December 15, 2014 / 11:13 AM / 5 years ago

焦点:ソニー復活にハッカー攻撃の霹靂、平井社長の求心力に痛手も

[東京 15日 ロイター] - ソニー(6758.T)米映画子会社へのサイバー攻撃問題が、連結グループ経営を軌道に乗せたい平井一夫社長に重い課題を突き付けている。標的となった映画子会社は、グループ復活の柱の1つにしたいエンターテインメント部門の中核。

 12月15日、ソニーの米映画子会社へのサイバー攻撃問題が、連結グループ経営を軌道に乗せたい平井一夫社長(写真)に重い課題を突き付けている。11月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

しかし、米国子会社との「距離」もあり、本社側は問題の広がりが読めないのが現状だ。事態収拾に有効な打開策を打てなければ、平井社長の求心力にも打撃を与えかねない。

<情報流出の発端>

「それって冗談でしょ」。ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)のエイミー・パスカル共同会長は、今年6月、同社が公開発表した映画をめぐって北朝鮮が戦争を示唆しているとのBBCニュースの報道にあきれ、こんなひとことをメールで返信した。

しかし、それは冗談どころか、同社を標的にしたハッカー攻撃につながる予兆だった。先月24日、米ロサンゼルスに拠点を置く同社のコンピュータ画面に、赤い骸骨とともに、「Hack By GOP(GOPによるハッカー攻撃)」のメッセージが流れ、システムがダウン。大量の社内情報が盗まれた。 

「平和の守護神」を名乗るGOPによる攻撃は、SPEが今月25日に予定している北朝鮮の金正恩第1書記の暗殺を描いたコメディー映画「ザ・インタビュー」が背景にある。北朝鮮はこれに反発。GOPは「戦争の引き金となるテロリズム映画の公開を即刻中止せよ」とのメッセージをネットに投稿した。

ハッカー集団は同社から大量の社内データを盗み出して、インターネット上に次々と公開。未公開映画だけでなく、パスカル共同代表のメール、マイケル・リントン会長兼最高経営責任者(CEO)ら同社幹部の報酬額や社員の給与明細まで外部に明らかにされた。

騒ぎに輪をかけたのは、パスカル共同会長のメールの中身だ。オバマ米大統領との朝食会を前に「大統領には(奴隷の復讐を描いた映画)『ジャンゴ』はお好きかと聞いた方がいいかしら」などアフリカ系米国人の差別と読める「冗談」を身内の映画プロデューサーに送っていたことがわかった。流出したメールの中には、映画プロデューサーによるハリウッド女優の悪口も見つかった。

巧妙な手口で企業のシステムに侵入するハッカー集団を刺激しないためにも、企業の対応は「ノーコメント」が定石。SPEもそのスタンスを貫いてきたが、人種問題に敏感な米国世論を背景に、パスカル氏は盗まれたメールの存在を認めざるを得なくなり「無神経かつ不適切だった」との謝罪声明の発表に追い込まれた。米国内でさらに批判を呼ぶ可能性がある。     

<米子会社と隔たり>

米子会社のハッカー攻撃に対し、ソニー本社は「ノーコメント」(広報)を貫いているが、その心中は複雑だ。2011年にプレイステーションネットワーク(PSN)がハッカーに襲われて1億件を超える顧客情報が流出した際は、ソニー自身のシステムの脆弱性を突かれた。以来、同社は米国内に最高情報セキュリティー責任者(CISO)を置いてハッカー対策のレベルをあげてきたはずだった。

だが、今回のハッカーの手口はそれを上回る技術でシステムに侵入。すでにFBI(米連邦捜査局)が全米企業にセキュリティの警告を発するほどの高度なハッカーの手口で、日本の本社は、刻々と変わる米国子会社の報告に神経をとがらせているが「問題の広がりが読めない」(ソニー関係者)のが実態だ。

ソニーグループ内にあるとはいえ、米ロサンゼルスに拠点を置くハリウッド文化の映画会社と、エレクトロニクスを直轄する日本の本社は「まったく異なる別の会社」(ソニー元取締役)。米映画事業の日々の経営判断はSPEが独立して行っているため、今のところ「基本的には米国子会社の問題で、対応はロサンゼルスで行っている」(ソニー幹部)とのスタンスを取らざるを得ない。

今年10月、吉田憲一郎最高財務責任者(CFO)は「Confidential(極秘)」とした一通のメールを米国の映画・音楽を統括するリントン会長に発信した。平井社長、吉田CFO、リントン会長の3者ミーティングを前に、本社で主導するコスト構造改革を説明する内容だ。

リントン会長は、このメールを同日のうちにパスカル共同会長にメールを転送。さらに「ソニーと市場に今後3年間に何が達成できるか、大きな約束をしたことになる。今の状況は望んではいなかったが、こうなってしまった以上仕方ない」と漏らした。米国サイドに本社の方針を伝える吉田氏と、日本の本社を「ソニー」と呼ぶリントン氏からは、日米の微妙な関係が透けてみえる。 

<エンタメ事業は大きな柱>

SPEの情報流出が広がり始めた12月の第1週。平井社長は大阪のソニーストアにいた。エレクトロニクス製品の年末商戦が佳境に入り、陳列棚のデジタル一眼カメラ「α(アルファ)」を手に取りながら、ソニーマーケティングの営業社員に檄を飛ばしていた。

エレクトロニクスの再建は、赤字のスマートフォンが課題として残っているが、それ以外は黒字を維持して堅調だ。エンターテインメント事業について、平井社長は11月18日の投資家説明会で「安定的に収益を創出するソニーグループの大きな柱の1つ」と強調した。来期以降、エレクトロニクスとエンターテインメントの両事業が支える連結グループ経営を軌道に乗せたい考えだ。

「私自身がソニー商品のユーザー」と語る平井社長は、デジカメ新製品のデザインに注文を付け、神奈川県厚木市の技術開発拠点をたびたび訪問するなど、エレクトロニクスの現場に近づいた経営を意識している。一方で「映画についても公開前にすべてをチェックして、時には脚本に意見を言うことがある」(平井社長)。ハッカーが公開したメールによると、平井社長は、ザ・インタビューの1シーンで金第1書記が暗殺される描写に懸念を示したことがわかっている。 

エンターテインメントを主軸のひとつとしてソニー復活の道を探る平井社長。「青天の霹靂」とも言えるSPEへのハッカー攻撃問題をどう解決に導くか、同氏の手腕が問われている。

*カテゴリーを追加して再送します。

村井令二 安藤律子 取材協力:Jim Finkle 編集:北松克朗

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