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アングル:米景気回復を脅かし始めたデルタ株、FRB正念場

[ワシントン 23日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)はこれまで、新型コロナウイルスのデルタ変異株が拡大しても景気への影響は限られるとして、昨年導入した臨時の緩和政策を縮小する計画を示していた。ところが米カンザスシティー地区連銀が20日、ワイオミング州ジャクソンホールで27日に開く経済シンポジウムを対面方式からオンライン方式に切り替えると急遽発表し、デルタ株の脅威が鮮明となっている。

 8月23日、米連邦準備理事会(FRB)はこれまで、新型コロナウイルスのデルタ変異株が拡大しても景気への影響は限られるとして、昨年導入した臨時の緩和政策を縮小する計画を示していた。ニューヨークで撮影(2021年 ロイター/Andrew Kelly)

感染再拡大の影響がFRB幹部らの予想以上に大きいことを示す兆しは、この一件以外にも積み上がっている。

折しもFRBは、大規模緩和措置の縮小開始時期を検討し始めるという重要な局面にある。7月27―28日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、大半の幹部は年内に資産購入プログラムの縮小に着手することに乗り気だった。

パウエルFRB議長はこれまで、デルタ株の影響は大きくないとの見方を示してきた。17日のウェブキャストでは、人々と企業が新型コロナに適応するようになったと述べた。

第2・四半期の米国内総生産(GDP)は速報値でコロナ禍前の規模を回復しており、上方改定される可能性が高い。

しかし今、にわかに数多くの経済指標が黄信号を灯し始め、これまでの自信が崩れる恐れが出てきている。

<高頻度データが悪化>

オックスフォード・エコノミクスが観察している各州の景気回復指標は、最新週にほぼすべて低下した。ルイジアナ、フロリダ、ミシシッピを筆頭に、特に南部州の落ち込みぶりが激しい。

オックスフォードの米エコノミストチームは「消費者が警戒心を強めた結果、需要と移動が抑えられ、数週間ぶりの低水準になった。雇用は冷え込み、生産は抑制され、デルタ株の感染急拡大により健康に関する指標も落ち込んだ」と報告している。

米国の新型コロナ死者数は先週、5カ月ぶりの高水準となった。新規感染者数は20日時点で1日平均13万9000人前後で推移している。

勤務時間管理会社ホームベースのデータによると、零細企業の雇用はじりじりと減少。バンク・オブ・アメリカのクレジットカードおよびデビットカードのデータによると、過去7日間で娯楽支出は減少した。レストラン予約サイト、オープン・テーブルを通じた予約件数もここ数日減っている。

ミシガン大学消費者信頼感指数も8月初めに急低下した。

元FRB金融政策局長で、現在はBNYメロン・アセット・マネジメントの首席エコノミストを務めるビンセント・ラインハート氏は「事業再開は楽々と進んだが、ウイルスがわれわれに追い付いてきたのが現実だ」とし、楽観的になり過ぎていたエコノミストが現実に引き戻されていると説明した。

ゴールドマン・サックスは18日、デルタ株の影響長期化を理由に第3・四半期の成長率予想を9%から5.5%に下方修正した。もっとも第4・四半期と来年の大部分については予想を上方修正している。

一方、事業再開と繰越需要の発動により経済活動が急拡大しているため、足もとの陰りを重視し過ぎるべきではない、との意見もある。ジェフリーズはリアルタイムデータを分析した結果、「今のところ実体経済への影響は比較的小さく、地域も限られている」との見方を示した。

しかしアップルが19日に従業員の出勤再開を早くとも来年1月に延期するなど、大企業の間でも危機感は広がっているようだ。

10月にも資産買い入れの縮小(テーパリング)に着手すべきだとの考えを示していたダラス地区連銀のカプラン総裁は20日、デルタ株の影響が急速に広がっていると認めた。景気の大幅な減速を招くようなら、金融政策についての見解を「少し」調整するかもしれないと述べた。

<サプライチェーンとインフレ>

FRB幹部は、インフレ率の急上昇を招いたサプライチェーンの目詰まりに関してもいくつかの分野を注視している。

パウエル議長を含む多くの幹部は、現在の高いインフレ率は一過性の出来事に終わるとの見方を維持している。7月の消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は13年ぶりの高水準だったが、前月比ではやや減速した。

しかし中国が新型コロナの感染再発を受けて厳格な防止策を講じた結果、先週は同国第2位の貨物港が一時閉鎖され、迂回した貨物船で近隣港でも渋滞が発生。大手国際海運グループは顧客に対し、世界のサプライチェーンがさらにひっ迫しているため運送の遅れやルート変更の恐れがあると通告した。これにより、米国では幅広い地域や商品で物価圧力が高止まりする可能性がある。

世界的な半導体不足の長期化により、新車と中古車の価格は押し上げられた。自動車や半導体の工場があるアジア一帯でデルタ株がまん延しているため、供給不足が和らぐ兆しは見えない。

グラント・ソーントンの首席エコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は、米国で人手不足を含む供給問題が長引くようだと、FRBがインフレを抑えるために利上げを急がざるを得なくなり、失態を演じる可能性が高まるとみる。

スウォンク氏は「多くの人々はかつてパンデミックが短距離走であることを期待したが、マラソンに変わり、ゴールラインは蜃気楼になってしまった」と述べ、「金融政策が失敗を犯し、景気回復サイクルが息切れに終わるリスクが高まっている」と警鐘を鳴らした。

(Lindsay Dunsmuir記者)

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