[ロンドン 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 最高の料理は、裏メニューに隠れていることがある。出前サービスの英デリバルーや米配車大手ウーバーUBER.N傘下のウーバーイーツは、新型コロナウイルスの世界的流行で取引先の飲食店が苦境にあえぐ中、抜け道を探ろうとしている。自宅待機している顧客に対し、料理だけでなく生鮮食品や食品雑貨を届けることで生き残りを図ろうというのだ。
外出制限や禁止措置が実施されて出前サービスは引っ張りだこかと思いきや、それとはほど遠い状態だ。米グラブハブGRUB.N、英ジャスト・イート・テイクアウェイ・ドット・コムTKWY.AS、中国の美団点評3690.HKは、今年に入って株価が平均12%下落した。
稼ぎ頭だったオフィス向けのランチ出前は姿を消し、レストランの閉鎖により料理の供給も打撃を被った。グラブハブの創業者、マット・マロニー氏は、飲食店の30%は休業、場合によっては恒久的に閉鎖を余儀なくされると予想する。
一方、英テスコTSCO.LやフランスのカルフールCARR.PAといったスーパーは、正反対の問題を抱えている。今のところ食品雑貨の供給は豊富にあるが、人々は社会的距離を取るよう求められているため、顧客への供給にボトルネックが生じている。食料品通販の英オカドOCDO.Lは事実上予約が一杯。封鎖措置下の英国において、配送予約は希少価値を持つようになった。
この状況下で、食品雑貨店と出前サービス企業が手を組むのは大いに理にかなっている。例えば、ウーバーは1日、仏カルフールやブラジルの医薬品チェーン大手、コンビニエンスストアを傘下に持つスペインのエネルギー企業など、多くの小売関連企業と配送サービス契約を結んだと発表した。3万人の運転手を抱えるデリバルーは最近、英小売り大手マークス・アンド・スペンサーMKS.Lの一部店舗との提携を発表した。
出前サービス企業の観点に立つと、食品雑貨店との提携は苦境にあるレストランと異なり、提携先の企業が配送料をすぐに払えるところが利点だ。
ジャスト・イートは最近、独立経営のレストランが「なんとか閉店を避けられるよう」、手数料(14%)の3分の1を返すと約束した。これに対してスーパーは、パニック的な買いだめによって資金があふれている。
もっとも個人宅への生鮮品などの配送も、出前と同様に利は薄い。スペインの出前スタートアップ企業・グロボによると、スーパーの配送注文の単価は30ドル前後で、出前とほぼ同水準。つまり出前企業の高コスト構造は変わらない。デリバルーとウーバーイーツは、IT・マーケティング費用を差し引くと赤字が続いている。
それでも、食品雑貨の配送に手を広げて受注件数を増やせば、黒字化の確率は増す。コロナ危機が去った後も、顧客が食品雑貨を通販で買う習慣を続けてくれるかもしれないからだ。
●背景となるニュース
*ウーバーイーツは1日、仏カルフール、スペインのガルプ・エネルジア、ブラジルの医薬品チェーンPague Menosなどの小売企業と一連の提携を発表した。
*デリバルーは3月23日、マークス・アンド・スペンサーがBPのガソリンスタンド内に設置している店舗との提携を発表した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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