August 29, 2019 / 4:58 AM / in 16 days

アングル:トランプ政権がドル高是正介入に動く可能性とその効果

[ニューヨーク 28日 ロイター] - トランプ米大統領にとって、ドルの強さはずっと頭痛の種であり続けている。このため従来ほぼあり得ないとみなされてきた米政府による為替介入のシナリオが、外国為替市場関係者の間で話題に上ってきた。

 8月28日、トランプ米大統領にとって、ドルの強さはずっと頭痛の種であり続けている。このため従来ほぼあり得ないとみなされてきた米政府による為替介入のシナリオが、外国為替市場関係者の間で話題に上ってきた。写真はホワイトハウスに戻り、報道陣に手を振るトランプ大統領。7月30日撮影(2019年 ロイター/Leah Millis)

ドルの上昇を無理やり止めようとするのは極端な措置で、もう30年余り実施されていない。

直近でドルを弱くするための大規模な取り組みが行われたのは1985年のプラザ合意後で、先進5カ国(G5)がドル高是正に合意した。もっと最近になると、先進国の政策担当者は為替レートが歴史的な水準からかい離してしまった事態や、市場に生じた混乱に対処するために為替介入に乗り出している。

専門家は、米国が単独介入に動く可能性は低いものの、まったくないとは言い切れないという見方で一致する。

TDセキュリティーズのシニア金利ストラテジスト、ジェナディ・ゴールドバーグ氏は27日「ロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラム」で、トランプ政権に関しては「常に何でもあり」というのが決まり文句だと思うと語った。

ムニューシン米財務長官は28日、ブルームバーグテレビに対して現時点で為替介入する意向はないと発言した。

以下に介入の仕組みや想定される手段、実施の可能性および効果などをまとめた。

◎為替介入とは

一国の通貨当局がレートに影響を及ぼすために為替市場で自国通貨を買ったり売ったりする動きだ。

これは通常、通貨の値動きを安定させる目的で行われる。日本やスイス、中国などがこれまで介入を実施してきた。

米国による最後の為替介入は2011年。東日本大震災を受けて円が急騰したのに伴い、他国との協調介入に踏み切った。

米国の介入は財務省と連邦準備理事会(FRB)が協議して決定する。

◎トランプ氏が使えるドル高是正手段は

トランプ氏がドル高を抑えようとする場合に行使できるいくつかの手段がある。

(1)為替安定化基金

トランプ氏にとって最大の武器は為替安定化基金(ESF)だ。これは議会の承認を必要とせず、大統領の許可に基づいて財務長官が運営するもので、1930年代にドルの価値安定を目的に設立された。

7月31日時点で、ESFは937億7000万ドルの資産を保有しており、トランプ政権がドルの売買に利用可能。資産の内訳は外貨が206億8000万ドル、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)が504億9000万ドル、米政府証券が226億ドルだ。財務省とFRBは、対外的な通貨スワップ枠からも追加の介入資金を捻出できる。

またFRBは伝統的に財務省の介入原資に匹敵する資金を提供してきたため、財務省の資金力は実質的に2倍になる。原則としてFRBは外国資産購入のためにそれ以上にバランスシートを拡大することは可能だし、他国が米国の介入に合流する展開もあり得る。

シティグループのストラテジストチームは、これら全ての要素に触れた上で、米国の介入資金は無限になる可能性があるとしながらも、現実的には当初段階で最大約2000億ドルと試算した。

(2)FRBへのさらなる圧力

FRBの金融引き締めは、ドル高を促す重要な力になってきた。FRBの使命を修正する法改正は難しいとはいえ、トランプ氏は引き続きFRBに利下げへ影響力を及ぼそうとし続けてもおかしくない。

(3)口先介入

トランプ氏は米大統領としては異例なほどドル相場に言及している。繰り返しているのは、米国の輸出業者を支援するためにドル安が望ましいという主張で、今後も口先でドルを押し下げようとする可能性がある。

ラボバンクのシニアFXストラテジスト、ジェーン・フォーリー氏はノートに「トランプ氏は今年、ドル安誘導のために口先介入を積極的に利用している。ただそうした努力はほぼ実を結んでいない」と記した。

(4)貿易相手国に通貨押し上げを要請

米国がさまざまな貿易相手国と通商協定の再交渉に臨んでいる中で、これらの国に対して新協定に「為替条項」を追加して通貨を強くするよう迫る展開もあり得る、との声がアナリストから聞かれた。

◎介入観測をもたらすドルの水準は

今のところ為替介入は現実味が乏しいものの、ドルが大幅に上昇すれば可能性が出てくる。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ・グローバル・リサーチのストラテジストチームはノートで、為替介入が正当化されるためには、ドルが無秩序な形で強くなる必要があると指摘。過去の経緯や国際的な合意を踏まえて考えると、9月までにユーロ/ドルが1.05─1.07ドルまで下落すれば、介入の可能性が視野に入ってくるとの見方を示した。

シティのFXストラテジストチームも、ドルがおよそ10%高くなれば介入の可能性が増し、ユーロ/ドルが1.05ドルになれば介入リスクが切迫感を持ってくると分析している。

◎介入に効果はあるか

ラボバンクのフォーリー氏は、米国のドル高是正介入について、為替レートは市場が決めるべきだとする先進7カ国(G7)の合意に反すると話す。

また実際に米国が単独介入しても、ドル高に歯止めをかける十分な力があるかどうかアナリストは懐疑的だ。

TDセキュリティーズのゴールドバーグ氏は「そうした介入の効果は疑わしい。米国は限定的な力しかない。例えば2011年の米国の格下げの際には米国債利回りは低下した。もし介入が最終的に世界的にリスクオフの動きを引き起こしてしまえば、ドルは下落ではなく、逆に上昇すると予想できる」と述べた。

シティのストラテジストチームは最近のノートで、米国が介入すれば最初の数日でドルを2─3%押し下げると想定。中期的な影響もそれなりに大きいだろうが、より不確実性が高まると付け加えた。

TSロンバードのマネジングディレクター、ダリオ・パーキンス氏は最近のノートに「為替介入は、呼応する金融政策と世界各国の協調があって初めて機能する。足元に協調が生まれる環境は存在せず、米国単独でドル安にしようとしても、混乱が起きかねない」と記した。

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