March 22, 2019 / 8:23 AM / a month ago

焦点:FRBの明るい景気認識の裏にある「不都合な真実」

[サンフランシスコ/ワシントン 21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、20日までの連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、ファンダメンタルズは「非常に強く」、経済は「良好な状態」にあり、先行きは「明るい」と強調した。

 3月21日、パウエルFRB議長(写真)は、20日までのFOMC後の会見で、ファンダメンタルズは「非常に強く」、経済は「良好な状態」にあり、先行きは「明るい」と強調した。ワシントンで20日撮影(2019年 ロイター/Jonathan Ernst)

その半面でFRBは、米経済が急減速していると認め、物価上昇率は引き続き2%の目標に届かず、賃金は増加しても失業率は上がると予想している。

一体どういうことかと言えば、FRBが「ニューノーマル(新標準)」を完全に受け入れている証拠なのだ。新しい世界では、物価上昇力がずっと弱いままで恒久的に経済成長が鈍化し、金利も低水準にとどまり続けるので、FRBは次の景気悪化局面が到来した際に、伝統的な手段で金融緩和を実施する余地はほとんどない。

これは、2012年の導入以降物価目標を達成できずに時間が経過してきた点を踏まえれば、FRBの信認を脅かす事態だ。また解消されない需給ギャップを埋めるには、財政や社会福祉といった金融政策以外の措置が必要なのではないかとの議論も高めている。

「この問題でFRBには反省が求められる気がする」と話すのはオレゴン大学のティム・デューイ教授(経済学)だ。デューイ氏は、FRBが見通しを突然下方修正したのは、既に利上げが行き過ぎだった可能性があることを物語るとみており、「経済の定常的な停滞という説がある部分で現実化しているのは間違いない」と主張する。

<新たな不安要素>

今回のFOMCでは17人のメンバーのうち少なくとも9人、最大で15人が、政策金利見通しを引き下げ、大半が年内の利上げはないと見込んだ。大勢としては米経済が昨年に比べて勢いを弱め、今年の成長率は2.1%前後になると予想している。

成長にブレーキをかけて物価を抑える上で、どこまで利上げする必要があるかといったことは、もはや過去の話題と化した。どちらかと言えばFRBの懸念は今、物価水準が依然として企業や家計の先行き期待を損なうほど低いという逆の方向にある。企業や家計が支出に対してより慎重な姿勢になれば、新たな成長の足かせになりかねない。

一部のアナリストにとって、こうしたFRBの方針転換はある種の警戒信号と受け止められている。

ステート・ストリートのグローバル・マクロ・ストラテジスト、マービン・ロー氏は「FRBが口に出さずに把握していることは何だろうか」と疑心暗鬼の状態。バンク・オブ・ウエストのチーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は「われわれは何か新たな不安要素が出てくるのを覚悟していると思う」と述べた。

金融市場も同じ見方で、短期金利先物は急速に来年の利下げを織り込みつつある。

<異なる世界>

ただ逆に一連のFRBの態度で、「不都合な真実」が確認できたように思えるとの声も出ている。それは世界の経済成長が既に峠を越え、各国は低成長モードから抜け出せずに失速を防ぐためには、財政政策への依存を続けるという状態だ。さらに今後景気後退(リセッション)が起きれば、経済立て直しという負担まで背負わなければならない。

PGIMフィクスト・インカムのチーフエコノミスト、ネーサン・シーツ氏は、一時的な浮き沈みが過ぎた後でも視界は開けてこないと指摘する。FRBの考えでは、長期間2%足らずの成長が続く見通しになっており「米国のこれまでの基準に照らせば、素晴らしいとは言えない」という。

日本や欧州も似たような苦境に見舞われている。そこで、低金利の長期化を考えると、より規模が大きく経済的に活力のある国がインフラや教育など明確な公益をもたらす投資のために、借り入れを増やすのが妥当ではないかとの世界的な議論が日増しに強まっている。

国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを務めたオリビエ・ブランチャード氏は最近のピーターソン国際経済研究所における記者懇談会で「現在は異なる世界になっている。われわれは金融政策が非常に制約され、財政(政策)が中心になる状態へと向かう」と語った。

そして目下の問題は、現在の低成長がずっと継続し、FRBが最新の見通しで示した「ソフトランディング」へとつながるかどうかだ。

トランプ政権からは今年の成長率が3%付近を維持し、17年の時限的な所得減税を恒久化すれば、数年間はさらに成長が加速してもおかしくないと、すごぶる強気の予想も出ている。

それはともかくとしても、昨年米国や各国の当局者が言い始めた世界同時成長の時代が幕を開けたというストーリーは、現実離れしてきたことが証明されるのではないか。

バンク・オブ・ウエストのアンダーソン氏は「米国が利上げを停止しても、世界的な経済の下振れに歯止めをかけるには不十分だ」と述べた。

(Ann Saphir記者、Howard Schneider記者)

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