September 10, 2014 / 12:41 AM / 3 years ago

焦点:日本の「敵基地攻撃能力」保有、米国と水面下のせめぎ合い

[東京 10日 ロイター] - 日本が検討している敵基地攻撃能力の保有をめぐり、米国とのせめぎ合いが水面下で続いている。自衛隊が「盾」、米軍が「矛」という同盟構造を塗り替え、中国などを刺激しかねない問題のため、米国は日本に慎重な対応を要求。

両国は「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」の改定という公式協議では議題にせず、別の場で答えを探っている。

<ガイドライン協議で米側の姿勢崩せず>

敵基地攻撃能力は、F35のようなステルス機による爆撃や巡航ミサイルといった打撃力を使い、敵国内のミサイル発射装置などを破壊する能力。複数の関係者によると、日本の防衛省と米国防総省は現在、担当者レベルで自衛隊による能力保有の是非や可能性について研究、議論をしている。

両国は昨秋、自衛隊と在日米軍の役割分担を定めた日米ガイドラインの改定協議を本格的に開始した。作業は今年末までに終える予定で、17年ぶりの見直しになることから、この公式協議の場で同問題を話し合うべきとの声が日本側にはあった。

しかし日本の関係者によると、米国は、日本が打撃力を保有すれば東アジアの軍事バランスを崩しかねないと懸念。さらに、米国が提供する抑止力への信頼が同盟国の間で揺らいでいるのではないか、との憶測を呼ぶ恐れもあるため、この問題を同協議で取り上げることに難色を示した。

日本側関係者は「今回のガイドラインでは突破できなかった」としており、両国はさらに時間をかけて話し合い、落としどころを探ることにしたという。

米国の複数の関係者も、日米が非公式に議論していることを否定しない。関係者の1人は「日本側から具体的なコンセプトや具体的な提案はまだない」と、議論が初期段階であることを示唆している。同関係者は「日本の準備が整えば、こちらは話す用意がある」と語る。

<「米軍に頼むという状況でいいのか」>

日本政府は、敵基地への攻撃について「法理的に自衛の範囲内」との公式見解をとっている。それでも、抑制的な防衛力の整備を基本としてきた日本は、敵基地を叩く攻撃的な兵器を揃えてこなかった。日米は安全保障条約による同盟を前提に、専守防衛に徹する自衛隊が「盾」、在日米軍が「矛」の役割を担うことになっている。現行のガイドラインは、弾道ミサイルへの対応について、「米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する」と明記している。

日本で打撃力の保有論が浮上してきたのは、北朝鮮が弾道ミサイルの性能を着々と高めるなど、安全保障環境が厳しさを増す一方、いざというときに米国が本当に敵基地を攻撃してくれるのかという不安が芽生えているためだ。

安倍晋三首相は2013年5月の参議院予算委員会で、「もしこの矛を、米軍がこういうケースでは使わないのではないかという間違った印象を与えることはあってはならない」と答弁。「今まさに日本を攻撃しようとしているミサイルに対して、米軍の例えばF16が飛んでいって攻撃してくださいよと日本が頼むという状況でずっといいのかどうか」と語っている。

<能力の一部保有が現実的か>

とはいえ、能力を保有するのは容易ではない。戦闘機や巡航ミサイルで基地を破壊するだけでなく、事前に敵領内のレーダー網や迎撃態勢を無力化し、制空権を確保する能力が必要になる。国立国会図書館の調査及び立法考査局の調査員、栗田真広氏によると、とりわけ重要なのがミサイル発射の兆候をつかんだり、発射装置の位置を特定する情報集能力だという。人工衛星や無人偵察機などを揃える必要がある。

関係者によると、日本は今後の対応として、米国に「矛」の部分を依存する従来の戦略だけでなく、能力のすべてを独自に取得するという方針まであらゆる選択肢を研究し、米国と議論をしている。

すべての装備を揃えるには「兆円単位のコストがかかる」(防衛省関係者)とされ、米国の持つ能力の一部を日本が保有、または共有することで、弾道ミサイル攻撃に対する日米同盟全体の抑止力を高めるのが現実的な方向と指摘する声もある。

「日本がすべての対応能力を構築しなくても、(米国の能力の)10分の1でも日本が一緒に運用し、米国を補助する状態になれば、日本の発言力が高まり、米国のコミットメントも高められるのではないか」と、関係者は語る。 「米国が打撃力を行使するハードルを下げてあげる必要がある」と話す。

日本はおおむね5年以内に結論を出し、装備の調達まで乗り出したい考えだ。日米の関係者によると、将来的にどんな結果が出てもいいよう、今年中に改定するガイドラインでは、日本の打撃力に関する部分はあいまいな記述になりそうだという。

*一部表記を整えて再送します。

久保信博、フィル・スチュアート 編集:北松克朗 

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