<東京市場 5日>
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日経平均 | 国債先物3月限| 国債305回債 |ドル/円(13:10) |
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10062.65円 | 139.05円 | 1.355% | 89.62/68円 |
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-293.33円 | +0.25円 | -0.020% | 88.98/03円 |
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注:日経平均、国債先物は前引け、現物の価格は午前11時の値。
下段は前営業日終値比。為替はNY終盤。
[東京 5日 ロイター] 欧州連合(EU)域内におけるギリシャやポルトガルなど
のソブリン・リスクの高まりが、世界的なマネーフローを直撃している。問題となってい
る国の国債ばかりでなく、欧州各国の株価下落に連鎖し、さらに米国、日本など他の株式
市場にも波及するとともに、外為市場ではユーロの大幅下落を通じてリスク回避の動きか
ら円が買われるという大きなうねりも発生した。東京市場では、日本の巨額の債務残高に
対する懸念よりも、株安を受けた債券買いが表面化した。
<日経平均も一時300円超の下落>
株式市場では日経平均.N225が大幅安となり、下げ幅は一時300円を超えた。ギリ
シャに端を発した債務問題がポルトガル、スペインに広がり、欧州のソブリン・リスクと
して警戒されている。欧州株安は米国、日本にも波及し、世界的な連鎖株安の様相となっ
てきた。「先物売りから裁定解消売りが出ている。欧州のソブリンリスクは日本企業の
業績と直接関係ないが、グローバル投資ファンドなどは欧州や米国の株価指数下落に伴
い、バランスの上で日本株も売らざるを得なくなっている。日経平均は外国人主導で上昇
を続けてきたが、利益確定売りが出やすいタイミングに重なった」(SMBCフレンド証
券・ストラテジストの中西文行氏)という。
また、明和証券・シニアマーケットアナリストの矢野正義氏は「今回の株安・円高はギ
リシャやポルトガル、スペインなどのユーロ圏内の財政状況をめぐる警戒感を背景に、リ
スクマネーの巻き戻しが起きたことが主因だろう。欧州とは直接関係のないようなブラジ
ルの株価や金価格が下落しており、リスクマネーが流れ込んでいた市場から資金が一斉に
引き揚げられたことが分かる」と分析する。
みずほ総研・調査本部市場調査部長の長谷川克之氏も「ソブリンリスクがポルトガル、
スペインからイタリアやフランスなど域内の主要国に波及すれば、世界的にリスク許容度
が低下することになり、要注意だ。ただ、日経平均は瞬間的に1万円を割れることはあっ
ても、大きく下放れることはなく、下値は底堅いとみている。個人投資家など下値での買
い意欲は依然強く、当面の下値メドは9800円程度」との見方を示している。
今後の展開について、明和証券の矢野氏は「1月雇用統計への懸念が強まっているが、
非農業部門雇用者数が多少マイナスであろうと、中期的に改善方向にあることに変わりは
ないだろう。1月の米小売各社の既存店売上高が市場予想を上回るなどファンダメンタル
ズは依然として堅調だ。状況が落ち着けばリスクマネーの投資再開が期待できる。日本企
業の業績もソニー6758.Tやトヨタ自動車7203.Tなどに見られるように堅調だ。円高が
進まなければ、再び評価される動きになるとみている」と述べた。
野村証券・プロダクト・マーケティング部マーケット情報課長の佐藤雅彦氏は「日経平
均が昨年11月27日の安値から約2カ月間で2000円程度上昇していたことを考えれ
ば、きょうの下落は調整にすぎないのではないか。米株の大幅安や円高などは後講釈とみ
ており、(底堅いという)大きな流れが変わったとは思えない」と指摘する。その上で
「投資家に押し目買いのスタンスもあるので、テクニカル上の9900円付近を目先の
