May 7, 2018 / 3:20 AM / 18 days ago

焦点:「ドル高騰劇」演出、孤高の米FRB金融引き締め

[ロンドン 3日 ロイター] - ユーロ圏や英国、日本の金融政策正常化と利上げの観測が急速に後退したことで、米連邦準備理事会(FRB)だけが引き締め路線を進んでいる事実が改めて浮き彫りとなり、ドルが突然高騰を始めた。

 5月3日、ユーロ圏や英国、日本の金融政策正常化と利上げの観測が急速に後退したことで、米連邦準備理事会(FRB)だけが引き締め路線を進んでいる事実が改めて浮き彫りとなり、ドルが突然高騰を始めた。写真は2月撮影(2018年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)

ドルは1年余りの軟調から反転上昇し、たった2週間で主要6通貨に対するドル指数が4%近くも跳ね上がり、年初来の値下がり分を完全に取り戻した。新興国通貨を含むより幅広いベースで見ても、その半数に対して年初来のプラス圏に浮上。これによって既にトルコからアルゼンチン、インドネシアまでさまざまな新興国に混乱を巻き起こしている。

そして2つの要因から、こうしたドル高は今後一層進む余地があることがうかがえる。

1つ目は金利差だ。FRBは2日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置いたとはいえ、今年全体で計75ベーシスポイント(bp)利上げする可能性がある。つまり米国の金利は、他の先進諸国からさらに先行して上昇していく公算が大きい。

今でも米国の政策金利1.50─1.75%に比べて、欧州中央銀行(ECB)が設定する中銀預金金利はマイナス0.4%、日銀の短期金利の誘導目標はマイナス0.1%にとどまっている。

またFRBは今回のFOMCで物価が持続的上昇基調になるとの認識を示した一方、3日に公表されたユーロ圏の4月消費者物価指数(CPI)は前年比上昇率が鈍化し、欧米金利差が拡大するとの見方が一段と強まった。

2つ目の要因は、投機筋によるドル売り持ちがなお記録的高水準にあること。持ち高のデータによると、4月末時点の売り持ち規模は約240億ドルで、ピーク時の280億ドルからそれほど減っていない。

投機筋は、欧州など他の主要地域経済が米国を上回るペースで拡大を続け、それらの中銀が市場の想定よりも早期に引き締め方向に動くとの読みからドル安に賭けていた。

ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのチーフ投資ストラテジスト、サルマン・アフメド氏は「金利差とドルを結び付ける相場のテーマからすると、ドルは特にユーロとポンドに対してさらに値上がりする余地がある」と語り、両通貨に対するドル売り持ちが大きいとの見方を示した。

足元のドル高は、昨年のドル全面安局面から様相が一変したと言える。今年序盤でさえ、まだ大半のアナリストはドル安が進むと見込んでいた。ECBが9月に債券買い入れを停止し、来年第1・四半期中に利上げすると予想されていた中で、ユーロは上昇した。

英国ではイングランド銀行(英中央銀行、BOE)による年内2回の利上げが想定され、欧州連合(EU)離脱に絡む懸念が後退。日本も国内総生産(GDP)が昨年10─12月期まで8期連続のプラスと、1980年代以降で最長を記録した。

ところが最近になって低調な指標が相次ぎ、ECBは債券買い入れ終了時期を9月より先に延ばすのではないかとの思惑が浮上。BOEの5月利上げ観測も消えたほか、日銀は4月27日に物価目標の達成時期の見通しを示すのを取りやめ、大規模緩和による物価押し上げの成果が上がっていないことをほのめかした。

オールド・ミューチュアル・グローバル・インベスターズのポートフォリオマネジャー、ニック・ウォール氏は「欧州と日本の成長に対する期待は恐らく行き過ぎで、多少勢いが弱まっている状況を目の当たりにしている」と話した。

ドル高には中国人民銀行(中央銀行)も貢献している。4月半ばに銀行の預金準備率を100bp引き下げ、短期市場に流動性を供給したからだ。

モルガン・スタンレーのアナリストチームは顧客に「流動性の追加供給は、人民元の貿易加重平均指数の上昇トレンドが一服する態勢にあることを示唆し、それはドル高を意味する」と説明した。

スイスやスウェーデンの中銀もこのところ政策運営がよりハト派的になっている。ウォール氏は「実際のところ主要中銀で引き締め姿勢にあるのはFRBのみだ」と指摘する。

米国が貿易赤字解消のためドル安を必要としていることや、ドル高が新興国に及ぼす悪影響をFRBが承知している点を踏まえ、ウォール氏をはじめまだ多くの市場関係者は、最近のドル高が持続しないと考えている。

それでも海外投資家がヘッジなしで米国債を買っても大丈夫と思う事態になれば、ドル高がさらなるドル高を呼ぶ局面になってもおかしくない。ロンバー・オディエのアフメド氏も、債券投資家にとって劇的な行動であるヘッジなしの米国債買いが実現する場合、ドルの上昇圧力が高まる可能性があるとみている。

(Saikat Chatterjee、Ritvik Carvalho記者)

 5月3日、ユーロ圏や英国、日本の金融政策正常化と利上げの観測が急速に後退したことで、米連邦準備理事会(FRB)だけが引き締め路線を進んでいる事実が改めて浮き彫りとなり、ドルが突然高騰を始めた。写真はワシントンのFRBビル。2011年撮影(2018年 ロイター/Jim Bourg)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below