July 31, 2019 / 8:04 PM / 21 days ago

米FRBが利下げ、資産縮小終了も前倒し:識者はこうみる

[31日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は30─31日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.00─2.25%に25ベーシスポイント(bp)引き下げることを決定した。利下げは2008年以来初めて。FRBは世界経済を巡る懸念のほか、国内インフレの低迷に言及し、必要に応じて一段の利下げを実施する用意があることを示唆した。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●日欧中銀は安堵、通商交渉への飛び火警戒

<日本総研 理事 牧田健氏>

FOMCは景気に対する認識をほぼ変えず、世界経済とインフレ動向を考慮した保険的な利下げだと位置づけた。市場は予想を下回る指標が出ると、利下げ期待で株が買われるという異常な状態にあり、これを正常化しようとしたのだろうが、株価の下げが続くとファンダメンタルズそのものが崩れてしまうおそれもあり、注視が必要だ。

今後の利下げは経済指標次第となった。米国では在庫調整圧力がやや強まってきた面もあったが、投資に持ち直しの兆しが見えてきた。このまま下げ止まるようなら、9月は利下げ見送りがあり得る。一方、中国景気減速の影響で製造業がもたつくようなら、利下げがあってもおかしくない。

今回の決定を最も喜んでいるのはECBと日銀だろう。通貨高は回避したいが政策手段に限りがある中、FRBが利下げトーンを後退させたことで、「武器」を使わずに済むような状況になってきたためだ。

ただ、株が下がり続ければリスクオフの円高が進みやすくなるし、FRBが大幅利下げを実施しなかったことで、再選を狙うトランプ大統領が通商交渉に一段の圧力をかけてくる可能性も出てきた。そうなればドル安圧力が強まるリスクがある。

●ハト派姿勢継続、金利低下方向は変わらず

<マニュライフ・アセット・マネジメント 取締役 債券運用部長 津本啓介氏>

今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定は市場の想定通りだった。前日の米国市場では、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が今回の利下げはサイクルの半ばにおける調整的な性格を持つと説明したことを受けて、利下げが1回で終わる可能性があるとの見方が強まり、米株式市場は下落し、米債券も一時的に売られた。ただ、そこまで力強く利下げを打ち止める、と言っているわけではない。

また、インフレの見通しについても、前回とほとんど変わっていない。つまり、FRBの見方も変わっていないことを示している。パウエルFRB議長も「適切に行動する」と発言しており、今後データ次第では再度追加利下げに踏み切る可能性はあるとみている。

欧州中央銀行(ECB)理事会、日銀金融政策決定会合、FOMCと一通りイベントが終わったが、いずれの中銀もハト派姿勢を継続している。円債市場の金利の方向性としては、従来と同様に今後も下向きでみている。

日銀については、当面様子見ム―ドが続くだろう。金利の面ではできることが限られており、打つ手はなさそうだ。短期や長期の金利を深掘りすることは難しいとみている。市場としても日本の円債市場が大きく動くとは思っていないだろう。

●市場との隔たりが浮き彫り

<第一生命経済研究所 主任エコノミスト 藤代 宏一氏>

今回のFOMCの声明文は想定内だった。サプライズがなかった分、パウエル議長の記者会見には特別な重きが置かれたが、たとえ議長が中立的な発言をしても、市場参加者はそれをタカ派としてとらえてしまうバイアスがあった。金融市場の反応がやや大きかったのは、市場参加者とFRBの間に隔たりがあることを意味しているのではないか。

国内では懸念されていた円高方向には向かっていない。日経平均は、今週続落していたため大暴落になる可能性は低いが、1%超える下落は十分にあり得る。2万1300円台を推移していくのではないか。

●ドル年末に111円、調整利下げで米景気拡大

<みずほ証券 チーフ為替ストラテジスト 山本雅文氏>

今回のFOMCは市場が想定する今後1─2回以上の利下げを示唆する内容とはならなかった。今後も米経済指標が連続して市場予想を大きく下回ることなく、緩やかな拡大継続を確認するものとなれば、追加利下げがあるとしても、ドル/円の下落余地は限定的となるだろう。