下値めどとみている。 ドル/円JPY=は前日から2円程度円高に振れているが、90円
付近で推移していれば、株への影響は限定的だろう。ただ、ユーロは加盟国の財政問題
などがあり、引き続き注視したい」と語った。
<円とドルが急伸、世界同時株安でリスク回避の動き鮮明>
外為市場では、円とドルが前日欧米市場で急伸した。欧州のクレジット・デフォルト・
スワップ(CDS)市場でポルトガル国債の保証料が過去最高を更新する一方、スペイン
の株価指数IBES.IBEXが前日比6%近い下げとなるなど、欧州新興国への懸念の高
まりをきっかけに世界的に株価が下落。高金利通貨を中心に、これまで買い上げられた
通貨が売られる一方で、円とドルに買いが集中した。
特にきょう発表の1月米雇用統計が強含みとなって、株高/円安が進みそうだとの見方
から売りが先行していた円は急反発。ユーロ/円EURJPY=Rは日本時間夕方の126円台
から一時121.57円まで4.8円下げて11カ月ぶり安値を付けたほか、豪ドル/円
AUDJPY=Rは同80円前半から76円前半まで同3.9円の下げとなり、2カ月半ぶり
安値を更新。NZドル/円NZDJPY=Rも同63円半ばから2カ月ぶり安値の60円半ば
まで2.8円の大幅な下げとなった。
ドルも大きく上昇。ユーロ/ドルEUR=は200ポイントを超える下げとなり、一時
1.3669ドルと8カ月ぶり安値をつけ、豪ドル/米ドルAUD=D4とNZドル/米ドル
NZD=D4は最近の取引レンジ下限を下抜けて、ともに5カ月ぶり安値を更新。主要通貨
に対するドルの値動きを示すドル指数.DXYも80.283と7カ月ぶり高水準に上昇し
た。
ドルと円がともに強含みとなったものの、クロス円の下げが勢いづいたことでドル/円
は下落。日本時間夕方の高値から2.5円の大幅安で一時88.55円まで下落。昨年
12月14日以来2カ月ぶり安値を付けた。
この日の東京市場では、急速な下げの反動で「さすがに買い戻しが先行した」(邦銀)
といい、急速な円高とドル高は一服となったが、市場では荒い値動きがまだ続くとの見方
が大勢。バークレイズ銀行東京支店トレーディング部長の小川統也氏は「大きな値動きの
主因は、米雇用統計前のポジション調整。雇用統計が予想を上回る雇用の底堅さを示せ
ば、ドルは急落前の91円付近まで値を戻してもおかしくはないが、中国の旧正月入りで
取引量が減少する中、リスク回避という名の下、ダウンサイドリスクを引き続き気にかけ
ておく必要がある」と話している。テクニカル的には88円を割り込めば、次のターゲッ
トは85円になるという。
<株安受けて円債は買い優勢>
円債市場では、4日に新規で売り持ちにした海外勢が、取引を解消するオペレーション
に踏み切ったため、国債先物が一時、前日比50銭高に迫った。バークレイズキャピタル
証券・チーフストラテジストの森田長太郎氏は「欧州のソブリン問題が世界的なテーマに
なりつつあり、リスクリダクションの動きが出ている。欧州のソブリン債への懸念は、ギ
リシャからポルトガル、スペインなどに波及しており、株安・長期金利低下を加速させて
いる」と指摘した。
BNPパリバ証券の山脇貴史・シニア債券ストラテジストは「全般的に質への逃避の動
きが見られる」と話した。米雇用統計を控える中、国内投資家の動きは緩慢だった。
ある邦銀関係者は「国内総生産(GDP)と国の債務残高を比較した場合、ソブリン・
リスクに直面しているギリシャなどのPIIGSと日本に大きな差はない。ただ、欧州の
ソブリン・リスクがそのまま日本に飛び火するとみている参加者はゼロだ。国内の国債消
化能力が全く違うからだ」と述べる。
だが、その関係者は「だからといって、このまま債務残高が急膨張すると、ある時点で
今回のPIIGSのようなことが起きる。それがいつになるのか、事前にはだれにも分か
らないということだ。分からないということと、そうしたことが起きないというのは違う
はずだ」と話している。
(ロイター日本語ニュース 田巻 一彦 ;編集 山川 薫)
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