August 6, 2015 / 4:31 AM / 4 years ago

焦点:インフレ率ゼロでの利上げ、米英は説明に苦心か

[ロンドン 5日 ロイター] - 「インフレ率ゼロの状況でなぜ利上げをしようとするのか」──ほぼ10年ぶりの利上げに備える英、米両国民は困惑している。米連邦準備理事会(FRB)と英イングランド銀行(中央銀行、BOE)は、間もなくほぼ10年ぶりに政策金利を引き上げると表明している。

 8月5日、「インフレ率ゼロの状況でなぜ利上げをしようとするのか」──ほぼ10年ぶりの利上げに備える英、米両国民は困惑している。100ドル紙幣、ソウルで2011年撮影(2015年 ロイター/Lee Jae-Won)

実際には数カ月先になるかもしれないが、未だに重い債務負担を抱える家計に両国が送るメッセージは明らかで、「警戒せよ」というものだ。

経済の状況を手短に診断すれば、ゼロ近傍の政策金利を「正常化」すべき理由は容易に見つかる。

金融危機後、何年にも及ぶ経済の低迷を経て、両国は2─3%の強い成長率を記録している。失業率は長期平均に近い6%弱となり、不動産や金融資産の価格はここ数年で上昇した。

問題なのは、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が英国でゼロ、米国でも0.1%にとどまっており、各々が何らかの政策指針の形でコミットしている目標の2%をはるかに下回っているという点だ。

FRBが物価指標として好んで用いる個人消費支出(PCE)物価指数の前年同月比の上昇率も0.3%にとどまる。

政策担当者が今年お題目のように唱え続けているのは、昨年後半に起きたエネルギーおよび原材料価格の急落で、CPIの総合指数が人為的に押し下げられているという説明だ。彼らの想定によれば、今年の春に実際に起きたのと同様にこれらの価格がひとたび落ち着けば、CPIに対するベース効果は剥落し、総合指数よりずっと上昇率が高く、主に国内要因で動く「コア」指数に後押しされる形で、総合指数も物価目標に向けて上昇していくだろう。

言い換えれば、双方の中央銀行は総合指数の下落を一時的なものとして目をそむけ、コアの物価動向に焦点を当て何としても利上げの引き金を引きたいと考えているのだ。

確かに米国の「コア」PCE物価指数は総合指数より力強い動きだが、1.3%と目標にはほど遠い。英国の「コア」インフレ率も1%未満が続いている。

今年の夏はさらに状況が複雑化している。何よりも上海株バブルの崩壊で中国の景気減速懸念が強まっているからだ。

この結果、コモディティ価格が再び急降下した。原油価格は7月初めから20%下落し、トムソン・ロイター/コアコモディティCRB指数は12年ぶりの低水準に沈んだ。これは2008─09年の金融危機時の底値さえ下回る。

要するにヘッドラインのインフレ率はさらに長期間にわたり低迷する可能性が高い。

これは災害ではないかもしれないが、災害に匹敵するほど厄介なデフレの瀬戸際に経済はある。デフレは消費者の購買行動に待ったをかけ、賃上げ交渉の重しとなり、長期の債務返済を複雑化する。

<「見落とし」の不安>

FRBとBOEがそれでも利上げをしたいなら、なぜフライングまがいの行動を採るのか、そしてそもそもなぜ2%のインフレ目標を掲げているのかについて説明すべきだ。

1970年以降、FRBは経済の緩み(スラック)の水準をリアルタイムで評価することに関してお粗末な実績しか残しておらず、金融危機に引き続きまたもや重大な要素を見落としている恐れがある。第2・四半期の弱々しい賃金統計や、中国の混乱の動きがそれを声高に物語る。

市場では、FRBが金利「正常化」に前のめりになり過ぎているのではないか、との懐疑論が広がっている。利上げのタイミングがどうであれ、市場が予想する2年後のフェデラル・ファンド(FF)金利の水準はFRB自身が予測する3%の半分にすぎないのだ。

BOE金融政策委員会(MPC)の元委員であるスシル・ワドワニ氏は、ファトム・コンサルティングが主催した会合で「2009年以降、FRBは成長率について楽観的過ぎる見通しを示し続け、金利の上昇速度についての見通しも、その後実現したペースを上回っていたということが続いた」と指摘し、「景気はFRBの認識とかなり違った状況になっている可能性がある。こうした『(FRBが)見落した要素』が完全に消え去ったのか確信が持てない」と話した。

ワドハニ氏は、例えば中国経済が実際には公式のデータが示すよりも速いペースで減速している場合、FRBは利上げを開始した後すぐに一時停止状態に入るかもしれないとみている。中国経済の大幅な減速に伴う市場の混乱によって、「次の一手を封じられる」という。

「私が中国に悲観的で、今も(MPCの)メンバーだったら、私は利上げをせずに待つ」とワドハニ氏は述べた。

それでも一部の人々は、英米両国の中央銀行が今こそ度胸を持って中期的な焦点と物価動向について明確に語るべきだと指摘する。

家計調査や金融市場から読み取れる予想インフレ率は、いずれもヘッドラインのインフレ率が中期的に中銀の目標を上回ることを示している。

過去にBOEのMPCメンバーを務めたチャールズ・グッドハート氏は同じファトムの会合で、歴史家は将来、遠くから眺めて英国のインフレ目標を好意的に解釈するとの見方を示した。

英国のインフレ率は2010─2013年にわたり恒常的に目標より高かったが、それ以降は下回っているとグッドハート氏は指摘する。長期的にならすと、ずっと安定して見えるという。

グッドハート氏は「BOEはヘッドライン物価の振幅を俯瞰し、早期の利上げに踏み切るだろう。彼らの行動は恐らく正しいと思う」と語った。

(Mike Dolan記者)

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