むしろ、調整利下げが先行きの米景気拡大継続の確度を高める面もあり、ドルを下支えする可能性もある。年末に向けて111円付近へ上昇するとの予想を維持している。

ただ、FOMC後に10日につけた直近高値(108.99円)を明確に上抜けできなかったことで、目先はドルの上値の重さが意識されるかもしれない。

●議長発言に失望感、日本株も下押し

<キャピタル・パートナーズ証券 チーフマーケットアナリスト 倉持宏朗氏>

25bpの利下げは、想定されていた通りで、それ自体は株価に織り込み済みだった。しかし、注目されていたパウエル議長の発言が、追加利下げの否定を思わせるコメントだったため、マーケットに失望感を与えている。期待を裏切る格好となり、米国株式市場は大きな下げに見舞われた。

これを受けた日本株は、前日の悪い地合いを引き継ぎ、下押しは避けられない。為替市場がドル高/円安に振れたことはポジティブに捉えられるものの、一方で、 米通信用半導体大手クアルコム(QCOM.O)の売り上げが予想を下回り株価が崩れたことがマイナスに作用する。日経平均は2万1300円どころを探る動きになるのではないか。

●正直な議長会見、市場の過剰期待が修正

<三井住友銀行 チーフ・マーケット・エコノミスト 森谷亨氏>

市場の強い金融緩和期待と比較すると、パウエル議長会見がタカ派だった。ただ、もともとFRBは本格的な利下げサイクルに入ろうとしているわけでなく、保険的利下げによって金利水準を緩和的環境に置き、インフレ圧力を高めたいという考えだったはずだ。それを正直に言ったまでだろう。

FRB自身も中立金利がどの水準なのかまだ見極められていないだろうから、あと25bpの利下げを実施した後で、経済情勢をみながら、緩和的な水準がどこかを探ることになるとみている。その過程では、利下げを織り込み過ぎたマーケットには修正が起きる可能性がある。

ただ、米中貿易交渉など諸問題がどうなるかまだわからない中で、今の段階で正直に言うこともなかったのではないか。

米国のイールドカーブは、短期金利が低下する形でフラット化。景気回復期待がこれで高まったわけでもないので、長期金利の上昇は限定的だろう。ドル安には一定の歯止めがかかるだろうが、ドル高もそれほど進まない見通しだ。日銀も金融緩和に動きにくいためドル/円は膠着感が強まりそうだが、利下げを織り込み過ぎた米株の大幅調整がリスクだ。

●年末に向け追加利下げ圧力高まる公算

<USバンク・アセント・プライベート・ウエルス・マネジメント・グループのグローバル投資ストラテジスト、トム・ハインリン氏>

25ベーシスポイント(bp)の利下げを実施したほか、今後入手される指標を見極めるという文言を維持し、追加利下げに含みを残した。市場予想の中ほどの結果と言える。今年は2─3回、来年は1回の利下げが実施される可能性が残されたわけだが、これは市場が織り込んでいる予想と一致しており、その見通しに変更はない。

しかし、追加利下げの可能性を残したことによって、今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)を巡るボラティリティーは高まる可能性がある。市場にあと2回の利下げの可能性が織り込まれているとすれば、年末に近づくにつれて、利下げに向けた圧力は高まる公算が大きい。

●保険的な利下げ、9月追加緩和につながらず

<サビルス(ニューヨーク)の主席エコノミスト、ヘイディ・ラーナー氏>

今回の利下げが自動的に9月の追加利下げにつながるとは考えていない。今回の利下げを受けても、FRBは見通しに対する不確実性は払拭できないとしているが、将来の道筋を考えるとのFRBの表明は、現実的な緊急性があることを示す文言ではないような印象を受ける。

一部では50ベーシスポイント(bp)の利下げ決定されるとの予想も出ていた。ただ、今回は保険的な意味合いを持つ利下げだったと考えているため、追加利下げでフォローアップする必要があるのかは不明だ。

