[東京 15日 ロイター] - 金融庁が、銀行、信用金庫、信用組合の預金取り扱い金融機関や仮想通貨交換業者など所管する全ての金融機関を対象に、マネーロンダリング・テロ資金供与防止のための体制整備状況や関連データを報告するよう命令していたことがわかった。複数の関係者が15日までに明らかにした。
仮想通貨交換業者への報告命令では、マネロンの温床になりやすいと言われてきた仮想通貨取引の実態把握に踏み込んだ。マネロン対策の向上を国際的に推進する金融活動作業部会(FATF)の第4次対日相互審査が今秋に迫る中、一部の地域金融機関や仮想通貨交換業者は体制整備が遅れており、金融庁は早期の改善を促す方針だ。
報告命令は昨年12月、預金取り扱い金融機関には銀行法など、仮想通貨業者に対しては資金決済法に基づいて出された。
預金取り扱い金融機関には、200万円以上の現金取引の件数や金額、200万円以上の海外送金の件数、非居住者の口座数や預金残高といった定量データを3年分提出するよう求めている。
また、営業、コンプライアンス担当部署、内部監査部門の三層でマネロンを防ぐ体制が機能するための取り組みなどの定性情報のほか、マネロン対策に関する社内規程の違反発生状況と改善策も報告する必要がある。
一方、仮想通貨交換業者には、法人・個人の口座数、預かっている法定通貨、仮想通貨の額のほか、匿名性が高いと認識している仮想通貨について、保有する顧客の口座数や預かり額の報告を求めた。
取引のある海外取引所の詳細のほか、個別の仮想通貨取引を追跡できなくする「ミキサー」や「タンブラー」と呼ばれる技術を使う顧客の2017年4月から18年12月までの推移を報告することも求められている。
金融庁は昨年3月以降、所管する事業者に順次、報告命令を出し、実態把握を行ってきた。問題のある金融機関には立ち入り検査を実施しているほか、金融庁や各財務局の幹部が金融機関トップと面談し、意識改革を求めてきた。
しかし、金融庁に提出する対策が一般に流布しているひな形通りのものであったり、人員が不足し、内部監査体制が不十分な事業者もあり、金融庁の幹部は懸念を強めている。
複数の関係者によると、FATFの審査団は10月29日に来日する予定で、日本政府との協議の結果選ばれた一部の金融機関を11月にも訪問する。面談では実務に精通した役職員の応対が必要で、マネロンに関するリスクの特定や評価、その低減策と管理体制のほか、顧客管理の状況など幅広い分野について具体的かつ明確な説明が求められるもようだ。
金融庁の広報担当者のコメントは得られていない。
*内容とカテゴリーを追加しました。
和田崇彦、伊藤純夫 編集:田巻一彦
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」