年のBEIが2011年終盤以来の低水準になった。9月末にはFRBが目標とする物価上昇率の2%を割り込み、10日は1.97%だった。

バンガードで261億ドルのTIPSファンド(VIPSX.O)を監督するジェマ・ライト・カスパリウス氏は「市場は世界経済の成長見通しを修正しつつある」と話す。同ファンドは米国のTIPSファンドでは最大規模を誇る。

国際通貨基金(IMF)は先週、世界経済の予想成長率を3.4%から3.3%に引き下げ、欧州は景気後退とデフレに陥る蓋然性が高いとの見方を示した。

<ドル高と原油安>

9月のFOMC以降、金利先物市場は来年予想されるFRBの利上げ開始時期を後ずれさせている。このFOMCで当局は、市場の予想に反して政策運営に関する重要な文言の変更を行わず、その理由として賃金がなかなか上昇しないことや、経済全体にスラック(需給の緩み)があることを挙げた。

FRBの利上げ開始時期について夏の終盤は早ければ来年6月の可能性が大きいとみられていたが、現在では来年9月前にあるかどうかは五分五分となっている。

フィデリティ・インベストメンツ(運用額2兆ドル)のポートフォリオマネジャー、ビル・アービング氏は「賃金が加速する兆しは見当たらない。この状況が変わるまで、性急な利上げはないだろう」と述べた。

一方、ニューヨーク連銀のダドリー総裁など何人かの政策担当者は、ドル高への警戒感を表明している。ドルは第3・四半期に7.7%と6年ぶりの上昇率を記録。ドル高は米国の輸入物価を下げる半面で、輸出を妨げ、米経済にとって歓迎されない逆風をもたらす。

ただ一部のアナリストは、ドル高をめぐる心配は行き過ぎかもしれないと指摘する。なぜなら米国は中国や日本、ドイツほど経済成長における輸出依存度は高くないからだ。

ブラックロックのヘガーティ氏は「TIPSはドル高に対して完全な過剰反応をしている」と語った。

それでも米国の物価見通しにとっては、原油価格急落というさらなる下押し要因が浮上しつつある。先週終盤には原油の国際価格は2010年以来の安値をつけ、6月以降の下落率は25%に達した。

<値動き不振、資金は流出>

これらの要素が重なり、今年見られたTIPSの復調は大きくとん挫した。TIPSの昨年のパフォーマンスは過去最悪で、バークレイズのTIPS指数は8.6%低下していた。

同指数は今年1─8月で6.3%上がったが、9月初め以降では1.4%低下した。

またリッパーによると、TIPSファンドからは6週連続で資金が流出しており、合計流出額は11億ドル余りとなっている。これによりTIPSファンドの総資産額は431億ドルと、4月以来の低水準になった。

過去2週間では、ビル・グロス氏がパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)からジャナス・キャピタル・グループに移籍するという想定外の事態を受け、資金流出が増幅された面もあった。

PIMCOの旗艦ファンドであるトータル・リターン・ファンドは多額のTIPSを保有しているが、グロス氏退社に伴う解約請求への対応でこれらの保有を減らして資金をねん出したとみられている。

モーニングスターによると、PIMCOのトータル・リターン・ファンドからの9月の資金流出額は179億ドル。BNPパリバ(ニューヨーク)の金利ストラテジスト、アーロン・コーリ氏は、TIPS市場にとって「こうした動きがさらなる痛手となった」と分析している。

(Richard Leong記者)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below