<東京市場 18日>
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日経平均 | 国債先物9月限| 国債308回債 |ドル/円(12:35) |
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9992.32円 | 140.57円 | 1.205% | 90.89/92円 |
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-7.08円 | +0.16円 | -0.015% | 90.89/93円 |
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注:日経平均、国債先物は前引け、現物の価格は午前11時の値。
下段は前営業日終値比。為替はNY終盤。
[東京 18日 ロイター] 週末18日の東京市場は、全般に手掛かり難で小動きの
展開が続いている。ただ、表面上の静かさとは裏腹に、米指標の弱さに対する警戒感がマ
ーケットの中で広がりだす気配がみられ、ドルがじりじりと下げる展開を予想する声が出
ている。菅直人内閣が打ち出した新成長戦略や菅首相が言及した消費税率10%に関して
は、市場での消化が進んでいない。ただ、一部では円安方向への期待感も出ている。
<細る海外勢のフロー>
株式市場では日経平均.N225が前日終値を挟んで小動き。スペインの国債入札が順調
だったことで欧州債務問題への警戒感は緩んでいるが、さえない米経済指標を受けてドル
安/円高が進み、上値には慎重なムードが強くなっている。「海外勢のフローが極端に細
り方向感が出にくい。ただ、海外勢はすでにリスク資産のポジションを落とし切った状況
だ。欧州主要銀行のストレステスト(健全性審査)の結果や26―27日のG20(20
カ国首脳会議)までスケジュール面での谷間に入る。利益確定売りや戻り売りは出るが、
当面強い売り圧力はなさそうだ」(コスモ証券・本店法人営業部次長の中島肇氏)との声
が出ている。
5月米雇用統計がネガティブサプライズになって以降、5月米住宅着工件数、6月の米
フィラデルフィア地区連銀業況指数など米経済指標に陰りがみられる。市場参加者は米国
景気の動向にも神経質になっている。「米企業業績は好調であり、遅行する雇用や設備投
資などが回復するのはこれからだ。過度に悲観視する必要はないが、7月からの4―6月
期米企業決算を見極める必要はある」(準大手証券情報担当者)との声が出ている。実際、
米経済の動向に詳しいある国内市場関係者は「米経済の調子が、これまでの予想よりも
減速する可能性が、1カ月前よりも高まっている」と分析している。
菅直人首相が消費税10%への引き上げに言及したことに関しては「昨今の財政状況を
考えれば消費増税は避けられず、10%という数字にも特にサプライズはないが、引き上
げのタイミングを間違えれば、株価に悪影響となる可能性がある」(日興コーディアル証
券・シニアストラテジストの河田剛氏)との見方が出ている。河田氏は「引き上げる環境
としては、実質成長率2%以上を1年ぐらい継続することなどが必要になってくる。日銀
との協調関係も重要だ。金融政策については緩和ぎみにしておく必要があるだろうし、そ
の意味では円安が株価を支える可能性もある」と話している。
<じわじわとドル安進む可能性>
外為市場で、ドル/円JPY=は90円後半と、ニューヨーク市場終盤に比べ、若干ドル
安の水準で推移した。ユーロ/ドルEUR=は3週間ぶりの高値圏で一進一退となる一方、
ユーロ/スイスフランEURCHF=は1.37スイスフラン半ばまで下落し、過去最安値に
迫った。海外市場では、ドルがほぼ全面安の展開となったが、半期末決算を控え「これま
で買われ過ぎたドルが売られる」(外銀)展開を予想する向きが多く、「今後出てくる米
景気指標も弱いものが多い見込みで、ドルがダラダラ売られる蒸し暑い展開になりそうだ」
(運用会社ファンドマネジャー)との声も上がっている。ドル指数.DXYは85.66付
近と前日比で小幅に低下。前日、ドル指数は86の半ばから85の半ばまで急低下
していた。
政府は18日、2020年度までの平均で名目3%・実質2%を上回る経済成長を実現
する道筋を示した新成長戦略を閣議決定した。昨年末に公表した基本方針をベースに行程
表など具体策を盛り込んだ。需要と雇用の創出効果の高い事業を強化するとともに、日銀
に金融政策面で協力を仰ぎ、11年度までに需給ギャップを解消し、デフレ克服を目指す。
市場は、新成長戦略には反応薄だったが、同成長戦略には、過度な円高を回避し、内外需
を下支えする経済成長を実現する、という政策目標も盛り込まれている。「新成長戦略は、
現段階では個別の論点について円高要因、円安要因との判断はしにくい。政策が本当に実
行され、成果を上げるまでにはもう少しステップがありそうで、為替市場への影響は限定
的だ」と、みずほ証券・グローバルエコノミスト・林秀毅氏は述べている。
<円債市場では成長戦略に疑問の声多く>
円債市場では、政府の「成長戦略」公表直後に日経平均が失速したことを受けて、国債
先物が強含んだ。この日の円債市場では、国債買い切りオペやコールオプションのカバー
といった一時的な強材料もあった。このため「売りが出にくい展開が続いた」(国内証券)
という。市場には「一時的に売り物が出ても、証券会社など業者はそのまま放置しており、
参加者の金利観が下向きになりつつあることが鮮明になってきた」(外資系証券の債券
ディーラー)との指摘もあった。
菅直人首相は17日実施した記者会見において、民主党が参院選で掲げるマニフェスト
に関連して「自民党が提案している10%を1つの参考とさせていただく」と述べ、具体
的な消費税率の引き上げ幅に初めて踏み込んだ。しかし、市場では「なぜ10%への引き
上げが必要と考えるのか根拠は不明確」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの
上野泰也氏)との受け止めが多い。「そもそも政府に対して支持率ほどの期待感はない」
(大手銀行)と冷ややかな声もある。
みずほ証券の上野氏は「菅首相が所信表明演説で掲げた強い経済・強い財政・強い社会
保障のうち、強い財政のアピールが先行しており、強い経済は高い成長率目標を掲げつつ
も、その実現性には疑問符が付いたままとなっている」と指摘。その上で「金融市場は、
民主党を含む各政党が選挙公約で今回掲げる高い名目GDP成長率について、その実現可
能性を懐疑的に受け止めたまま、冷静に取引を続けることだろう。長期金利の代表的な指
標となる10年最長期国債利回りは、2008年12月末に付けた1.155%が次の節
目になりそうだ」と話した。
(ロイター日本語ニュース 田巻 一彦 ;編集 内田 慎一)