[東京 18日 ロイター] ロイターが東日本大震災後2カ月経過をめどに企業400社を対象に実施した調査によると、震災によって生産設備やサービス体制に打撃を受けた企業のうち、40%超の供給能力が震災前の水準に戻ったことが明らかになった。
震災後1カ月をめどに行った4月調査では26%となっており、企業の復旧に向けた取り組みによって着実に供給能力が回復している。一方、受注量・販売額は、回復基調にあるものの、震災前の水準に戻ったと回答した企業は15%にとどまっており、相対的に需要の戻りは鈍い。
企業活動の障害要因では、電力供給懸念がやや和らぐ一方、燃料や資材、部品の調達難が高止まりし、東京電力9501.T福島第1原子力発電所事故による風評被害を警戒する企業が増えている。震災に伴って営業拠点の移転や取引先の変更を実施または検討している企業は、4月調査から微増の23%。移転・取引変更先について、製造業の50%が海外を含めて実施または検討していることが分かった。
調査はロイター短観と同時に同じ対象企業に実施、調査期間は4月22日から5月13日まで。
調査対象は400社、回答社数は210社程度。
<企業の供給能力は着実に回復>
震災で生産設備やサービス体制に打撃を受けたと回答した企業は全体の半数を超える53%。影響を受けた企業に対し、これまでにどの程度供給能力が回復したかを聞いたところ、震災前の水準に戻ったと回答した企業は41%となった。前回4月調査の26%から15ポイント上昇した。80%以上の水準に回復した企業と合わせると全体の87%を占め、企業努力によって供給能力が着実に回復していることをうかがわせる。非製造業では80%以上の回復と回答した企業が90%を超えた。一方、80%未満や50%未満の回復とした企業は減少傾向にあるものの、依然として全体の10%超を占めており、供給能力の正常化には相応の時間がかかりそうだ。
<受注・販売も回復基調、戻りは鈍い>
一方、需要も回復傾向にあるものの、供給体制の復元に向けた動きに比べて戻りは鈍い。震災による受注量や販売額への影響を聞いたところ、63%の企業が「落ち込んだ」と回答。4月調査の59%から上昇しており、「主要ユーザーである自動車メーカーの生産が停滞、売り上げが減少傾向にある」(鉄鋼)など、先行きは依然として不透明感が強い。震災前との比較では、受注量・販売額が「震災前の水準に戻った」と回答した企業の割合が4月調査の2%から大きく上昇したものの、水準は15%にとどまった。製造業では90%未満との回答が半数超を占めており、業種別にみると、金属・機械や輸送用機器などの戻りの鈍さが目立つ。非製造業を含めて企業からは「自動車や半導体の操業が停止しており、大幅な売り上げ減となっている」(その他製造)と、サプライチェーン(供給制約)寸断の影響のほか、「消費意欲が冷え込んでいる」(小売)などと消費者マインド
の悪化を懸念する声が聞かれた。
<電力供給懸念が低下、部材調達難・原発風評被害が障害>
企業活動再開の障害要因としては、4月調査の段階で64%の企業が回答していた「電力供給」が58%に低下。計画停電の終了や、今夏の電力需給が当初見通しから次第に緩和されつつあることなどが背景とみられる。一方、69%と4月調査に続いて最も多くの企業が懸念材料に挙げたのが燃料・資材・部品の調達。特に製造業は77%と高く、企業からは「原材料供給が不安定で、生産が十分に確保できない」(化学)、「震災後の最悪期は脱したが、原材料の入荷に不安がある」(電機)などといった懸念が数多く聞かれた。また、原発事故による風評被害も20%となり、4月調査から小幅上昇。卸・小売業で指摘する企業が多く、「震災・原発事故の影響から、消費者の外食離れが進んでいる」(卸売)との指摘もあった。
<拠点移転や取引先変更、製造業は50%が海外含め検討>
震災をきっかけに工場や営業拠点の移転や、取引先の変更を実施または検討している企業は23%となり、4月調査の21%から微増。内訳は製造業26%、非製造業21%で、それぞれ小幅上昇している。拠点移転・取引先変更の期間を聞いたところ、被災地域が復興するまでの「一時的な措置」との回答が37%だったのに対し、「恒久的な措置」と回答した企業は63%となった。製造業では、恒久的な対応として実施または検討している企業が71%に達し、特に金属・機械、電機は100%、化学製品は80%が恒久対応としている。また、移転・変更先では製造業の50%が「海外も含めて実施・検討」と回答。日本の空洞化進行を懸念させる結果となった。
(ロイターニュース 伊藤純夫 編集 山川薫)