February 6, 2020 / 4:07 AM / 17 days ago

焦点:米レポ金利急騰の帰結、金融と規制の「同時緩和」リスク

[東京 6日 ロイター] - 昨年秋に生じた米短期金利の急騰は、米連邦準備理事会(FRB)に金融緩和と金融規制緩和という2つのアクセルを踏み込ませている。金融緩和と規制緩和のポリシーミックスは、金融セクターの内外でレバレッジをさらに拡大し、潜在的リスクを蓄積しかねない。市場参加者の間ではFRBと市場との対話に不安を抱く声も出ている。

 2月5日、昨年秋に生じた米短期金利の急騰は、米連邦準備理事会(FRB)に金融緩和と金融規制緩和という2つのアクセルを踏み込ませている。写真はワシントンで昨年3月撮影(2020年 ロイター/Leah Millis)

<金融規制緩和の橋を渡るFRB>

FRBは昨年9月半ば以降、銀行向けに大量の流動性を供給してきた。しかし、今回の金利急騰がインターバンク市場ではなく、より幅広い参加者が集うオープン市場のレポ取引で発生したため、再発防止には銀行セクター向けの資金供給だけでは不十分との認識を持つに至ったようだ。

FRBは金融規制の緩和に乗り出し、一度は封印した扉を次々に開け始めている。

FRBを含む5つの米監督機関は1月30日、ヘッジファンドやプライベートエクイティ(PE)に対して、銀行の自己資金による投資を禁じる「ボルカ―ルール」に基づく規制の緩和を提案し、現在パブリック・オピニオンを募集中だ。

ボルカ―ルールを浸透させるべく、様々な規制が2013年に導入されて以来、「コンプライアンス上の不透明性が高まったうえ、ルールが本来意図しない制約を銀行に課し、一部のサービスや営業を圧迫している」とFRBは言う。

こうした障害を取り除くため、昨年10月にFRBは規制緩和パッケージを発表し、11月には金融機関の自己勘定取引の制限に関わるルールを簡略化したばかりだが、今回はカバードファンズ(ヘッジファンドやPE)に投資したり、スポンサーとなる金融機関に対する規制も緩和する意向で、ボルカ―ルールの精神に逆行する流れとなっている。

<大盤振る舞いへの批判>

ボルカ―ルールはドッド・フランク法の一部で、同法制定の大きな要因となったのはリーマンショックである。

リーマンショックは銀行業界全体に大きなレバレッジがかかった状況を背景に起きた。ボルカ―ルールは金融セクターのレバレッジを規制し、急速なデレバレッジによる流動性のひっ迫を抑制する意図で導入された。また、ヘッジファンドやPE等への出資制限により、それらの業界へ流入する資金を減少させ、米当局が把握できない投資を抑制することも重要な目的の一つだった。

今回の短期金利急騰は、ヘッジファンドやその他のウォール街の非金融機関が資金調達先として活用するレポ取引で起きたが、その後のFRBによる大量流動性供給や規制緩和の「大盤振る舞い」には厳しい指摘もでている。

1月29日に行われたFOMC後の記者会見で「Fedが躍起になってヘッジファンドやウォール街を救済しようとしているとの批判にどうこたえるのか」との質問に、パウエルFRB議長は、レポ金利のボラティリティがFF金利に影響を及ぼすからだとだけ答えている。

エリザベス・ウォーレン上院議員は昨年10月、ムニューシン米財務長官に書簡を送り、短期金利が一時的に急騰したからと言って、流動性規制などを緩和すべきではないと主張した。

「金融機関は過去最高の収益をあげている。銀行セクターの片隅で起きたカオスを言い訳として、経済を金融危機から守るために導入された規制を一段と緩和するならば、それは痛いほど皮肉なことだ」とウォーレン氏は言う。

<金融緩和とFed不信>

リーマンショック後に導入された金融規制が「ムチ」だとすれば、金融機関には「アメ」として金融緩和が与えられた。しかし、このアメは、民間企業の債務残高を膨らませたほか、米当局が把握できない非金融部門の投資やレバレッジをむしろ拡大してしまった。

こうした債務まみれの非金融部門を背景に起きたのが、今回のレポ金利の急騰だ。

ドル短期資金の主要金利である翌日物レポ金利は9月17日に10%まで上昇し、2008年の金融危機以来の水準に達した。同金利は9月上旬までは安定的に推移していたが、16日から急騰し始めた。

市場参加者は「最も潤沢な流動性」があるはずのレポ市場で「流動性不足」から金利が急上昇したことに加え、金利が上がり始めた16日にFRBが全く動かず、17日以降も短期金利の制御に四苦八苦したことに不信感を募らせた。

最終的に、FRBは大規模のレポオペで流動性を供給し、10月からは毎月約600億ドルの短期国債買い入れも始めた。

市場では、FRBが市場と対話する能力が低下したことが、潜在的なリスクをため込んでいるとの指摘もある。

最近では、短期国債の大量買入れが量的緩和(QE)に相当しないと主張するFRBと、事実上のQEだとみる市場との認識のギャップも話題に上る。

昨年の短期金利急騰の背景要因をFRBが正確に把握しているかどうか疑問が残るとの指摘もある。「参加者がFedを信頼していないので、情報がスムーズに流れないと思われる」(シンクタンク研究員)という。

FRBは市場との対話方法を見直す一環として「Fed Listens」と銘打った広報イベント(公開討論)を2018年11月に立ち上げ、全米各地で開催している。ただ、市場参加者からは「形式だけで意味がない」(アッセットマネジメント)との意見も出ている。

編集:石田仁志

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