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焦点:東芝、厳しいメモリー年度内売却 「プランB」検討開始の見方も
2017年8月31日 / 11:02 / 3ヶ月後

焦点:東芝、厳しいメモリー年度内売却 「プランB」検討開始の見方も

[東京 31日 ロイター] - 東芝(6502.T)が経営再建の柱に据える半導体メモリー事業の売却が大幅に遅れ、今年度中の債務超過の解消が一段と不透明になっている。肝心の売却先候補の選定は期限とみられていた31日に決まらず、各国の独禁法審査を通過して年度内に売却を完了するという筋書きの実現に悲観的な見方が日を追うごとに増している。

 8月31日、東芝が経営再建の柱に据える半導体メモリー事業の売却が大幅に遅れ、今年度中の債務超過の解消が一段と不透明になっている。写真は東芝のロゴマークが入ったプリント基板。2012年7月撮影(2017年 ロイター/Yuriko Nakao/File Photo)

関係者からは、メモリー売却に代わる「プランB(代替策)」の検討が既に始まっているとの指摘もある。

この日の午前中に取締役会を開いた東芝は、米系ファンドのべイン・キャピタルなどのコンソーシアム、米ウエスタンデジタル(WD)(WDC.O)を含む企業連合、台湾の鴻海精密工業(2317.TW)などの企業連合の3陣営との交渉を継続しているとのコメントを発表した。交渉状況が報告され、検討したものの決定には至らなかったという。

来年3月末まで7カ月となる8月末が近づくにつれ、融資銀行団や経済産業省は、メモリー事業の売却先を早期に選ぶよう、東芝側に圧力をかけたとされる。有力視されたのが、同売却を巡って東芝と訴訟問題を抱えるWDだ。

WDを選べば「売却完了の大きなネックになっている訴訟問題が解消し、売却が前進する」──。

そんな思惑からか、「WDと独占交渉権」などとの報道が相次いだが、この日の取締役会では、そのような議決はなかった。

2年連続の債務超過を回避し、上場維持を狙うという東芝の経営再建の現場には、様々な立場の関係者が、それぞれの利害や思惑を反映するかたちで関与。その調整は複雑化する一方で、来年3月末にどのように着地するのか、視界不良が続いている。

<甘くない独禁法審査>

東芝は当初、5月中に売却先候補を選び、その後の各国の独禁法審査を通過させ、年度内の売却を完了させるとのシナリオを描いていた。だが、そのタイムスケジュールからは、3カ月も遅れている。

今月10日の記者会見で、同社の綱川智社長は「(各国の)独禁法(審査)を考えると容易ではない」と、既に時間的余裕がないことを認めている。

今回の売却交渉に関与した業界関係者は、べイン・キャピタルに韓国半導体大手SKハイニックス(000660.KS)などを加えた「日米韓連合」、WDを中心にした日米連合とも、中国の独禁法審査当局による審査を通過できない可能性があると指摘する。

その関係者は「中国の独禁当局が数カ月間、うんともすんとも言わない可能性がある。買収を認めない可能性だってある」と述べている。

事情に詳しい財界関係者も「中国での審査は、年単位になることも覚悟する必要がある」との見方を示す。

また、東芝がWD陣営を選んだ場合、同社がいったんは日米韓連合を優先交渉先に選んだ経緯もあり、同社幹部は「韓国での審査が厳しくなる」と話す。

<技術ナショナリズムも壁に>

中国と関係の深い鴻海陣営の場合、技術流出の観点で日本政府が依然として難色を示す。複数のハイテク専門家からは、いわゆる「技術ナショナリズム」に対しては「時代錯誤」との見方も示されているものの、今回のメモリー事業の売却に深く関与している経産省は、鴻海のように中国と関係の深い企業への売却に警戒感が強い。

複数の関係者によると、綱川社長ら東芝幹部が今週、経産省幹部を訪ね、鴻海陣営も選択肢として残っていると言及すると、強い拒絶反応があったという。

日米韓連合と鴻海の2陣営は、WDが国際仲裁裁判所に売却差し止めの訴えを起こしていることで、法的にメモリー事業買収が無効になるリスクを抱える。

来年3月末までの売却完了という観点でみた場合、WD、日米韓連合、鴻海ともにそれぞれウィークポイントを抱え、結果として売却手続きは足踏み状態が続くリスクが高まっている。事態の打開が図られない場合、来年3月末に売却代金が東芝に支払われない、という「最悪ケース」の可能性は消えていない。

<プランBは浮上するか>

来年3月末までに、各国独禁法審査を通過せず、メモリ-事業の売却が完了しない場合、来年3月末で4100億円と見込む債務超過を解消するできるのか。

東芝側は「(審査が)間に合わなかったらどうするのかについては、何も決めていない」(綱川氏、10日の記者会見)と、代替策の検討は表向き否定している。

ただ、別の幹部は、代替策について「もちろん考えている」と話す。

電機アナリストの和泉美治氏は「東芝の時価総額(31日時点で約1兆3000億円)に対し、4000億円の債務超過額なら、(特設注意市場銘柄指定により)公募増資は出来ないが、第三者割当増資やDES(債務の株式化)など、メモリー売却以外の選択も現実的にできそうな気がする」と述べている。

東芝に融資する銀行側は、増資引き受けやデット・エクイティ・スワップ(DES、債務の株式化)などへの警戒感が強く、ある取引銀行関係者は「ありえない」と否定する。

しかし、東芝の事情に詳しい関係者は「プランBは検討されている」と述べている。銀行による優先株の引き受けのほか、新株予約権無償割り当て(ライツ・オファーリング)が検討されているという。ライツ・オファーリングが選択されると、当該企業が既存株主に対して無償で新株予約権を割り当て、株主がその権利を行使して資金を払い込み、企業が新たに資金調達することが可能になる。

関係者の一部では、「短期決着」の可能性もささやかれているもようだが、何も決まらないまま時間が空費された場合、「プランB」の可能性が高まることになりかねない。

*本文5段落目の文言を一部修正しました。

浜田健太郎 取材協力:布施太郎 編集:田巻一彦

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