●利下げに2人が反対、ややタカ派的

<INTL FCストーンの店頭外為・金利部門マネージングディレクター エリック・ドノバン氏>

米10年債利回りは直近15分間で1ベーシスポイント(bp)のレンジ内で推移した。多くの市場関係者が25ベーシスポイント(bp)利下げは織り込み済みと指摘しており、(市場の)反応は基本的にはなかったと言える。

今回の政策決定では2人の米連邦準備理事会(FRB)メンバーが金利据え置きを主張し、反対意見がこれまでで最も多かった。想定よりもややタカ派だろう。5段階評価で非常にハト派的を1、非常にタカ派的を5として、今回の決定判断は3か4だ。この水準は市場が実際に見込んでいたものよりややタカ派的と言えるが、大幅ではなく、緩和方向への扉は開かれたままだろう。

●主要指標改善しなければ9月に追加利下げへ

<RBCキャピタル・マーケッツのシニア米国エコノミスト、ジェイコブ・オウビナ氏>

FRBは文言やシグナルにとりわけ気を使っている。計画よりも2カ月早いバランスシートの縮小終了が経済に及ぼす実質的な影響は軽微だろうが、シグナルを発するという観点から見れば、景気拡大維持に向け可能な措置をすべて講じるという持説を鮮明にしたことになる。

25ベーシスポイント(bp)の利下げはほぼ確実視されていた。2人のメンバーが反対票を投じたことも驚きではない。ジョージ・カンザスシティー地区連銀総裁とローゼングレン・ボストン地区連銀総裁は比較的タカ派的なメンバーで、金利据え置きを主張してもおかしくはない。

そして、追加利下げに含みを残し、国際的な情勢に懸念を示すと同時に状況を監視を続けると表明した。欧州PMI(購買担当景気指数)など、主要指標が目立った改善を遂げなければ、FRBが9月に25bpの追加利下げを実施する可能性は高いだろう。

●市場はあと2回の追加利下げ見込む

<ヒュー・ジョンソン・アドバイザーズ(ニューヨーク)の最高投資責任者(CIO)、ヒュー・ジョンソン氏>

市場では3回の利下げが織り込まれている。今回と、おそらく12月、その後は今から1年後。米10年債利回りのほか、株価は基本的にこうした見通しに沿った水準にある。

ただ、2回の追加利下げ見通しはそれほど確固たるものではない。利下げが休止されるとの観測も出ている。

●今後数カ月間の政策余地残す

<シチズンズ銀(ボストン)のグーバル・マーケッツ部部長、トニー・ベディキアン氏>

おおむね予想通りで、25ベーシスポイント(bp)の利下げに大きなサプライズはない。米連邦準備理事会(FRB)は引き続き控えめなインフレや世界の動向を理由に挙げている。

フォワードガイダンスはこれまでのものとほぼ変わらなかった。FRBは労働市場が堅調とし、緩やかな成長に向けた合理的な兆しがあると認めた。今後数カ月の政策判断について広範な余地を引き続き残している。

●米経済は堅調と判断、9月利下げの公算小

<コモンウェルス・フィナンシャル・ネットワークの最高投資責任者、ブラッド・マミリアン氏>

米連邦準備理事会(FRB)は30─31日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド金利の誘導目標を2.00─2.25%に25ベーシスポイント引き下げることを決定した。写真は会見するパウエル議長(2019年 ロイター/SARAH SILBIGER)

米連邦準備理事会(FRB)は利下げの根拠について、状況が考えられているよりも悪化しているからではなく、予防的な利下げであることを明確にした。利下げを正当化するリスクについても踏み込んでおらず、FRBは今後様子見姿勢を維持し、9月に追加利下げに動くことはないと考える。

市場にとってはほぼ期待通りの結果となったはずだ。利下げ幅が50ベーシスポイント(bp)でなかったこと、追加利下げの手掛かりがさほど示されなかったことで、一部失望感が広がった可能性はある。しかし、FRBが事実上、米経済は堅調に推移していると認めたことを考慮すれば、マイナスの反応は短期的なものにとどまるだろう。

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