September 11, 2018 / 5:47 AM / 8 days ago

コラム:リーマン破綻10年、なお消えない「超低金利の弊害」

[ロンドン 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 2002年11月、当時のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)は、経済学者ミルトン・フリードマンの90歳の誕生日会に出席した。フリードマンは著書で、1929年の世界恐慌の原因を、FRBの政策の失敗だと指摘していた。

 9月10日、2002年11月、当時のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)は、経済学者ミルトン・フリードマンの90歳の誕生日会に出席した。ニューヨークのリーマン・ブラザーズ本社ビルで2008年9月15日撮影(2018年 ロイター/Joshua Lott)

フリードマンの学説を熱烈に信奉していたバーナンキ氏は国民のために謝罪し、FRBは二度と同じ過ちを繰り返さないと誓ったのだ。

それから6年もたたない08年9月15日、バーナンキ氏はFRB議長としてリーマン・ブラザーズ破綻という運命の日を迎え、新たな大恐慌を招き寄せることになった。だが今から見れば、同氏は自分が表明した約束を果たす準備ができていたことになる。

大恐慌への対応として打ち出されたのは、米国だけでなく世界中でも過去にない大胆な金融政策の実験だった。金利は米国で長年ゼロ近くに抑え込まれ、他の地域では広くマイナス圏に低下。主要中央銀行は自らが刷った紙幣で数兆ドル規模の債券(一部では社債や株式も)を買い入れた。FRBの資産は4倍になって4兆ドルを超えた。

そのほかバーナンキ氏は、市場の将来の金融政策運営の道筋を示す「フォワードガイダンス」などの新手法も導入。さらにFRBは危機の最中から後にかけて、外国中央銀行に向けに大規模なローンを実行し、多額の債務を抱えた国内の銀行を救済できるようにした。

あれから10年が経過し、FRBのいくつかの成果を振り返ることが可能になっている。

市場の深刻なパニックはすぐに和らいだ。幸いなことに大恐慌の期間も短かったし、FRBが世界の銀行の「最後の貸し手」として振る舞ったことから、サブプライム問題の混乱が世界中に波及するのを防いだ。確かに数年後にユーロ圏の債務危機が勃発したものの、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が「できることは何でもやる」と表明してすぐに鎮静化させた。

バーナンキ氏の後を継いだジャネット・イエレン氏が今年序盤に退任した際には、FRBは物価安定、最大雇用という2つの使命を成し遂げた。米経済は現在、過去最長の拡大局面が続いている。

ただし水面下では、事態が悪い方向に進んでいるようにも見える。米国では雇用増加基調が維持されているとはいえ、生産性の伸びはなくなってしまった。企業は投資に消極的で、貯蓄水準は絶対的に低い。労働者の所得は物価上昇率になかなか追いつけない。資産価格が高いのは素晴らしいことだが、金融証券の所有は富裕層に大きく偏っている。政治的には、左派と右派どちらもが、危機後の政策は「持たざる者」が犠牲になる形で「持てる者」に有利に働いたという意見を幅広く共有する。新たな金融規制が次々に導入されたにもかかわらず、危機前に見られた不健全な金融慣行の多くがまた顔を出しているとの懸念もある。

生産性の伸び、格差、金融面のリスクテーク、資産バブルはいずれも気が遠くなるほどの複雑な話だ。それでも近年、世の中は至極分かりやすい影響力に支配されているように見受けられる。

FRBや他の中銀による低金利政策がほんのわずかの投機的なバブルを膨らませ、格差拡大に力を貸している。緩和マネーはむやみに利回りを追求する動きを生み、それが米国内外で金融の安定を脅かす。低金利は創造的破壊の力を損ない、経済成長の足かせとなる「ゾンビ企業」を存続させ続けている。

リーマン破綻後の出来事を理解するためには、金利が持つさまざまな機能を把握することが重要だ。

金利は割引率(将来の収入価値を現在に換算したもの、いわゆる資本収益率)を決める。資本主義社会では、金利は資源配分にも影響し、「持てる者」と「持たざる者」の間で不労所得などを再配分する。またレバレッジの価格として融資の量や質を左右し、世界の金融システムを行き交う資金フローを規定する。

金利は時折指摘されるようなお金の値段ではなく、時間の価格だ。全ての金融および経済活動は時間を要する。これが金利を経済システムにおいて唯一にして最も重大な価格にしているのだ。

その価格を取り違えれば、好ましからざることが必ず起きる。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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