[パリ 16日 ロイター] - フランスのボルヌ首相は16日、退職年齢を2年引き上げて64歳とする年金制度改革法案について、憲法の規定を用いて採決なしで強制的に採択した。議場では「辞任せよ」という叫び声が上がるなど、同国の議会史上まれに見る混乱ぶりとなった。
政府は退職年齢の引き上げについて、年金制度の崩壊を防ぐために不可欠と主張してきた。政府が議会で過半数の支持を確保できず強制採択の運びとなったことで、マクロン大統領の威信は傷つき、一段の改革遂行も難しくなりそうだ。
ボルヌ首相は下院で、憲法49条3項を発動して採決を省略すると発表。左派議員らが国歌を歌って首相の演説を妨害し、審議は2分間中断された。その後演説を再開したが、罵声や歌声でほぼかき消された。
演説中、パリのコンコルド広場には市民約7000人が集まり抗議デモに発展。警察が催涙ガスを発射した。デモはフランス南部の都市マルセイユなど各地でも自然発生した。
極右政党、国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン前党首は「彼女(ボルヌ氏)は辞任すべきだ」と述べた。ボルヌ氏はその後のテレビインタビューで辞任の可能性を否定した。
労組はストライキを1日延長し、23日には改革への抗議行動を行うよう呼びかけた。世論調査では国民の大半が年金改革に反対している。
野党各党は内閣不信任決議案を提出すると表明。数日中に採決が行われる見通しだが、保守派議員の大半は賛成しないとみられ、可決の公算は小さい。
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