April 12, 2019 / 6:21 AM / 2 months ago

焦点:英離脱巡り独仏にきしみ、マクロン氏が長期延期に猛反対

[ブリュッセル 11日 ロイター] - 欧州連合(EU)が10日に開いた臨時首脳会議で、フランスが英国の離脱期限延期を巡って拒否権を発動する事態は避けられた。

 4月11日、欧州連合(EU)臨時首脳会議では、フランスが英国の離脱期限延期を巡って拒否権を発動する事態は避けられたものの、マクロン仏大統領は強硬論を展開した。ブリュッセルで10日、会見に臨むマクロン大統領(右)とドイツのメルケル首相(2019年 ロイター/Eva Plevier)

多くの人々は、かつてシャルル・ドゴールがEUの前身である欧州経済共同体(EEC)に英国が加盟するのを拒否したような場面が、もしかしたら再現するのではないかと思っていたのだ。

実際にマクロン大統領は拒否権こそ使わなかったが、首脳会議で強硬論を展開し、戦後のフランス指導者が持ち続けてきた矜持(きょうじ)を維持した。ただそれによって多数の加盟国が賛成していたブレグジット(英のEU離脱)の1年延長を阻止した結果、主にドイツの当局者をいら立たせてしまった。

これは欧州においてドイツのメルケル首相が発揮してきた精神的なリーダーシップに積極的に異を唱えようとする新たな動きなのかもしれない。背景にはメルケル氏の退任時期が近づいていることや、決断を先送りしがちな同氏の政治姿勢に対するフランスの不満の高まりがある。

複数の外交筋の話では、EU首脳会議に先立って行われたマクロン氏とメルケル氏の首脳会談では両国が合意に達することができなかった。これは極めて異例な事態だ。

そこでマクロン氏はほぼ単独で、ブレグジットの1年延期はEU諸機関にとってリスクが大き過ぎるし、欧州議会選を前に有権者に間違ったメッセージを与えてしまう、と他の加盟国を説得せざるを得ない形になった。

フランス政府高官は、ベルギーやルクセンブルク、スペイン、マルタはマクロン氏の考えに共感したと述べた。しかしEU内には、こうしたマクロン氏のやり方はドゴールばりのスタンドプレーにすぎないとの厳しい目も存在する。

あるドイツの外交筋はマクロン氏の動きについて「恐らくは国内政治とより深く関係している。ドイツに反論し、英国に意地悪をするのが大事なのだろう。(しかし)結局それはマクロン氏のためにならない」と冷ややかに話す。

EU首脳会議はブレグジットを10月末まで延期することで折り合ったものの、翌11日にはドイツ側の不満が明らかになった。メルケル氏の与党幹部はツイッターで「ブレグジットの延期期間はもっと長い方が良かったのに、マクロン氏が自分の選挙戦と利益を欧州の結束よりも優先した」と批判した。

<孤立は望まず>

一方マクロン氏はEU首脳会議終了後、EUの共同利益を保つためならば孤立をいとわないつもりだったと強調。「はっきりした態度でいることを言い訳しない。現在の局面で原理原則を維持するのがフランスの役割でもある」と語った。

フランスのある外交筋は、マクロン氏はドイツとの間で体裁を整えるだけの妥協には満足しなかった半面、オランダやデンマーク、スウェーデンとは協力したかったと打ち明けた。「われわれは孤立したリーダーシップ─たとえそれが光栄ある孤立だとしても─ではなく、あくまで他国を結集できるリーダーシップを追求している」という。

それでもマクロン氏の考えでは、ぎりぎりまで決断をしないメルケル氏の姿勢は、ブレグジットの過程で逆効果をもたらす。EUは英国をつなぎ止め続けて2016年の国民投票結果を反故にしようとすべきでなく、それは欧州議会選においてポピュリスト(大衆迎合主義)勢力がEUは民意を無視していると攻撃する格好の材料を与えてしまう、というのがマクロン氏の主張だ。

もっともあるEU高官は「マクロン氏は強い発言力を持っていると証明したいのだ。多分、欧州議会選でフランスが英国より欧州懐疑派寄りになるのを恐れている。いずれにしても根回し不足だった」と突き放した。

<難しい局面>

2度の世界大戦で敵国同士となり多くの犠牲者を出したドイツとフランスは、その後欧州統合主義の中核となっており、両国の関係は依然としてEUの将来を大きく左右する。

マクロン氏としても、国境管理や移民、安全保障、財政などで欧州統合をうまく深化させたいなら、ドイツの支持は欠かせない。

 4月11日、欧州連合(EU)臨時首脳会議では、フランスが英国の離脱期限延期を巡って拒否権を発動する事態は避けられたものの、マクロン仏大統領(写真)は強硬論を展開した。ブリュッセルで10日撮影(2019年 ロイター/Yves Herman)

ところが現実には退任が近づいてきたメルケル氏の影響力が衰え、マクロン氏も国内で「黄色いベスト運動」として知られる政府批判運動にさらされ、欧州全体がブレグジットにかかりきりとなっている以上、マクロン氏が切望してきた統合を進めるための改革を実行する好機はほぼ過ぎ去った。

さらに独仏は、幅広い問題で意見を異にしている。欧州改革センターのチャールズ・グラント所長は「両国関係は難しい局面に入っている」と分析。具体的には対米関係やEUの安全保障、デジタル課税などで食い違いがあるとした上で「より全般的にフランスは欧州の強大化を望み、そのために抜本的な改革が必要だと考えているが、ドイツは現在のEUのあり方にかなり満足している」と温度差を指摘した。

(Michel Rose、Andreas Rinke、Gabriela Baczynska記者)

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