[11日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXは11日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請したと発表した。サム・バンクマンフリード最高経営責任者(CEO)は辞任した。暗号資産の申し子ともてはやされたバンクマンフリード氏の転落劇は市場を震撼(しんかん)させ、業界の規制強化を求める声が上がっている。
FTXはツイッターで発表した声明で、バンクマンフリード氏が個人保有する投資会社アラメダ・リサーチのほか、約130社が破産法適用の対象になると表明。関係筋によると、アラメダ・リサーチはFTXに対し約100億ドルの負債を抱えている。
ソフトバンクやセコイアを含む一部の投資家は、すでにFTXへの投資を引き揚げていた。
FTXはバンクマンフリード氏の後任に指名されたジョン・J ・レイ氏の下で、秩序立った移行を進める。バンクマンフリード氏は一連のツイッターへの投稿で「こうした事態に至ったことを謝罪する」とし、破産法適用申請は「必ずしも企業の終わりを意味しない」とし、新CEOに期待を示した。
ロイターが入手したレイ氏のFTX社員宛てのメモによると、レイ氏は「状況を把握し、利害関係者の利益のための計画を策定するために、破産法適用申請は必要なステップ」とし、「破産法適用申請は前進する道のりの始まりになる」とした。
バンクマンフリード氏は30歳。米誌フォーブスの推計によると、同氏の純資産は1年前は最大265億ドル、2カ月前は約170億ドルだった。
レイ氏は63歳。米エネルギー大手エンロンが経営破綻した際に清算の指揮を執った。また、カナダの通信機器大手ノーテル・ネットワークスの経営破綻時も再建を主導した。
<暗号資産急落>
FTXを巡っては、世界最大の暗号資産(仮想通貨)取引所・バイナンスが9日、FTXトレーディングの米国以外の事業部門「FTX.com」を買収する方針を撤回。複数の関係者は10日、FTXは流動性のひっ迫を受け、投資家や同業者から約94億ドルの資金確保を急いでいると明らかにしていた。
FTXの発表後、暗号資産(仮想通貨)のビットコインは一時5.7%安の1万6524ドルとなった。
FTXのトークンであるFTT は一時34%急落し2.43ドルとなった。週間では89%下落している。
FTXは米証券取引委員会(SEC)や司法省、商品先物取引委員会の調査を受けている。
<影響波及を警戒>
暗号資産会社NEXOの共同創業者、アントニ・トレンチェフ氏は、バイナンスが買収を撤回した時点でこうなることは目に見えていたと指摘。「今はどの事業者がFTXとアラメダにエクスポージャーがあったかを見極める第二段階に入った」と指摘。
金融詐欺を捜査する政府機関や法律事務所にコンサルティングを提供するインテグラFFCの創業者兼CEO、ジョン・グリフィン氏は、「他の取引所にどの程度広く影響が波及し、どこで潜在的損失が発生するかが次の問題だ」と述べた。
FTXの破綻で業界に激震が走り、暗号資産やブロックチェーン関連企業の株価が急落した。余波は金融市場にとどまらず、自動車レースの最高峰フォーミュラ・ワン(F1)にも波及。メルセデスF1チームはこの日、ブラジルで行われるシーズン最終戦を前にFTXとの提携契約を打ち切ったと発表した。
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