[ロンドン 8日 ロイター] - 金融市場はボラティリティーが記録的水準に低下しており、夏の終わりに再び大きな混乱に見舞われる恐れがある。
2月のボラティリティー急上昇では米国など世界の株式市場が大幅な調整に見舞われたが、主要な債券・為替市場はおおむね安定を保った。しかし足元では債券やドルで投資家のポジションが株式よりも極端な偏りを示しており、今回はそううまくは切り抜けられないかもしれない。
ヘッジファンドなど投機筋によるボラティリティー・インデックス(VIX)先物は、建玉全体に占める売り持ちの比率が2月のボラティリティー急上昇直前の水準を上回っている。
10年物米国債の売り持ち比率は2010年以来の高水準で過去最大に近く、投機筋のドルの買い持ち比率は昨年5月以来の高水準だ。ドルはポジションの偏りがそれほど極端に見えないかもしれないが、今年の夏は変動幅が非常に狭く、1日当たりの標準偏差は過去最低に接近している。
世界的に通商紛争が激しくなり、トルコなど一部の国は厳しい状況に直面する一方、先進国の金融市場が全体として落ち着いているのは驚くに当たらないはずだ。財政・金融政策の面で大きなショックは起こっておらず、欧米や日本の中央銀行に金融政策の軌道修正を迫るような経済指標の波乱もなく、企業の第2・四半期決算も概ね市場予想を上回ったからだ。
端的に言って、投資家はこれまで、世界経済に対する無難な見方を修正する理由がなかった。企業業績は順調に伸びて経済成長は堅調、インフレは低く、米国の利上げは既定路線だ。
S&P総合500種のインプライドボラティリティー(IP)を示すVIX(恐怖指数)は今週、10.5%に下がり、昨年11月に付けた過去最低が視野に入った。米国債のIPを示す指数も昨年11月の史上最低からそれほど遠くない水準だ。
取引がこれほど一方向に偏っているということは、相場が反転するやいなや投資家が大きな損失を被る恐れあがあるということだ。
ソシエテ・ジェネラルのシニアストラテジスト、ケネル・ブロー氏は「過去最大級の米国債の売り持ち、VIXの集中的な売り持ち、株式の買い持ちという組み合わせでは、事が起きたときに大きな衝撃に見舞われる。株式と債券利回りの急激でかつ大規模な低下が起きそうだ」と述べた。
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