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焦点:リスクオフの円買い強まらず、米金利低下のドル安主導 構造要因も

[東京 22日 ロイター] - 金融不安が強まる中でも、今のところリスクオフの円買いは目立っていない。足元のドル安・円高は、米金利低下によるドル主導との見方がもっぱらだ。一方、日本側にも、貿易赤字拡大や対外証券投資の減少など、かつてのように円買いが強まりにくい構造要因が背後にある。

 3月22日、金融不安が強まる中でも、今のところリスクオフの円買いは目立っていない。足元のドル安・円高は、米金利低下によるドル主導との見方がもっぱらだ。写真は10日撮影(2023年 ロイター/Dado Ruvic)

<SVBショック後に円ロング減少>

米商品先物取引委員会(CFTC)によると、IMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組は、3月14日までの週で、円のネットポジションが7万4794枚のショートとなっている。7日時点では7万5303枚であり、ほぼ変わらなかった。

米シリコンバレー銀行破綻による「SVBショック」が広がったのは海外時間の10日だが、円ショートと円ロングがともに前週から6000枚程度減少。その時点では投機筋による、リスクオフの円買いは増えずにむしろ減っていた。

その後、米シグネチャーバンク破綻やクレディ・スイスを巡る懸念から金融不安が高まり、ドル/円は一時130.55円付近と、2月10日以来の安値を付けたが、フローの中心は円買いよりもドル売りだったとみられている。

リフィニティブのデータによると、ドルの対円での年初からの騰落率は0.92%の上昇。ユーロなど他の通貨と比較しても、円の買い戻しは大きく強まっていない。

市場筋によると、投資家は米利上げペース再加速への警戒で、再びドルロングにする動きが強まっていたが、「リスク回避の流れを受けて、(ドルのポジションを)中立に戻している」(国内信託銀行)という。

過去の金融不安局面では、リスク回避目的の円買いが強まるケースがみられたが、今回は現時点ではまだ目立った動きは出ていないとの指摘が市場では多い。

ステート・ストリート銀行の東京支店長、若林徳広氏は、足元でのドル高/円安は、米金利の低下に伴うドル売りが中心だったとし、「円は安全な通貨としての地位を取り戻していない」と指摘する。

<日銀の政策修正観測が後退>

以前と異なるのは、日本の貿易赤字拡大などファンダメンタルズ上の円安要因だ。かつて貿易黒字国だった日本は資源価格の高騰や円安の進展で貿易赤字国となり、2022年の貿易収支は19兆9713億円の赤字と1979年以降で最大の赤字額となった。

日本の対外証券投資減少も円買いが進まない要因の1つだ。これまでは、リスクオフ局面で円買いが進んだのは、国内投資家が海外に投資していた資金を国内に戻す動きが強まったためだ。日本の対外証券投資は累積的な残高は依然小さくないが、22年は約22兆円の売り越しだった。

海外を中心とした金融不安の広がりで、日銀の政策修正期待もいったん後退している。指標銘柄である新発10年債利回りは一時0.24%と、許容変動幅上限の0.5%から大きく低下した。

「日銀がイールドカーブコントロール(YCC)修正に対して時間の猶予ができたとの見方がでており、円をそこまで買い進める材料がない」と、楽天証券のFXディーリング部、荒地潤氏は指摘する。

<0.25%米利上げならドル高材料か>

市場の焦点は、今晩明らかになる米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果だ。米金利先物市場は22日時点の米利上げ織り込み度合いは、0.50%がゼロ%に低下する一方、0.25%は86.4%に上昇した。

市場では利上げ停止や利下げの予想もあり、「0.25%の利上げであれば限定的ながら米金利上昇の材料になる可能性がある」(みずほ証券のマーケットアナリスト、鈴木優理恵氏)という。

米国では、金融システム不安がくすぶる一方、インフレは高止まりしている。ニッセイ基礎研究所の上席エコノミスト、上野剛志氏は「FRB(米連邦準備理事会)が即座に利下げで対応するというよりも、インフレ高止まりから利上げは当面継続されるとみている。金融システム不安については流動性供給など別の方法で対応していくのではないか」との見方を示す。

オプション市場では、ドル/円リスクリバーサル(RR)の2カ月物や3カ月物のマイナス幅は深く、円高に備えるポジションが残っている。ボラティリティーの高まりで流動性が低下する中、リスクリバーサルを売る動きが出ていないためで、きっかけ次第で円売り方向の動きを加速させやすい状況になっている。

(坂口茉莉子 データ:リフィニティブ 編集:伊賀大記)

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