[東京 20日 ロイター] - バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が年内に資産買い入れペースを縮小し始める可能性に言及し、ドル/円 は98円前半まで急回復した。しかし、資源国や新興国の通貨が強い売り圧力にさらされ、株安連鎖が断ち切れない状況では、ドル/円がこのまま上昇を続けるのは難しいとみられている。
「ドル相場になった」(大手信託銀行)――。バーナンキ議長がQE3の縮小方針を示したことで、ドル買いが相場のテーマとなった。19日のダウ に続いて20日の日経平均 も下落したが、ドル/円は底堅さを維持。20日序盤の欧州市場ではドル高が進み、97円台のストップロスを巻き込み、98円前半まで上伸した。
20日の欧州市場では、日経平均先物<0#JNI:>の上げ幅拡大がドル/円上昇の追い風となった。また、南アフリカランド、ポーランドズロチ、トルコリラ、メキシコペソといった新興国通貨が対米ドルで下げ基調をたどるなか、海外勢は対円でもドル買い攻勢をかけやすかったという。
大手証券の関係者は、資源国・新興国通貨売り/米ドル買いのトレンドが当面は続くとみている。「QE1からQE3まで溜まっていた分がある。介入が行われているところもあるので一概には言えないが、しばらくは巻き戻しが続く可能性がある」とみている。
ただ、資源国や新興国の通貨は対円でも上値が重くなっている。新生銀行・執行役員市場調査室長の政井貴子氏は、新興国通貨との兼ね合いでみた場合、ドル/円は動きにくくなるとみている。「クロス円で売りになって円買いの『G』(重力)が掛かるが、大本としてはドル買い。基本的にドル/円は動かなくなる」と話す。
各国で株安が続き、20日の欧州市場ではスペイン、イタリアといった欧州周辺国の10年国債利回りが上昇した。市場からは「完全なリスクオンではない」(あおぞら銀行・市場商品部の諸我晃次長)との声が上がる。欧州市場で騰勢を強めたドル/円だが、今後の株式市場の動向次第では再び圧迫されるリスクが残されているとみられている。
三菱東京UFJ銀行・市場企画部の内田稔チーフアナリストは「QE3縮小を織り込む過程で株が下がると思うので、株安がドル/円の上値を抑えやすい状況が続く」とみる。ただ、「株価の下げが一巡してボラティリティが低下すれば、ドル/円の重しにはならなくなる」と指摘している。
(ロイターニュース 和田 崇彦 編集:田巻 一彦)
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」