September 25, 2015 / 10:13 AM / 2 years ago

焦点:「新3本の矢」から消えた金融政策、漂う不透明感

[東京 25日 ロイター] - アベノミクスの金看板だった金融政策が、24日公表の「第2ステージ」で示された新3本の矢から消えた。消費の活性化や低所得者対策の進展を目指す政府・与党内からは、日銀が掲げる物価2%実現を急ぐべきではないとの声も漏れ、金融政策は優先順位のトップから「降板」したもようだ。

今後は、何がアベノミクスのエンジンになるのか、不透明感が漂っている。

安倍首相は24日に自民党本部で会見し「本日からアベノミクスは第2ステージに入る」と宣言し、新たな「3本の矢」の政策で全ての人が活躍できる「1億総活躍社会」を目指すと表明した。

経済最優先の姿勢を鮮明にし、具体的には名目国内総生産(GDP)を600兆円に増やすことを掲げた。

新たな3本の矢は、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障━━。これまでの大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略から大きく転換し、軸足を構造改革に移す姿勢を鮮明にした。

中でも市場の一部で思惑が広がっているのが、「第2ステージ」における金融政策の役割。新3本の矢から金融政策が抜け落ち、市場では「安倍政権の経済政策における優先順位が変化したことは間違いない」(国内金融機関)との見方が広がっており、今後の金融政策運営への影響に関心が高まっている。

麻生太郎財務相は25日の会見で「新たな3本の矢の1本目(強い経済)に、今までの3つが集約されている」と説明。旧3本の矢は引き継がれていると強調した。

甘利明経済再生相も、物価2%の目標は変わっていないとし、旧3本の矢は安倍内閣の至上命題であるデフレ脱却を目的としたものであり、新政策発表以降も位置づけは変わらないと語った。

主要閣僚が25日の会見で、そろってデフレ脱却に向けた金融政策の重要性を強調したが、現在の日銀による量的・質的金融緩和(QQE)をさらに強化することについては、政府・与党内から慎重な見方も聞こえてくる。

安倍首相は24日の会見の冒頭、日本経済について「もはやデフレではない、という状態まで来た。デフレ脱却は、もう目の前だ」と語った。

政府関係者の1人は、この発言の真意について「旧3本の矢によって、デフレ脱却は事実上ほぼ実現したという認識だ」と述べ、金融政策などは一定の役割をすでに果たしたとの見解を示した。

目標に掲げるGDP600兆円の実現のカギを握るのは、約6割を占める個人消費。11日の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)で民間議員は、GDPに占める個人消費の割合を現状の6割程度から、米国並みの7割程度に引き上げることを提言した。

政府・与党内では、消費税率引き上げに伴う反動減の影響一巡後も、個人消費が低迷を続けている背景として、食料品や日用品などの物価上昇を指摘する声も多い。

内閣府は諮問会議に提出した資料の中で「身近な食料品等の物価上昇が相次ぐ中、低所得者層等の消費活動に影響を与える可能性」を明記した。

    個人消費の活性化に向け、政府・与党は低所得者対策などに力を入れていく方針。ある政府筋は、さらなる円安・物価高を招きやすい追加金融緩和は「われわれの政策の方向性と整合的ではない。日銀は物価2%達成を急ぐべきではない」と言い切る。

    また、政府部内には、日銀が追加緩和に踏み切って円安が進めば、原油安で利益を享受できる消費者にはマイナスとなり、現在の経済情勢における追加緩和は不要との見解を示す声も少なくない。

    他方、これまでのアベノミクスの成果を積極的に評価し、今後も金融政策を政策の中心に据えることを志向している与党議員の一部やシンクタンク関係者の中には、金融政策の優先度を下げることで、デフレへの逆戻りを懸念する声も出ている。

    また、市場の一部では「金融緩和に代わるエンジンが見当たらない。本当に成長できるのか」(国内金融機関の関係者)との声も出ている。

    中国経済の減速懸念などを背景に世界経済の不透明感が強まる中、原油安を背景に足元で日銀が目安とする生鮮食品を除いた消費者物価(コアCPI)の前年比上昇率は、マイナスに落ち込んだ。

    10月末に日銀が公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を控えて、市場では追加緩和観測も高まりつつある。

    安倍首相がアベノミクス第2ステージ入りを宣言した翌日の25日昼、黒田総裁が官邸に呼ばれ、予定の1時間程度を超過して安倍・黒田会談が行われた。その内容は明らかにされていないが、市場では金融緩和観測が高まって、日経平均.N225は前日比308円68銭高の1万7880円51銭に上昇して引けた。

    アベノミクスにおける金融政策の位置づけの変化が、今後の金融政策運営にどのような影響を与えるのか、市場は注視している。

    伊藤純夫 竹本能文 梅川崇 編集:田巻一彦

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