June 9, 2019 / 12:11 AM / 17 days ago

コラム:米FRBの戦略見直しに有効な「ラムズフェルド理論」

米連邦準備理事会(FRB)は、金融政策の戦略とその情報発信の在り方について見直しを進めている。

 6月5日、米連邦準備理事会(FRB)は、金融政策の戦略とその情報発信の在り方について見直しを進めている。そこでラムズフェルド元国防長官がかつてイラク戦争に関して語った「既知の既知(自分が知っていると分かっている)」「既知の未知(知らないと分かっている)」「未知の未知(知らないことを分かってさえいない)」という理論を考えてみたほうが良いかもしれない。写真はワシントンのFRB本部。3月19日撮影(2019年 ロイター/Leah Millis)

そこでラムズフェルド元国防長官がかつてイラク戦争に関して語った「既知の既知(自分が知っていると分かっている)」、「既知の未知(知らないと分かっている)」、「未知の未知(知らないことを分かってさえいない)」という理論を考えてみたほうが良いかもしれない。

こうした分類は、中央銀行当局者にとってはそれほど突拍子のない考え方ではないだろう。

FRBは非常に多くの情報を提供し、当局者は頻繁に公式発言をする。しかしパウエル議長は4日、シカゴ地区連銀で開催された会合の冒頭で、「透明性を全て足し合わせれば効果的な対話につながるかどうか」疑問を投げ掛けた。

1つの事例として、連邦公開市場委員会(FOMC)の各メンバーの政策金利予想分布(ドットチャート)が挙げられる。最新公表分の3月時点で、今年ないし来年に利下げを予想したメンバーはゼロだった。しかしCMEフェドウオッチによると、金融市場は年内に少なくとも1回、あるいはそれ以上の回数の、25ベーシスポイント(bp)の利下げがほぼ確実にあるとみている。

パウエル氏自身も、この会合における発言でトレーダーの金利観に影響を及ぼした。同氏は、貿易戦争が起きる可能性などに付随するリスクには適切に対応すると述べ、1月に同氏が打ち出した「忍耐強い」政策運営路線とはいささか矛盾する面をのぞかせた。これは市場がFRB当局者の発言に対していかに敏感かだけでなく、ラムズフェルド氏の分類が持つ潜在的な価値を浮かび上がらせる。

どんな予想であっても最も信頼できるのは、さまざまなトレンドが明白な局面だ。金融危機後に始まった長きにわたる米国の景気回復の初期においては、失業率は高過ぎるし、物価上昇率は低過ぎるとだれもが承知していた。だからFRBは安心して成長を支えるための緩和的な政策を採用し、それを維持すると約束できた。これが「既知の既知」だ。

その後米経済が上向くとともに、FRBは徐々に政策金利を引き上げ、中立的な水準を目指す方向に移行した。これも「既知の既知」の時期に当たる。さらに最近になると、トランプ大統領の政策による貿易への脅威を含めて経済見通しは上下のリスクがより均衡する形になっている。つまり「既知の未知」の側面が強まり、ドットチャートなどは予測不能なこれからの情報に頼り過ぎているので特に使い物にならない。

そして世の中には、世界金融危機をかき立てたサブプライムローン崩壊といったサプライズや、戦争などのテールリスクが存在する。これらは意味のある予想や、データへの想定可能な反応でさえも、一切消し去ってしまう。こうした事象こそが、ラムズフェルド氏が指摘した「未知の未知」に相当する。

以上の3分類は少なくとも、FRBが分かっていることと分かっていないことをはっきりさせるのを促してくれる。それだけでも進歩と言えるのではないか。

●背景となるニュース

・FRBは、金融政策の戦略・手段・対話方式の見直し作業の一環として、4─5日にシカゴ地区連銀で研究会合を開いた。

・パウエル議長は4日、世界的な貿易戦争やその他の事態がもたらすリスクにFRBは「適切に」対応すると発言した。

・3月に公表された直近のドットチャートでは、今年や来年に利下げを予想したFOMCメンバーはゼロ、数人は利上げを見込んでいた。

・CMEフェドウオッチによると、市場は年内に最低1回の25bpの利下げが実施される確率を99%とみている。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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