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コラム

コラム:FTXの破綻、金融システムには好影響も

[ロンドン 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXが経営破綻したことで、仮想通貨業界は危機に陥った。この派手な破綻劇はしかし、金融システム全体にとっては大いに恩恵をもたらすだろう。

11月14日、米暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXが経営破綻したことで、仮想通貨業界は危機に陥った。写真はFTXのロゴと仮想通貨のイメージ。10日撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

カーリーヘアーのFTX創業者、サム・バンクマンフリード最高経営責任者(CEO)は規制当局や政治家に、主流金融機関がデジタル資産を受け入れるよう働きかけてきた急先鋒だ。彼の失墜によってこの動きが鈍くなるばかりか、規制強化の方向に流れが逆転する可能性さえある。

FTXは11日に米連邦破産法11条の適用を申請した。同社は粗暴な仮想通貨業界にあって、洗練された業者として自らを宣伝してきた。SBFこと30歳のバンクマンフリード氏は身をもって主流金融機関に受け入れられるための活動にまい進。議会で証言し、世界の元首脳らと同じ舞台に立ち、バスケットボール・スタジアムのスポンサーになり、FTXの宣伝に著名人を起用した。

この奮闘は単なるマーケティングではなかった。バンクマンフリード氏は米国内外の規制当局に、FTXのような仮想通貨交換業者を認めてもらおうと必死だった。FTXは、規制を変更してデジタル資産を主流金融に含めてもらうためのロビー活動を行ってきた。

多額の政治献金も実施した。選挙資金を調査するオープンシークレッツによると、直近の米連邦選挙では約4000万ドルと、個人献金者として6番目に大きな額を出した。

しかしFTXの破綻によって、バンクマンフリード氏の主張は説得力を失った。ロイターは、同氏が顧客の資金100億ドルを密かに自身のヘッジファンドに移したほか、少なくとも10億ドルが行方不明になったと報じている。

これは顧客にとっては悲劇だが、仮想通貨業者を規制上どう位置付けるか頭を悩ませていた規制当局にとってはある種、安堵の材料でもある。20カ国・地域(G20)の金融監督当局で作る金融安定理事会(FSB)が先週指摘した通り、仮想通貨交換業者はデジタル資産の売買だけでなく清算、決済、貸し出し、カストディ(保管)、ブローカレージまで手掛けるようになっている。これほど幅広い活動を認められている主流金融機関はほとんど存在しない。多くの仮想通貨プラットフォームは同業他社に投資しているが、これもまた規制上のタブーだ。

FSBは「同一の活動、同一のリスク、同一の規制」というモットーに基づき、仮想通貨業者も他の金融機関と同様に監視するよう提言している。FTXの破綻を受け、規制当局は強い態度に出やすくなるだろう。バイナンスやコインベース・グローバルなど、存続している仮想通貨交換業者は今や、透明性と監視の強化を求めるようになっている。

ただ、規制が強化されても仮想通貨を使うメリットがあるのかどうかは不明だ。国際決済銀行(BIS)のヒュン・ソン・シン氏が今年述べた通り、「マネーロンダリング(資金洗浄)とランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃を除けば」、中銀通貨は仮想通貨と同様の機能を発揮できそうだからだ。

今のところ、FTXの破綻による仮想通貨業界への影響は限定的なようだ。今後もこの状態が続くなら、それはデジタル資産が金融の主流に入り込むのを規制当局が阻止してきたおかげだろう。BISの報告によると、昨年末時点で仮想資産を保有していると報告した銀行において、全資産に占める仮想資産の割合はわずか0.14%だった。

しかしバンクマンフリード氏とその仲間たちが運動を続けていたなら、この状況はすみやかに変わっていたかもしれない。元イングランド銀行(英中央銀行)副総裁のポール・タッカー氏は先週、Breakingviewsのポッドキャストで、規制当局は規制対象外の金融分野がシステミックな危険をもたらすようになるまで、その分野を無視しがちだと指摘。「(金融)安定にとって明確な脅威になるころには、(その分野は)巨大なロビー活動の力を備えている」と語った。

バンクマンフリード氏の事例を契機に、規制当局は仮想通貨企業への要求を厳しくするだろう。その意味で彼は金融システムに恩恵をもたらした。

●背景となるニュース

*FTXの破綻を受け、ビットコインなどの仮想通貨は14日も売り圧力にさらされた。

*FTXはトレーダーが72時間で60億ドルの資金を引き揚げ、11日に米連邦破産法11条の適用を申請した。同業のバイナンスが一時は救済に合意したが、その後取り下げた。

*FTXの新たなCEOとなったジョン・J ・レイ氏は12日、問題解決のために法執行・規制当局と協力しており、資産保全に全力を尽くすと表明した。バンクマンフリード氏は先にロイターに対し、FTXから一部の資金を移したのは「内部のラベリングが混乱」していた結果だと説明した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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