March 14, 2018 / 10:31 AM / 3 months ago

焦点:春闘、一時金含め2%台後半の勢い 政府期待の3%に迫る

[東京 14日 ロイター] - 春闘集中回答日の14日、全体の行方を大きく左右する自動車3社と電機各社は、ベースアップ(ベア)がそろって2017年の実績を上回った。春闘情勢に詳しい専門家の間では、ベアと定期昇給を合わせて近年で最も高い15年の2.2%(連合集計)に迫るとの見方が出ている。

 3月14日、春闘集中回答日に、全体の行方を大きく左右する自動車3社と電機各社はベースアップ(ベア)がそろって2017年の実績を上回った。都内で2015年3月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato/File Photo)

ボーナス増や手当を含めると、賃金全体で前年比2%台後半の増加が見通せるとの声が多い。

結果として政府が期待を表明した3%に近い賃上げが実現しそうな情勢だが、消費が刺激され、国内景気が上向くのかについては、残業代減少などの影響も見守る必要がありそうだ。

<大手企業、ボーナス等込みの3%超えを強調>

「ボーナスと手当を含めて3%は超えた」──。ホンダ(6826.T)の広報によると、ベアの率は公表していないが、年収ベースでの昇給率は政府の要請に達したと強調する。

トヨタ自動車(7203.T)も正社員だけのベアは公表せず、期間工から再雇用者までを含めて全雇用者の昇給率が3.3%となったと発表。

次期経団連会長企業の日立製作所(6501.T)は、月収ベースでは2.3%増だが、賞与を加えた年収ベースで4.1%増と3%を大きく超える。

日立を含めた電機大手は、17年のベア1000円を上回る1500円で決着。三菱電機(6503.T)は10年ぶりに期末特別一時金を支給することになった。

この日の経営陣の発言には、政府が「期待」している3%の壁に届かないという結果は避けたいとの思惑がにじんでいた。

日立の中畑英信・執行役常務は記者団に対し、ベアについて「将来の固定的なコストになるので、慎重に検討せざるを得なかった」としながら、ボーナスについては過去最高の営業利益を反映した高水準を実現したと説明。「3%ありきで議論したわけではない」としつつ、「結果として3%はクリアした」と述べた。

<総額の仕上がりは3%弱の見通し>

今回の結果について、第一生命経済研究所・主任エコノミストの柵山順子氏は「ベアでは恐らく最近のピークだった15年に届くかは微妙だが、ボーナスや手当を含んだ全体の給与総額では1%強上がりそうだ。定期昇給を入れると3%に近い昇給になりそうだ」とみている。

SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミストの丸山義正氏も、定期昇給とベアで2.5%程度と15年の賃上げ率を超える可能性があるとみている。

ボーナス・手当込みだと3%弱は行きそうだと予想。背景に人手不足と物価上昇があると分析している。

果たして残業代減少や物価上昇、社会保障負担といった消費下押し圧力を乗り越えることができるのか──。

柵山氏は「賃上げはある程度しっかりする見通しとはいえ、これらの下押し圧力を差し引くと、トントンになりそうだ」とみており、少なくとも消費拡大の力としては迫力不足と予想する。

これまでも、所得増加にもかかわらず消費性向が低下する傾向が見られ、消費者心理や物価動向などの要因も、複雑に波及してきたとみられている。

<求められる自律的な賃上げメカニズム>

ただ、今年は最高益を記録した企業が多かったものの、来年以降は減益要因が少なくないとのエコノミストの予想もあり、高めの賃上げ率を維持できるとは限らない。

日本総研の山田久理事は「政権からの賃上げ要請が仮になくなれば、果たして持続的に賃上げが続くか、そこは疑問符を付けざるを得ない状況」だと指摘する。

「次のステップとして、政府の働きかけなしに企業が主体的に企業成長のために賃金を上げていくという前向きの攻めのスタンスが出てくるかどうかが課題だ」とみている。

山田氏は、毎年着実に賃上げすることで、経営側が事業構造を絶えず見直していく必要に直面し、生産性の向上につながりやすいと分析。

労働者も賃上げによって新しい技能を身に着けるインセンティブが働き、そのルートからも賃上げの原資になる生産性の上昇をもたらしやすくなるとみている。

賃上げの圧力になった人手不足は、企業に働き方改革を促す要因にもなっている。

トヨタ自動車では、定年退職する年齢層に対して、定年前と同処遇での再雇用者数を前年から2割増やし、老後への不安払しょくと消費活性化を図りたいとしている。

日立製作所は、多様な人材の活躍を目指し、仕事と介護の両立支援に向けて10万円相当の金銭的支援制度を導入すると発表した。

こうした将来不安に対する企業の取り組みが広がることは、これまで消費抑制要因となってきた消費者心理の改善にプラスに働く。

今年の春闘は、3%を要望する政府の「期待表明」で始まったが、賃金全体の引き上げを目指した「フォーム」には様々な手当も加わり、働き方の改善も始まった。

世界的な技術革新の流れに乗り遅れないよう事業構造を変えていく必要性に迫られ、国内的には急速に進む少子・高齢化と人手不足、市場の縮小問題にも直面。こうした内外の「大変化」に対応した労使交渉に脱皮する局面に差し掛かってきたと言えそうだ。

中川泉 取材協力:梶本哲史 白木真紀 山崎牧子 志田義寧; 編集:田巻一彦  

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