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焦点:円高水準の企業想定為替レート、市場の円安予想とギャップ

[東京 9日 ロイター] - 国内企業の多くが今年度の想定為替レートを実勢より15─20円近くドル安・円高水準に置いている。機械的・保守的な予想設定が多く、マーケット参加者の予想通り、このままドル高・円安で推移すれば、輸出企業は業績上振れの要因になる。ただ、一部の企業からは金融引き締めで米経済が減速し、円高になるとの見方も出ており、予断を許さない。

 6月9日、 国内企業の多くが今年度の想定為替レートを実勢より15─20円近くドル安・円高水準に置いている。都内で2021年6月撮影(2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

<機械的な予想設定>

2023年3月期の想定為替レートを1ドル115―120円前後に置く国内企業が多い。想定為替レートを明らかにする決算発表があった4月後半から5月初旬は、ドルが20年ぶりに130円を突破した円安局面であり、市場とのギャップに注目が集まった。

日米金利差などを背景にドル高・円安を見込むマーケット参加者に対し、特段の明確な円高要因を想定して、想定為替レートを設定したという国内企業は多くない。

トヨタ自動車の想定為替レートは1ドル115円。景気や金利の予想を組み込んでいるわけではなく、決算締切日前の20営業日(3月11―31日)のドル/円相場の平均値をベースに想定為替レートとして機械的に算出している。

今年に入り、3月初旬まで114―115円程度で推移していたドルは、3月末の決算期末までに128円程度まで上昇した。野村証券のチーフ・エクイティ・ストラテジスト、池田雄之輔氏は、企業の為替見通しが実勢よりも円高水準となったのは、3月中旬以降に急ピッチで円安が進行したためとみる。

●2023年3月期の主要企業の想定為替レート

今期想定(米ドル) 前期実績(米ドル)

ディスコ 115円 112円

トヨタ自動車  115円 112円

任天堂 115円 121.83円

パナソニック 115円 112円

JSR 116円 112円

キヤノン 120円 110円

商船三井 120円 111.52円

三菱商事 120円 112円

伊藤忠商事 120円 111円

日産自動車 120円 112円

ホンダ 120円 112円

村田製作所 120円 112.38円

日立製作所 120円 112円

東芝 120円 112円

ソニーグループ 123円 112.30円

<下方修正嫌い保守的に>

業績計画や想定為替レートを保守的に設定しがちな企業行動が円高予想の理由との見方もある。

T&Dアセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャー、浪岡宏氏は、大手企業の中でも製造業か非製造業かによって異なるが、「輸出企業は円高気味に、輸入企業は円安気味に想定為替レートを見積もっている」と話す。

ニッセイ基礎研究所の上席エコノミスト、上野剛志氏によると、2000年度から20年度の日銀短観の経常利益計画で、6月時点の計画と最終的な実績を比較すると、実績が計画を上回ったのは16回、下回ったのが5回だった。

「企業経営者としては株主から批判されたくないので、なるべく下方修正をしたくないのが実情。慎重な見通しを立てておいて、危機など何もなければ上方修正することが多い」と上野氏は指摘。想定為替レートも保守的な事業計画に合わせて設定されやすいという。

<市場と見方異なるニトリ会長>

為替市場関係者からは、ドル高・円安基調は崩れにくいとの見方が多く聞かれる。米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制のために金融引き締めを継続する一方、日銀は緩和姿勢を堅持し、日米金利差は縮小しないとみられているためだ。

ドル/円は5月9日に131.35円を付けた後、126円台までいったん調整したが、海外と日本の金融政策の方向性の違いが意識される中、足元は再び上昇基調に入っており、9日には20年4カ月ぶりとなる134.56円の高値を付けた。

みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は「円安相場の終わり」を判断するのは時期尚早だと指摘する。今年6月から来年3月末までのレンジは127―137円程度の推移を見込んでいるという。

ただ、企業からは円高を予想する声も出ている。独自の経済や為替の予想に定評があるニトリホールディングスの似鳥昭雄代表取締役会長だ。

ニトリの決算期は2月で、想定為替レートを発表したのは3月末であるが、同社によると、米金融引き締めの影響で米経済が低迷すると予想する似鳥氏の意見や、社内外取締役での協議、過去の実績値などを踏まえて115円の水準を想定しており、現在も変更なはないという。

(浜田寛子 取材協力:白木真紀 編集:伊賀大記)

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